猛毒 「ヤマゴボウ」 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

猛毒ヤマゴボウと言っても「ヤマゴボウ漬け」として売られているあれではない。あれは野人も大好きだ。ただ名前が紛らわしい。美味しそうな名前をつけたのは良いが、ヤマゴボウは毒草だ。画像は「ヨウシュヤマゴボウ」、漢字で「洋種山牛蒡」、別名アメリカヤマゴボウとも言う。北米原産ヤマゴボウ科の帰化植物で、高さ2mにもなり、明治時代から野山で野草化している。漬物で売られているのはキク科の「モリアザミ」の根だ。最初から「アザミ漬け」とすれば良かったのだが仕方ない。ヤマゴボウ科全体が毒草だと言うことを知らなかったのだろう。全体に毒があり、特に根には多く含まれる。数年前にも死者が出た。山菜のヤマゴボウだと思い込み根を掘って漬物で食べたのだ。ヤマゴボウと言う山菜はない。食べると嘔吐や下痢、さらに意識障害、最悪、呼吸障害や心臓麻痺によって死亡する。夏に花が咲き、秋にはブルーベリーみたいな実が鈴なりになる。この汁が服や体に付くとなかなか落ちないのでアメリカではインクベリーとも呼ばれていた。昔は着色料としてワインなどに使われていたらしいが禁止された。実は根よりも毒性が低いのでわからなかったようだ。この春の新芽も山菜として食べられていた時期があったらしいがわかるような気がする。見るからに柔らかくて美味しそうな黄緑色で、知人も採取して食べようとして制止した事があったくらいだ。若葉では嘔吐や下痢くらいだろうが、根は死者が出ている。実は食べて味見してみたが苦くて旨くない。毒草は全て苦い。人や動物の「苦味機能」は、本来は毒を判別する為のもの。渋みや酸味機能は果実や木の実が熟してない事を察知する為のものだ。食えるかどうかは自分の舌で「味見」すれば良い。飲み込まない限り何の問題もないのだ。野生の動物は毒草を見分けて食べないのは「味見」でわかるからだ。一度吐き出したら二度と食べる事はない。舌と学習能力で生き延びて来たのだ。人も見習うべきだろう。人まかせにして苦情ばかり言っているように思える。

ヨウシュヤマゴボウは民家の近くでもよく見かける。秋には美味しそうな実を付けるのでくれぐれも子供が口に入れないようにしてもらいたい。服に赤紫色の落ちない「染み」が付いていたら、近くにヤマゴボウが生えていることになる。