スイミン愚物語 スポーツマンヒップ8 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

6月、国体予選も兼ねた「県実業団選手権大会」が開催された。

当日、当然のように会社の誰も応援に来ない。勝てるはずがない、無駄だと信じ込んでいるのだ。部下までが「僕、急用が出来て」と逃げてしまった。会場でいきなり出されることを恐れたのだ。

会場へ行くと企業や自治体、各団体が派手な大漁旗のような社旗を張って陣取り、応援団も来ていた。家族や友人、同僚だろう。

適当な場所を探していたら、女性ばかりの7人くらいのグループがあり、愛想が良かったのでそこに決めて入れてもらった。

聞けばシンクロのメンバーで、デモンストレーションをやるらしい。

プログラムを見ると、運が良いことに、自由形は予選4組あったが、バタフライは8人でいきなり決勝だった。

30歳超えるときつくてなかなか選手が参加しないのだ。

しかも自由形が終わってから随分時間的な余裕があるから最後の力を出し切れる。

皆、体操やウォーミングアップをしていたがスタミナを温存、相変わらず何もせずシンクロ娘達とお喋りしていた。

やがて予選が始まり、名前をコールされたが拍手はシンクロ姉ちゃん7人だけだった。

笛が鳴り、プールサイドで水をパシャパシャと胸にかけたら・・「第5のコ~~ス! フライングです」とアナウンスがあり目がテンになってしまった。

皆スタート台に立ってこっちを見ている。そして観客席からもドッと笑いが・・・・

シンクロ娘達は笑ってはいなかったが、ポカンとしてあきれているように見えた。

笛は「位置について」の合図だったのだ。

こっちはもう十数年も試合など出ていないから忘れてしまっていた。

格好悪い~・・会社から応援が来なくて良かった。

何を言われるかわかったものではない。

スタートから左右交互に呼吸しながら力を抜いて泳いだ。

昨年の記録を見たがそれほど速そうなのはいなかった。

大会記録も載っていて、歴代最高記録も破れない記録ではなかったが試合は最後までわからない、今年から参加したスプリンターもいるが、何しろ高校以来記録をとったことがないのだ。

結局予選2位で通過、決勝は5コースで、4コースは予選一位で通過した昨年の優勝者で、彼が大会記録を持っていた。

接戦になってもターンがないから水中蹴りも出せない。

真っ向から勝負だ。

隣はスタートしてガバガバ水をかいていたが、こちらはスロースロークイッククイックの二重人格泳法だ。メンタンピンの流体力学も効いた。

後半・・ぶっちぎり~!身体半分以上水をあけて一位でゴールした。

やがて大会新記録とのアナウンスが流れた。従来の記録をコンマ6秒縮めていたのだ。

つまり歴代30歳以上では一番速かったと言うことになる。

シンクロ姉ちゃん達は大喜びだ。

「うっそ~!予選はルールも知らずズッコケたからどうなることかと~~大会記録よ!」と素直に祝ってくれた。

会場の外に出て「余裕の一服」、これで目的は果たした。後はバタフライだ。最初で最後の50mを全力でぶっちぎる。

しかし難関があった。

5年連続して優勝、国体の旗手も努めている高校水泳部の先生がいたのだ。

彼が県記録も大会記録も保持していた。

しかしながらこちらは負ける気はさらさらない。

出るからには勝つのが野人流の礼儀であり流儀だ。

今度も小細工は効かない。

一撃必殺バタフ~!」しかないパンチ!


証拠物件・・