腰から背中にかけて鈍痛が二日間断続的に続いた。
一時治まっていたのだが、夜中に急に激痛に変わった。
猛烈な耐えられない痛みで全く動けない。脂汗が出て呼吸も止まるくらいの激痛だった。
5時間我慢したがギブアップ、夜中の3時に救急病棟へ電話、自力で這うように車へ。途中で何度もうずくまった。
救急車を呼びたかったが、みっともなくてそちらのほうが耐えられなかった。
片手でうずくまるように運転して何とか到着すると、当直の女医さんと看護婦さんが迎え入れてくれた。
女医さんの診断では尿管結石の疑いがあるとのこと。
激痛で気を失うから絶対に車は運転せずに救急車を呼ぶように言われた。
とにかく死ぬほど痛いので鎮痛剤として座薬が・・
二人して後ろからパンツを~
思わずパンツにしがみつき・・
「それだけはやめてくで~!」・・と叫んだ。
二人は「痛みが取れないよ!」と続ける。
「そこは・・感じるからいやじゃ~」
・・と 叫ぶと静かになった。
うつ伏せの体制から顔を上げると鬼のような顔ではなく
二人とも「大豆」のようなつぶらな眼をしていた。
そして・・
「バッカじゃないの~!こんな時によくも冗談が言えるわね~!」
「激痛で脂汗流しながら冗談言う人あんたが初めて!」
と・・あきらめの表情
結局自分でやってしまった。
痛みを座薬で抑えながら検査を待つことになったがまだ数日ある。
「足の指の骨折」を笑いものにした医者へ電話すると、耳寄りな情報を教えてくれた。
「聞いた話なんだけど・・でも言うと本当にやりそうだから」ともったいぶる。
「早よ言わんかい!」とせかすと・・
「そんなバカなと言うくらい笑える話で・・」と前置きが長い。
話はこうだ。
結石の手術をすることになった当日の朝、患者が何を思ったか縄跳びをやったらしい。
ニュートンの引力の法則を信じて・・
腹切られるのが嫌でたまらなかったのだ。
最後まであきらめない良い根性をしているではないか。
それで偶然石が出て、急遽手術は中止になったらしい。
急に目の前がバラ色に・・・
その医者の最後の一言は
「やっぱり・・やるんだろうなあ・・」だった。
縄がなかったので、真夜中にボクシングのフットワークをやった。ジャブ!ジャブ!ストレートと言うやつだ。ひたすら頭の中にニュートン先生を思い描きながら。たまに飛び蹴りも。
しばらくやっていると背中の内部の辺りがチクリとした。そしてたまにチクチク・・
石が腎臓から出た細い尿管を移動するのがわかった。尿道と違って尿管は細い、そこに引っかかると激痛になる。
思わず
「やっちゃった!」と笑いが。
明日に期待して寝ることにした、膀胱まで無事に通過することを期待して。
そこまで行けばしめたものだ。
目覚めてからワクワクしながらトイレへ行った。
コーヒーフィルターにおしっこをすると、キラリと光るものが残った。
虫眼鏡で見て
「何じゃこりゃ~ 」
以前に映画で見たハルマゲドン、あの隕石にそっくり、トゲトゲの鍾乳石みたいだった。
こんな痛そうなものが尿管に引っかかっていたのだ。
大きさは3ミリくらいで大事に保存した。
一応検査をしたが、泌尿器科の先生が検査データ見ながら「う~ん・・」と悩んでいた。
何もないのだ。
正直に「結石」を見せると、ひとこと・・
「自分で出したの?」だった。
無罪放免になって、そう快な気分で「結局座薬数本で済んだ」と友人の医者へ電話すると、
「やったの?やはりねえ、しかし・・
あははは!可笑しい~!」
と・・また笑いっぱなしだった。
これからの患者の参考アドバイスにするらしい。
視点を変えれば苦難も十分楽しめるし、学ぶことが多い。