タコの頭の中 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

 

タコは面白い身体の構造をしている。

どこが頭なのか胴なのかよくわからないし、柔らかい袋の中にえらも胃も脳も一緒に収納されている。

そこからいきなり足が何本も生えている奇妙な生き物だ。

 

骨らしきものが一本もない割には器用で、賢いのかバカなのか判断に苦しむところもある。

大昔の人は悪魔に例えたくらいで、最初に食べた人は間違いなく偉い。

 

イモ、タコ、ナンキン・・と、女性の好物にあげられ、今ではたこ焼きをはじめ、食卓に深く浸透している。

タコ飯、から揚げ、タコ刺しなどは本当に旨い。

 

タコは子供の頃から親しみがあった。

満足に潜れず、魚が突けなくてもタコは捕獲出来た。

海の忍者と呼ばれるくらい擬態が上手で、岩と見分けがつかないが、生態がわかると簡単に見破れるようになる。

 

大潮の干潮時、磯で腰まで浸かり、水中眼鏡でモリを片手に突きまくった。

浜で焚き火をして、その中にタコやサザエを放り込み、黒焦げになったタコをそのまま食べていた。

今のたこ焼きを知るまではこれがタコ焼きだと思っていた。

 

猟師はワタリガニを餌にタコを釣るくらいタコはワタリガニを好み、ウニも好んで食べる。

そんなものばかり食っているタコが美味しくないはずがない。

 

岩の窪みや石の下に潜み、時には小石を身体に引き寄せ、海藻の色でカムフラージュ獲物が近づくと上から八本の足を広げて包み込むように襲い掛かる。

擬態にしろ、狩りの手法にしろ、これほど賢いタコがバカだと感じる瞬間は、その未練たらしい食欲の浅ましさにある。

 

船でタコを釣ると、カニを結んだ掛け針にかからずしっかり抱きついたタコは、近づく水面を見据え、ぎりぎりまで離さず、水面でパッと離し未練たらしく漂っている。

再びカニを下ろすとすぐに目の前で抱きついて来る。タコがアホだと感じる瞬間だ。

腹が減ったり、ストレスを感じると自分の足を食べるくらいだから、足が針にかかっても痛みを感じる神経がないのだろう。

 

波打ち際でウニを割って洗って食べていると、近くの穴から出てきて足元から手を出してくる。

ラッキー!とは思うのだが、厚かましい。自分が食われるとは思っていない。

そんなタコに愛情が湧き、携帯のアドレスは「タコノアタマ」にしてしまった。