アワビハンター ザ・タコ! | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

アワビやトコブシは殻に空いたいくつかの穴から水を吸い込み呼吸している。当然水中でこの穴を塞がれると呼吸が出来ずに苦しくなる。その弱点を見抜いた唯一の生き物は、誰もが知っているあの「タコ八」だ。しかも賢い上に八本も手足があり、忍者みたいに狭い場所も楽々と通り抜ける。タコの好物は何と、アワビ、トコブシ、伊勢海老にカニ・・・本当に厚かましいくらいの食通だ。他の二枚貝や魚もタンパク質なら何でも食べるが、トコブシとワタリガニが一番多いようだ。だから輸入物より地ダコは美味しい。

タコに見つかったらいくらしっかり岩に張り付いてもアワビはひとたまりもない。人が力任せに剥がそうとしてもどうにもならないアワビをタコは苦もなく持ち帰る。水門である孔を吸盤で全て塞いでいると、アワビは苦しくなり吸着力が緩む。すかさず間に足を差し込みひっくり返す、簡単だ。指の数が足りない「人間」にはマネ出来そうもない技だ。鵜飼いの鵜みたいに、タコが素直に言う事を聞けば、船上からヒモでタコを操る「名物アワビ漁」も成立するのだがタコは一筋縄ではいかない。