命を支え続けた87歳の船長 | 野人エッセイす

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今朝のニュースでやっていたが、瀬戸内海に87歳の現役船長がいた。尾道市の沖に浮かぶ百島という人口700人くらいの島で私設の「夜間救急船」を運航していた。昼間は船便があるのだが夜中の急患には尾道の救急車まで運ぶ船が必要だ。そこで36年前から市にかけあって始めたのだが、月に数件の急患があり、何人もの命を助けていた。驚くべきことは行政の補助予算は年に40万だけで後は船の購入、修理、燃料費まで自分で賄っていたことだ。長年、船の事業をやってきたからだいたいの維持経費はわかる。船の大きさと運搬距離から、補助費の40万は燃料代と修繕や検査などの維持費で消えることは間違いない。エンジンが無傷で36年間も動くはずもないから維持だけでも大赤字だろう。高齢の奥さんが島の人から急患連絡を受けて、夜中に尾道の救急車の手配までやっていた。船が岸壁に着くと救急車が待っている。年に数十回、これを36年間も続けたのだ。ボランティアにしては頭が下がるとしか言いようがない。おそらく人の命を助けるという「使命感」だけでここまで頑張ってきたのだと思う。もっと早く助けてあげるべきだったのではないだろうか。40万をせめて100万にするくらいの配慮が何故出来ないのか。救急車不足も問題になっているが、離島にとってはその救急車までの道さえ遠い。

その船長はもうすぐ退任する。行政も腰を上げ船も購入、燃料も維持経費も自治体で賄う事になった。船長も非常勤だが3人公募、人件費予算も200万計上された。それが普通だと感じている。維持費を年平均60万として年間260万、月にして22万だ。高齢化した島民700人の命を救う経費としては高いはずもない。腰が曲がっても舵を握り続けた年老いた船長とその奥さんに心から「長い間ご苦労様でした」と言いたい。