不老長寿の「クコ伝説」 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

野人農園のクコ

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クコはナス科の落葉低木で、その実は漢方の生薬で、薬膳などにもよく使われている。実と葉はそれぞれ、枸杞子枸杞葉と呼ばれ高血圧に、根は地骨皮として解熱に使われる。

野人もクコはよく食べた。乾燥した実は売っているが食べたのは葉のほうだ。実は熟すと甘いが、やや生臭く、ドライフルーツにしたほうが食べやすい。旨いのは若葉で、山菜としては優れもの。クコは逆さまに食うとコクがあって旨いのだ。古くからクコ飯としても利用されており、塩茹でしたものをご飯にあえて菜飯にする。木の若葉を使うものは他に、「ウコギ飯」と「リョウブ飯」があり、どれも元気になれるご飯だ。クコは新芽の枝も柔らかく、緑の枝ごと天ぷらにしても良い。生でかじってみて苦味のないものはサラダで食べられる。野人はタンポポ同様にマヨネーズをかけて食べていた。タンポポもクコも半日陰のものは苦味がない。

クコはアスパラギン酸などの9種の必須アミノ酸すべてを含む18種のアミノ酸、ビタミンなどが含まれ、薬効だけでなく健康栄養食品としても優れている。抗酸化作用や肝機能向上の効果もあり、中国だけでなく、日本にもクコを一ヶ月以上食べ続けたら視力が改善したと言う臨床実験もあるくらいだ。クコの特長はその生命力で、庭に植えたら土中深く根を張って増殖、庭中占領されてしまう。野人農園にもクコがあるが、今年の春に仮植していたクコの苗を定植しようと掘ったら、土中深く真っ直ぐ根を伸ばし、ハンドシャベルでは無理でスコップで掘り起こしたくらいだ。野人の元同僚は黄疸を患い、手の平も黄変して一時は生死の境をさ迷った。医者の手にも負えず、庭中クコを増やして食べ続けた結果、完治、大喜びだった。野人は、クコの薬効と言うよりも、肝機能を正常に戻す生命力だったと思っている。まだまだ奥の深い薬草のようだ。

クコには不老長寿伝説が多いが、これほど長寿のエピソードが多い植物は他にない。

秦の始皇帝が徐福に不老不死の妙薬の探索を命じて、除福が日本で探し当てたのがクコとか、平安時代の文徳天皇のクコ庭園の管理人が、クコばかり食っていた為120歳まで生きたとか、天海僧正は108歳までボケずに大往生したが、「秘訣はクコ飯を常食する事と物事にとらわれないことだ」と述べた文献も残っているらしい。中国古代の薬学書「神農本草経」には、「クコは命を養う薬」と書いてあり、貝原益軒も「大和本草」で「クコは最良の薬菜」と述べている。日本の公式記録の発禁書第一号、つまりエロ本だが、それを書いた時の為永春水は、クコ飯を常食して高齢だったと言うからたいしたものだ。

野人が一番感心して気に入った伝説は、久米仙人で、186歳までクコを常食して生きたと言う。飛行術を習得、空を飛んでいた時、川で洗濯中の娘の腰巻からはみ出た足に目がくらみ墜落したらしい。確かに精力も充実していたようだ。それで死んだかどうかは定かではない。