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マンモスの絶滅が気候変動を加速させた?

 マンモスは今から数千年前に絶滅しました。気候変動により植生が変化し餌が減少したことも理由の一つと思われますが、氷期が終わり北上を始めた人類による狩猟圧も原因である、というのが広く知られていると思います。

 ところで、Science Now に、マンモスの絶滅が気候変動に拍車をかけたのではないかという記事が掲載されました。ベーリンジア(アラスカとシベリアの間の海は氷期には陸地になっていて、ベーリンジアと呼ぶ)では、マンモスの減少と反比例して、カバノキ属(白樺など)の分布が爆発的に広がっていることが分かったのだそうです。


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今から約1万5千年前のベーリンジア。ユーラシア大陸と北米大陸は陸続きだった。アメリカ合衆国国立公園局HP より。



 マンモスは他の象の仲間と同じく植物を餌としました。しかも大量に。そのマンモスが絶滅したのですから、植物は一気に広がることになります。花粉分析によると、マンモス絶滅とカバノキ属の爆発的な増加は歩調を合わせているのだそうです。

 カバノキ属に限りませんが、木の葉は太陽光を強く吸収します。また、雪面から突き出した幹や枝はアルベドを低下させる効果があります。要するに、カバノキ属の植物が繁茂することが気温を温暖化させる方向に働くのです。まとめると、

 マンモス絶滅→カバノキ属植物が増加→アルベド低下→温暖化の加速

 という現象が起こったのではないか、ということです。その寄与は、全世界で+0.1℃、ベーリンジアに限定するなら+0.2℃に達するのではないか、とのことです。

 にわかには信じがたいほどの巨大な影響です。実際、「マンモス絶滅の数千年前からカバノキの増加は見られるのではないか」という疑問も指摘されているようです。正式な論文は近日発表との事で、読んでみようと思います。


 ところで、もしこれが本当であれば、これは人類が気候変動をもたらした最初の例になるのかもしれません。冒頭にも書きましたが、マンモス絶滅は人類による狩猟の影響が大きいとされています。

 人類の北上によるマンモスの狩猟→マンモス絶滅→カバノキ属植物が増加→アルベド低下→温暖化の加速

 であれば、人間活動による気候変動の起源は今から1万5千年前にまでさかのぼるという指摘がされています。面白い話です。



21:35追記

 逆に「マンモスなど大型草食動物の絶滅が寒冷化をもたらしたのではないか」というニュース がありました。元論文は(doi:10.1038/ngeo877 )ですか。

 草食動物は腸内でメタンを生産しそれを排出します(現代の温暖化にも、家畜のげっぷの影響があることが知られています)。メタンの濃度低下とマンモス等の絶滅時期、およびヤンガードリアス と呼ばれる一時的な「寒の戻り」が一致している、というものです。

 矛盾していると思えるかもしれませんが、一方は植生変化におよぼす影響のみを考えたものであり、他方はメタン排出の観点のみから考えたものです。実際には双方の作用が合わさっているのです。実際にどちらの効果が大きかったのかは今後の研究待ちなのかもしれません。

 ところで、元論文の要旨を見る限りでは、メタンについてはともかく寒冷化につながったとは一言も書いていないように見えます。マンモスは反芻しないのでメタン排出にもそんなに寄与しないような・・・。afpがやりすぎているような気もしないでもないです。今度元論文読んでみます。

アンケート

 トトリのアトリエは面白いです。まだ中盤といったところだと思いますが、歴代のアトリエシリーズと比べても傑出している気がしています。


 Nature Asia Pacific、いろいろ動いていますね。現在、トップページでアンケート(Nature クイック市場調査! )が実施されています。

Q:環境問題は「科学的」に証明されていると思いますか?

 人によって、この設問の意味をどう捉えるか、いろいろ面白いですねえ。私も回答しました、「まだ証明されていない」に。

 現段階での答えを見ると、 証明されている:18% 証明されていない:77%になっています。証明されていない、が圧倒しています。


 Nature、いい意味で遊んでいますね。このアンケートを見てどんな意見が沸きあがるのか、私も楽しみです。

トトリのアトリエ


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 最近すっかりゲームはしなくなりましたが、第1作「マリーのアトリエ 」からアトリエシリーズだけはほとんど欠かしていません。

 というわけで、最新作「トトリのアトリエ 」にmushiはかかりっきりです。もしブログの更新がまばらになれば、それはW杯のせいではなくトトリのせいです。

 たーる!

Nature Climate Change創刊!!

 Nature と言えば、言わずと知れた世界最高峰の学術誌。関連誌も合わせると29誌も存在します。

 そのNatureに、なんとNature Climate Changeが加わることになりました。来年4月1日に創刊だそうです。

http://www.natureasia.com/japan/nclimate/


・・・って、無料?!

オンライン版ならまだしも印刷版まで?!


 これはすごい。Natureって、面白いけど値段が高めという印象が強いのに、何という大盤振る舞い。さっそく登録してみました。

 しかし、”お申し込み内容、または人数制限のため無料定期購読をお受けできない事もございます"とのことでした。まあ仕方ないですね。数万人とか数十万人とか申し込んだら大変なことになるので。当たればいいなあ。


6/30追記

 なんとNadture Climate Changeのtwitter でつぶやいてもらっていました。私はtwitterにいないので、この場で言及を。こちらこそよろしくお願いします!

 この機会にtwitter始めてみようかなあ。

ブループラネット賞

 ブループラネット賞のHPが大幅に改定されて、充実したものになりました。

http://www.af-info.or.jp/blueplanet/list.html

 これはためになります。研究者列伝でもいろいろ引用させてもらうことになりそうです。というより、これを読めばだいたいこれまでの研究の流れは分かるような。


 ちなみに、6月17日に発表された今年の受賞者は、NASAのジェームズ・ハンセン と、イーストアングリア大学のロバート・ワトソン の両氏です。

 1988年に、ハンセンがアメリカ議会で気候変動問題を警告したことが、気候変動問題が重要なものであると広く認識されるきっかけになっています。

 ワトソンは、フロン類の全廃につながったモントリオール議定書 に重要な役割を果たし、また第3次IPCC報告書の際の議長を務めました。

 受賞は当たり前、といった感じです。両氏とも、いずれ研究者列伝で取り上げたいですね。