危険な海の生物 1、ゴンズイ | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

幼児のころから高校まで海に潜り、大学では海洋学とスクーバ潜水。社会人としてまた調査ダイバー、船長、マリンスポーツインストラクター、フィッシングガイドなど、海とその生物に深く関わってきた。身をもって実験、毒物キャリアは数十年になる。
ありとあらゆる山海の幸を食してきたが、反面向う傷も多い。フグや毒草の食毒を除き、ほとんどの毒針攻撃を体に受けてきた。これはクラゲ、これはウツボの噛み跡と子供の頃は傷は勲章みたいなものだった。小学生の夏休み、肘や膝はかさぶた、擦り傷に切り傷、腕はくらげでミミズ腫れ、おまけに顔はハチに刺されボコボコだった。
磯釣りや海水浴、磯遊びの最中、好んで人を噛んだり刺したりする生き物はほとんどいない。それと知らずにやられてしまうケースが大半だ。アウトドアへは危険な生き物を図鑑などで確認してから出かけよう。岸から簡単に釣れる危険な魚はゴンズイ、アイ、ハオコゼだ。フナやコイなどの川魚と違って、海の魚のほとんどはヒレが鋭い。今でも掴んで暴れた時にはよく刺される。血も出て痛いことには違いないがたいしたことはない。しかしこれらの毒魚の背ビレや胸ビレには毒腺があり、刺されると腫れて猛烈に痛む。


「ゴンズイ」20cm程度のナマズそっくりの魚で、茶色のしま模様があるのですぐわかる。背と胸の毒針は鋭く長く、ビーチサンダルや軍手など軽く突き通す。長靴を通して刺され、かかとが腐った猟師もいたくらいで、最も要注意の魚だ。浅い海に入ると1cmくらいのゴンズイの稚魚が球状の群れになって移動している。これを「ゴンズイボール」と呼び、子供の頃、面白がってかき回し、よくチクリとやられた。痛いことに変わりないが成魚ほどではない。成魚にやられると痛くて眠れなくなる。模様が似ているところから、「ゴンズイの木」と言う木もある。両方とも役に立たず嫌われているからだ。ところが高齢者にはゴンズイマニアがいて、このゴンズイの味噌煮込みが大好物だ。食べてみたがまあまあ旨い。不味い魚は滅多にいないのだ。調理は毒針をペンチで切ってから行う。