不死鳥フェニックスの実を食す | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

市内に住む知人で20代の女性から電話があった。企画や編集でよく野人を訪ねて来ていた。年中ズボンをはいてオートバイを乗り回す惚れ惚れするような男前だ。化粧もしない。化粧すると顔が「漫画」になってしまうからだ。以前にムカゴを教えると、ムカゴ飯の虜になりオートバイで山道を走り回っていた。次にフユイチゴを教えるとフユイチゴの群生地を探してきて味覚を楽しんでいた。今回はフェニックスの実を拾ったが食えるかどうか聞いて来た。「んなものは山に自生しないからわからん」と答えたら「香りも良くて美味しそうだ」と未練たらたらだ。「じゃ、食ってみろ、苦ければ吐き出せば良い、旨ければ持って来い」と言ったら食ったらしい。良い根性をしている。毒草には入ってないから死ぬ事はない。そしてフェニックスの実を持って来たのだ。ギンナンくらいの実は黄色く熟し甘酸っぱい醗酵臭を放っていた。食してみたが甘酸っぱくてなかなかいける。旨いとまでは行かないが使い道はありそうだ。植物の先生に聞くと、「美味しい」らしい。彼女は酒好きで年中酔っ払っていた。魚介のおこぼれがあると、酒の肴にしようとよだれを流しながらホイホイすっ飛んで来る。その彼女に「このまま置いとくと醗酵して酒になる」と言うと嬉しそうな顔をした。「クチャクチャ噛んで唾液と混ぜて木のボールで保存しておけば醗酵は速い」。「ただし・・・猿酒だから顔がになるぞ」と言ったのだが、本当にやるかも知れない。素直なのだ。フェニックスの酒なら「不死鳥酒」だ。ますますあの娘の「馬力」も増す事だろう。