痛みをとる「イタドリ」の旨さ | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

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イタドリは全国何処にでも生え、農家からは厄介者扱いされている。ウドの大木と言われるヤマウド同様成長が早く、巨大な空洞の茎が年々増えて大株になる多年草だからだ。ヤマウドと違い繁殖力ははるかに旺盛だ。こうなったらなかなか手に負えない。枯れて硬くなると人も通れず土壌も硬く締まってくる。イタドリに勝てる植物は「葛」くらいのものだろう。どちらも線路の斜面を覆い尽くしているのをよく見かける。しかしこのイタドリもなかなかすてたものではない。草に負けない特性を活かして野人はイタドリ畑を作ろうと思ったことがあるくらいだ。イタドリを畑に植えるバカはいないだろう。イタドリで埋まればそれこそ手に負えなくなってしまうからだ。逆にイタドリで埋まれば、晩秋の草刈り一回だけで毎年楽に収穫出来ると言うことだ。

イタドリは薬草であり山菜でもある。その根は強靭で、生薬名「虎杖根」コジョウコン、つまり虎の杖という猛々しい名が付いて、ジンマシンや鎮痛に用いられる。痛みをとるからイタドリと言う和名がついた。山菜としては酸味を含むが食べ方によっては抜群に旨い山菜だ。小学校の頃の春の遠足の度、帰りのリュックはワラビとイタドリで膨れ上がっていた。皮を剥いて生食するのだが、酸っぱくてそれほど旨いとは感じなかった。採るのが楽しかったのだ。だから食後は皆で谷へ降りては手首ほどもある太いイタドリを競い合って探していた。イタドリの本当の旨さを知ったのは5年前だ。ある集落では村中全員が好んで食べていた。もっと美味しいカンゾウなどの山菜は見向きもせずひたすらイタドリを追いかけていた。その料理を食べてから納得した。それまでのイタドリのイメージが一掃されるくらい美味しかったのだ。さっと熱湯を通して一晩流水に晒すと酸味が抜ける。それを炒め物や煮物に使うのだがたまらないくらい旨かった。スーパーで売られる惣菜などとは比べ物にならない。フキよりもはるかに旨くて食も進む。その村も他の山菜採りには誰も熱中しなくて村中で狙うのはイタドリなのだ。イタドリを折る時の「ボキ!」と言う音も心地良く、子供は喜んで熱中する。イタドリを見かけたら是非一度料理に活用してもらいたい。塩漬けにすればいつまでも保存が出来る。茹でて冷凍も良い。加熱しても目減りせず、どんな料理にも使える優れものなのだ。今年も頑張ってイタドリとってきて多彩な料理に挑戦してみるかな。ベーコン炒めもピクルスもいい。その気になれば数十キロは採れるだろう。