サメに食われた手編みのセーター2 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

越中フンドシ男と六尺フンドシ男の珍妙な暮らしは同じアパートの学生達に常に話題を提供した。

野人の部屋には一本のロープが張ってあり、常にいくつかの六尺フンドシを干してあった。洗濯した最初は手拭き顔拭きタオルとしてどれでも自在に使えるから便利だったのだが、越中にしては邪魔で気に入らない。

フンドシ用のサラシがよれて来ると「腹巻」に変わり、さらによれよれになれば「フンドシ」に変身する。そしてフンドシは再び心まで洗われ・・綺麗になってタオルになる。

越中男はこの「輪廻転生エコタオル」が気に入らなかったのだ。

「六尺フンドシで顔が拭けるか~!」と。

怒る気持ちはわからぬでもないが居候は家主に従うべきだろう。

とどのつまりは・・「やっか~?」だった。

「おう上等じゃ~!」と野人が迎え撃つ。

部屋でキックボクシングまがいの格闘技ショーが始まると皆が覗きに来て興奮する。

時には「表でやっか~?」と来て、「上等じゃ~!」と互いに武器を手に表に出る。

野人の武器は市場の魚用の「カギツメ」で、越中は野人愛用の魚突き用「モリ」を手にした。

野人は両手で「鎌」のように操り構えると、越中はモリで棒術の構え。

ギャラリーが集まり、窓からも顔が覘く。みなこれが楽しみだったのだ。

映画顔負けの真剣勝負が始まった。どちらも本物の武器だから受け損なえばタダでは済まない。

「ガキ~ン!」と越中のモリの鋭い突きを野人は両鎌で受け止めた。