人と猫のアロマテラピー「ニャン香」 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

「猫にマタタビ」と言う言葉がある。マタタビはマタタビ科のつる性植物で、同じマタタビ科の仲間に「さるなし」があり、日本、アジア原産のシナサルナシがニュージーランドに持ち込まれ、改良されキウイとなった。マタタビはキウイの里親とも言える。「サルナシ」は国内の野生果実の中では最高のものとも言われている。指先ほどの実が秋に熟し、芳香を帯びた実は皮ごと生食出来るが、その味は甘酸っぱく、キウイをもっと濃厚にした感じで大変美味しい。ジャムも良いが、果実酒にすると琥珀色の最高の酒になる。双方ともビタミンCの含有量が豊富で、サルナシの実はレモンの10倍、マタタビの葉は緑茶の10倍と言われ、健康食品として見直されつつある。

同じ仲間だから、キウイに「サルナシ」や「マタタビ」を接ぎ木すれば、人も猫も喜ぶおもしろい木が出来る。以前にキウイの古木に接木して大量に収穫したこともある。「何ですか?これ」と聞かれて即興で名を付けた、サルマタキウイと。

「猫にマタタビ」と古くから言われ、猫、ライオン、トラなどは神経が過敏で、本能的にマタタビの様な神経を安定させる妙薬を求め、香りを嗅ぐことで病を治そうとしている。マタタビに含まれる「マタタビラクトン」と言う成分を猫が好み、じゃれる様子はおもしろく、よだれを流す酔っ払い猫になってしまう。ただし陶酔効果があるのは成長したオスに限られるが、たまに効かない猫もいる。一昨年、マタタビ茶を作ろうと葉を部屋中に広げて干した。外に出ると換気扇の下に猫が三匹、それも見るからに器量の悪い野良猫がだらしない格好で転がっていた。腰が抜けたのか逃げようともしなかった。両手両足をおっぴろげて目はうつろだった。成分はつる、葉、実に含まれ、これを燃やした煙にも効果がある。お香に混ぜ、部屋で猫とともに嗅ぐと「人と猫のアロマテラピー」、名づけて「ニャン香!」だ。欲しい人にはあげますから取りに来てください。

昔、旅人がこの実を食べて元気になり、また旅を続けたところから「マタタビ」と名が付いたと言う語呂合わせのような説もあり、滋養強壮植物とも言われるが、漢方では神経が安定し、安眠、冷え性、利尿効果のある薬草として珍重されている。生薬名「木天菱」(モクテンリョウ)と呼ばれ、正常果実とは異なる。開花直前、花の子房に「マタタビノアブラムシ」という小さな昆虫が産卵、その実は正常な果実になれず、異常発育してゴツゴツした虫こぶ状になってしまう。夏から秋に指先大の虫こぶを採取、さっと沸騰させ日干しにし、薬酒として利用する。「木天菱」は医薬品扱いになっているから通常の売買は出来ない。正常な果実は緑のどんぐりのようなもので、熟すと甘みは出るが、青いものは極めつけに辛く、塩漬けにして酒の肴か果実酒が良い。初夏に咲く梅に似た小花と若葉は山菜として利用出来る。全国の山地に自生し、開花期に葉の先が半分白く変色する性質があり、遠くからでも目立つ。花が終わるといつのまにか白変が徐々に薄れてゆく面白い植物だ。