幻の魚 ホシガレイ | 野人エッセイす

野人エッセイす

森羅万象から見つめた食の本質とは

野人エッセイす

裏側には星が舞う
野人エッセイす

背骨と縁に切れ目を入れ 内側から包丁の切っ先で
野人エッセイす

観音開きで 裏表5枚におろす
野人エッセイす

薄造り
野人エッセイす

アラは煮物に 皮が旨い
野人エッセイす


カレイは昔から随分釣って食べていた。代表的なものはマコガレイで、このブログでも何度か紹介した。中部以南では他にマガレイ、イシガレイ、メイタガレイなどがよく獲れる。中でも野人の好きなカレイはメイタガレイで、活きたこのカレイの握り鮨はホウボウの握りと並ぶ白身魚の好物だ。しかし、このホシガレイは初めて食べた。漁協の生簀に一匹だけ発見、迷わず購入した。重さは700gでかなりの大型だ。長年海に生きて初めて見たくらいだから「幻」と呼ばれるのも無理は無い。寿司ネタとしては最高で、時にはヒラメよりも高価になり、1キロあたり1万円を超えることもあると言う。友人の中買いから1300円で自家用に買った。カレイだけに限らず魚は大きさで価格が異なるが、この日は大型カレイは一律、1キロあたり1800円。つまり100g180円と言うことになる。思わず笑いがこぼれてしまった。店頭では倍くらいはするだろう。

しかし・・シルバーウィークに入り、多忙すぎて食べるヒマがなく、水槽に入れっぱなしで1週間以上は活かしていた。そのせいか、まあまあ旨い事は旨いのだが味も脂も抜けてしまったようだ。これではメイタガレイやマコガレイのほうがはるかに旨い。次回お目にかかれるかどうかわからないが、その時はすぐに食っちまうことにした。

もう随分昔のことだが、活魚の生簀での日数と味の変化を数年がかりで実験したことがある。主な対象魚はマダイ、イサキなどで、季節にもよるが、魚は3日活かすと味が落ち、1週間で本来の味がしなくなることがわかった。野人だけでなく魚好きな何人かの男にも食べさせて確かめたのだ。あまり動かず脂も少ないカレイやヒラメ類は大丈夫だろうとタカをくくっていたのだが例外ではなかったようだ。野人は街中の料理では水槽の活魚を食べない。期待外れが多いからだ。漁港からの輸送に耐えられるのは大半は傷のない釣魚だ。しかも馴染むまで生簀で馴らされる。さらに店頭の水槽で何日生きたのかわからない。味としては期待出来ないが、鮮度と歯ごたえを味わう良さもある。

魚の味は同種でも一律ではない。時期、海域、雌雄、大きさの他、食べたエサにもよる。さらに活魚なら活かした日数、鮮魚なら処理の仕方で天地ほどの差が出る。網でとれて船ですぐに氷絞めしたものと、釣って活かして即死、血抜き、急冷したものとでは、味も価格も数倍異なる。暴れて体中に血が回った前者は当日の夜でも生臭く柔らかく、影響がないのは数時間くらいだろう。後者は翌日でも刺身が美味しく食べられる。それくらいの差があることを知る人は少ない。どんな肉でも血が回れば食べられたものではない。本来は生臭い刺身などはない。生臭いのは血が抜けてないか、処理時に皮膚のぬめり、あるいは内臓の臭いが付着したからだ。