船長のカレイなる技 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは


昨日の釣りでマコガレイの35cmを釣り上げた。カレイにしては大物だ。キスと天ぷら企画の常連客がサオ持参でやって来た。男女4人組だ。先日、大型カレイがあがったことを伝えると、「カレイが食べたい・・カレイ・・釣りたい・・デカイの」と言いながら気合を入れて釣っていた。キスは釣れるのだがなかなかカレイが釣れない。帰港間近、自らサオを手にカレイを狙った。カレイへの熱い思いと食い気満々の客にどうしてもキスだけでなくカレイの刺身を食べさせてやりたかった。カレイの習性は海底の砂地にじっとしていて動かない。潜って目だけ出している事もあり、泥の中のゴカイなどを食べている。ところがスキューバで潜って、海底を棒切れでコンコン叩いていると手元にまで近寄って来る。音と濁りに好奇心を示すのだ。この習性を利用して「カレイのドンドコ釣り」と言う釣り方がある。重たいおもりで砂底をどんどこ叩き続けてカレイを寄せて釣るのだ。その方法で最後の15分間やって大物をゲットした。客が網ですくい上げ万歳三唱だ。帰ってからキスはいつものように客がさばいて天ぷらに、活きたカレイは自分が洗いにしてあげた。カレイのおろし方は「観音開き」の5枚おろしだ。骨は骨せんべい用に、身はそぎ造りにして氷でしめて洗いにした。白く透き通った身が白くはぜる。温度差で身を引き締める「洗い」は細胞が生きていないと出来ない刺身だ。一緒に食べたが本当に旨い!養殖のヒラメに比べたら味は数段上だ。天然でもヒラメかカレイかは好みで分かれる。活きたカレイの握りは昔から大好物なのだ。

魚を縦にしたのはこの方向から見ると判別しやすいからだ。目が右に寄っているのがカレイで、左に寄っていたらヒラメだ。「左ヒラメ右カレイ」と言う言葉もある。これは一つの見分け方で、決定的な違いは口の形だ。カレイはゴカイなどを吸い込む「おちょぼ口」。ヒラメは獰猛で活きた魚を襲うからアコーディオンカーテンみたいに大きく開く口で歯も鋭い。釣りで釣れたら見分け方も役に立つだろうが、一般の人には必要ない。魚屋にはちゃんと魚の名前が「表示」してある。読んだほうが早いのだが、機会があれば目の位置と口の形を観察してみるのも面白いだろう。カレイもヒラメも、底にへばりついてエサを狙っているうちにこのようにペシャンコになってしまった。いや・・進化した。右が背中で左が腹、内臓は左にある。だから目は当然右側に寄っているのだ。ヒラメはこの逆になるのだが理由はわからない。おそらく仲が悪かったのだろう。どちらが右か左か忘れたら覚えやすい方法がある。昔、浅丘めぐみが歌っていた「私の私のカレイは~左利き~!」と言う歌を思い出せばよい。これの反対、右利きがカレイなのだ。