野人流「鯛めし」「骨汁」の作り方 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

旬ではないが1キロくらいのマダイを釣ってきた。夏は「鯛飯」が一番だ。この時期、身には脂が少ないが、天然のマダイの頭やアラの脂は魚の中では一級品だ。養殖マダイではこの味は出ない。それを活かすには潮汁か鯛飯が一番。大きさからして鯛めしと潮汁に刺身少々で調理することにした。「野人流」を紹介する。

作り方は、マダイのウロコ、腹を取り、3枚におろす。半身は刺身とヅケに使い、片身はさいの目にぶつ切りにしておく。アラは粗塩をしてザルに10分乗せておく。熱湯をかけて冷水に取ると臭みが消える。中骨と頭を入れて大鍋で約30分から1時間煮出す。ダシとしては昆布としいたけダシを少々使う。味付けは粗塩だけで醤油は香り付け程度でいい。カマの部分とそいだ腹身は別にしておく。鯛めしに必要なスープだけ冷まし、残りは吸い物にそのまま使う。ダシをとった中骨と頭を取り出し、吸い物の仕上げでカマと腹を入れて火を通す。ご飯は水の分量だけアラのスープを入れ、その上にさいの目に切った身を乗せて炊き上げる。ヅケは醤油1、ミリン1の割合にしたが好みでかまわない。それに炒りゴマを加える。刺身は魚の鮮度が良過ぎる時は、締まりがあり過ぎるので「そぎ造り」がベストだ。そぎ造りにした身の半分をヅケのタレに30分ほど浸しておく。炊き上がった鯛めしはそのままかき混ぜる。骨を気にする事もない。椀に鯛めしをよそって刻んだネギをちらし、その上にタイのヅケを並べて出来上がりだ。ヅケがあるから刺身は少々で良いのだ。潮汁は純粋に天然マダイの旨味を味わうものだ。アラと水と塩だけでも良いが、まあネギくらいは散らしたほうが綺麗には見える。頭の好きな人はダシに使わず、アラ炊きか塩焼きに使えば良い。スープにこだわるならダシにするが、時間がある時は二時間ほど煮出すと骨が半分溶けてコラーゲンたっぷりの「白濁したタイ骨スープ」が出来る。脂も濃厚で、その味は目からウロコだ。栄養価も満点で鯛めしとスープだけで満足出来る。その場合は他のダシも醤油も一切使わない。鯛めしに入れた残りのスープを、炊き上がるまでコトコト火を入れて「骨汁」にしたが、脂が浮き、あめ色になってきた。結局この骨汁が一番旨く、3杯も飲んでしまった。鯛めしと骨汁は、米と水と粗塩だけで仕上がる「究極の鯛料理」なのだ。