薩摩おごじょ(新宿三丁目)の特攻の母の手料理 | 夢酔亭主人のオムライス食日記

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昭和20年、日本の敗色が濃くなり連日鹿児島県の知覧基地から沖縄に向けて飛び立つ特攻隊。
 
飛行機に爆弾を積んで敵艦に体当たりする戦法なので生存率は0%。
 
まだ若い飛行兵たちのお世話を続けた富家食堂の鳥濱トメさん。
 
人を褒めたことがない石原慎太郎さんがただ一人「菩薩」と褒めたたえたのが鳥濱トメさんだった。
 
そのお孫さんのお店が新宿三丁目にある。

 

  お店紹介

 
鹿児島郷土料理の店「薩摩おごじょ」さん。
 
地下へ降り、ドアを開けると「おさいじゃったもんせ」と出迎えてくれる店主。
 
去年に次いで2回目の訪問。トメさんの貴重な話を伺うことができた。

 

  メニュー

 
鹿児島の郷土料理と百種類を超える鹿児島の焼酎。
 
とりあえずビール。
 
お通しは枝豆。
 
●カツオの刺身
 
鹿児島から飛行機で来たんですよと笑わせてくれる鹿児島産の鰹。
 
この新鮮さは格別。

 

●つけあげ
 
いわゆるさつま揚げ。
 
トメさんは富家食堂を開業する前はつけあげの行商をして生活を支えたそうだ。
 
平らな方は魚のすり身を使った高級品。
 
黒くて丸いのは物資がなかった時代に豆腐で量をかさまししたもの。
 
ごぼうも練り込んであり、素朴な味で実に旨い。
 
焼酎は知覧の「ほたる」をロックでいただく。
 
「ほたる」については最後に張り付けた店主の話をぜひ聞いてほしい。
 
トメさんやこのお店は映画や舞台でも繰り返し上演され数々の賞を受賞している。
 
鳥濱トメさんの人生で一番苦労されたのは戦後だったそうだ。
 
戦争が終わると生き残った特攻隊員は「特攻くずれ」と罵られ、世の中が落ち着いてくると「洗脳された侵略戦争の手先」と批判された。
 
毎日、毎日、役所に通い、「どうかあの子たちのために観音像を作ってほしい」と訴え、ようやく完成したのは昭和30年。
 
そして生き残りの特攻隊員が集まれる場所にしようと娘の礼子さんが52年前にこの店を開業したそうだ。
 
トメさんも心を込めて料理を作りもてなしていたという。
 
そんなおばあちゃんの味は何一つ変えていませんと説明してくれる店主。
 
おばあちゃんからお母さんへ、そして店主へと受け継がれてきた味。
 
●がね天
 
さつま芋の入ったかき揚げで、青のりと紅生姜。
 
衣のサクサク感とホクホクのさつま芋が実に旨い。
 
パイナップル酒。
 
店主に作り方を教えて貰ったのでお盆休みに仕込んでおこうと思う。
 
●とんこつ
 
鹿児島でとんこつといえばラーメンではなくあばら骨の骨付き肉の角煮。
 
薩摩武士たちが戦場や狩場などで作ったのが始まりと言われ、別名『武骨煮』と言われることもある。かの西郷隆盛も大好物だったのだという。
 
3日間煮込んだお肉は箸でスーッと切れる柔らかさ。
 
黒砂糖の風味も独特。
 
日本酒で流し込むと格別の美味しさ。

 

トメさんはいつもこう話していたそうだ。
 
「笑って死んでいった子は一人もいなかったよ。みんな怖い怖いと震えておった」
 
「でもね、おばちゃん、僕たちが行かないと日本が負けてしまうんだよ。年老いた両親や幼い兄弟たちが空襲で焼かれちゃう。だから僕は行く」
 

「散るために 咲いてくれたか さくら花 

 ちるほどものの みごとなりけり」 鳥濱トメ
 

 

本日のお話 

 

 

 

 

 

「薩摩おごじょ」店主の赤羽潤さんのお話に耳を傾けてください。
 
「かわいそう」とは思わないでほしい。
 
ただ「ありがとう」と感謝してください。
 

美味しい食事をいただき感謝をこめて

「ごちそうさま!」
 

【お店】  
・薩摩おごじょ
・東京都新宿区新宿3-10-3 B1F
・https://camp-fire.jp/projects/view/280449