オケラにトトキの花の画像 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

種になりつつある オケラ

終わりがけのツリガネニンジンの花


写真は山菜であり薬草であり、文化的行事にも使われるオケラにトトキだ。トトキとはツリガネニンジンのことで鈴なりになる花はまだわずかに残っていたが、オケラの花は既に種になりつつある。野人農園には山菜ハーブコーナーがあるが、山菜の中でも意識的に増やしているのはこのオケラにトトキ、ヤマウド、コゴミ、カンゾウだ。ヤマウドやコゴミは既に野菜として市場に流通しているが、オケラにトトキは流通していない。しかし昔から歌われているように本当に旨い山菜だ。食べた事のない人のほうが圧倒的に多い。繁殖力は弱いが何とか普及させたいと思っている。葉だけでなく、薬用とする根の天ぷらも旨いのだ。根が肥大するには何年もかかるのだが、多年草だから毎年葉が収穫出来る。花も風情があり観賞用としても楽しい山野草だ。

41日、森の食卓に載せた記事を紹介する。

嫁も食べられないオケラにトトキ

長野県の里謡に「山でうまいはオケラにトトキ 里でうまいはウリナスビ 嫁に食わすも惜しゅうござる・・」と言うのがある。オケラとは、子供の頃に遊んだアメンボの友達のオケラのことではない。オケラにトトキは山菜の代表格で、この唄は山菜の本にはよくとり上げられている。しかし、オケラの天ぷら・・・と聞くとどうしてもあのオケラのイメージが浮かぶ。山菜ではタラやワラビ、フキノトウ、ヤマウドなどのほうが知名度は高く、聞いたことも食べたこともない人のほうが多いだろう。東北地方では山菜の王様と言われるタラの芽よりも、シドケ(モミジガサ)、アイコ(イラクサ)、ミズ(ウワバミソウ)のほうが人気がある。確かにオケラもトトキも美味しいが、嫁に食わすのが惜しくなる~ほどではない。トトキには独特のコクがあり、他のクセのない山菜よりははるかに美味しいと思う。また、オケラの根茎は漢方では健胃、整腸の生薬としても利用されている。トトキの根茎も生薬であり、二つとも山菜、薬草として古くから利用されてきた。オケラは平安時代から、1年の邪気を払う元旦の屠蘇にも使われてきた。他に、サンショウ、キキョウ、ボウフウ、ミカンやニッケイの皮などが入れられる。京都では梅雨の頃、衣服や本の湿気とカビをとる為にオケラの根を倉庫などでいぶした。祇園の八坂神社では大昔から大晦日の夜に火にオケラをくべる行事が続いている。人々はこの火を雑煮の種火にする為に火縄に漬けて持ち帰る、これはオケラ参りと呼ばれている。またオケラは万葉集にも歌われ、食べるのも気が引ける山菜だ。秋に咲く花とも思えないような独特の花は、昔から一番好きな花で、野山で見かけると嬉しくなってしまう。