活きた「セピア」の食べ方 | 野人エッセイす

野人エッセイす

森羅万象から見つめた食の本質とは

野人エッセイす


野人エッセイす


セピアとはコウイカのことだ。セピア色と言えば色あせた写真の色を思い浮かべる。元々、このイカスミを絵の具に使っていたが色あせると黒褐色になっていた。このイカの背の色のように。そこからセピア色と言われるようになった。

甲烏賊と書くようにスルメイカなどの薄く細い甲と違って広くて厚い船のような甲を持っている。コウイカの寿命は1年で、春に産卵して寿命を終える。よく浜に打ちあがった甲を見かけるがコウイカのものだ。イタリアではセピアのパスタと言えばこのコウイカを用いる。イカスミパスタというやつで、コウイカは別名スミイカとも言い、イカの中では一番多くスミを持っている。釣り方にもコツがあり、上手くやらないと強烈なスミの洗礼を受ける。大型の仲間にはカミナリイカや沖縄のコブシメなどがある。魚もそうだが、イカも地方によっては呼び名が異なり混乱する事が多い。

コウイカは大きくてもせいぜい800gくらいだが、カミナリイカは数キロ、コブシメは数十キロくらいにまで成長する。良く似たコウイカとカミナリイカでは食べ方も異なる。一般的にイカ類は活きたものが一番旨い。イカは白いと思っている人が多いが半透明の状態が最高なのだ。刺身はねっとりとして甘く、鮮度が落ちると白くなって甘味も薄れてくる。安価で一般的なスルメイカも活きたものは甘くて美味しい。アオリイカが高価な理由は肉の厚みや味だけでなく、この甘味を維持する時間が長いからとも言える。肉厚なイカはこのコウイカだが、大型のカミナリイカはすぐ食べるほうが甘くて美味しいのに、コウイカは逆だ。生きているうちはコリコリしていても甘味がない。一日置くとねっとりとした甘味が出て非常に美味しい。コウイカは数え切れないほど釣ったが、さばいて処理したら刺身用の身をラップして必ず冷凍していた。当日食べたいなら一旦冷凍してすぐに解凍して食べていたくらいだ。天ぷらなどの加熱用は鮮度の良いほうが美味しい。アオリイカもそうだが、イカ類は活きているうちに冷凍すると魚ほど鮮度が落ちず、いつまでもそこそこの甘味と旨味を維持している。このコウイカの甲は粉末にして薬品や顔料などにも使われていたが面白い遊び方がある。粉末にして墨汁に溶いてそれで文字を書く。その紙を水に浸すと文字だけが紙から剥離して水に浮くのだ。ヒマな人は試して見ると良い。子供が喜ぶ事だろう。


野人エッセイす


野人エッセイす