"学者への道" in Arizona -4ページ目

スランプ脱出法

家に帰ったら勉強する気が起るかもしれない!

と、淡い期待を胸に書類をかばんに詰め込んで研究室から家に帰ると、

ごはん作って、食べて、ちょっと休憩~って横になって、

結局ハンコック様(ワンピース)の誘惑に負け、

持ち帰られた書類はかばんから取り出されることなく、

結局寝ちゃって仕事が進まない、

というような一週間を送ってしまいました(。・ε・。)

スランプです。



スランプの原因は研究助成金に関する矛盾。

外部からお金をとってこれると示すことは学者にとって大事なこと。

でも今自分が申請している内容はうちのボスが政府からもらっている助成金のものとかぶってる。

だからたとえ自分の助成金の申請に失敗してお金をもらえなくても、

ボスのお金でこの夏ボリビアとブラジルに行って研究ができてしまう。

必要がないお金をくださいってだれかを説得させることは難しい。(´д`lll)



スランプの解決策は、

いろんな人と話すことでした。



医学部の研究者N博士と共同研究をすることになって、

彼はNeisseriaというヒトの口内に住み、病気を引き起こすこともある細菌に興味があって、

自分の野生ネズミさんたちからもNeisseriaが検出されたことを聞きつけ、

サンプルしたいからネズミを捕って来てほしいと頼まれ、

もうすっかり顔なじみのツーソンの飼料屋さんで、

「おー、また来たか」みたいなノリでトラップをしかけさせてもらい、

明くる日N博士と一緒にサンプル採集をしました。

$"学者への道" in Arizona

ネズミさんの口の中に薬品(PBS)につけた脱脂綿みたいのを突っ込んで、

細菌を採集するんだけど、この薬品がおいしいのかネズミ自らペロペロなめてくるという、

ちょっとかわいい。

N博士は日本に宣教師として2年間住んでいた経験もあり、すぐに打ち解けて、

科学に関しても、この分野に手をだしてまだ1年半の自分を専門家として扱ってくれて、

何も仕事が進まない中、唯一何か仕事したと思わせてくれる日でした(笑)




アリゾナ大学のキャンパスで自分と似た細菌研究している大学院生を集めて、

この学期から一週間に一度勉強会を開いているんですが、

自分の力不足で参加者3人です(笑)

でも少数精鋭で、自分より遥かに知識も経験豊富な人たちと話すことはすごく刺激になる。

そのうちの一人は同じ学科のスーパールーキーTくん。

コンピューター関係でいつもお世話になってる自分の先生なのですが、

彼が参加した研究論文が先日発表され、今ニュースをにぎわせています。

"学者への道" in Arizona

これはRoller derbyと言われるスポーツらしく、

体を激しくぶつけ合うことにより、試合前と試合後、

体の皮膚の細菌組成がどのように変化するか研究したもの。

なんと試合後には変化が見られ、相手チームの皮膚細菌組成と似るという結果が(細菌が飛び移っている)。

皮膚に住んでいる細菌は、汗やいやな臭いを分解したり、病原体から身を守る我々の免疫に関与してたりすることが知られているから、

だれと会うかによって健康に影響するかもしれないというのはおもしろいですよね。

細菌がどうやって移動しているのか理解することはこのフィールドで大事な謎の一つ。

他にいくらでもこの謎に挑戦する実験はできるのに、

スポーツに目をつけるという自由なアイディア力に、

自分も研究にもっと大きな視野をもたなければと痛感。




廊下でたまたますれちがったうちの学科トップの天才大学院生Bくんに、

スランプの相談をしました。

なぜなら、彼は以前自分が申請してるNational Geographicの研究費($5000)をゲットした張本人。

「僕がゲットできたのは運だけど」

と控えめに、実際に研究費をゲットした申請書のコピーをくれて、

いろいろアドバイスもくれまして、

「$5000の小切手が届くだけでレシートを渡す必要がないから、ボスの研究費と内容がかぶっていても大丈夫だから挑戦すべきだ

って背中を押してくれた。

彼とは同期で、あまりにできるやつだからちょっとジェラシーを感じているライバルですが、

こういう時ほど説得力があり、頼りになる仲間はいないですね。



他にも、

18:30からテニスコートの電気が消灯した22:00まで、おもいっきりスポーツをできる仲間とか、

朝の4時までお酒飲んで、カラオケして、おもいっきりバカ騒ぎできる仲間(昨夜w)とか、

悪いときは悪いときなりに、

どんどん行動して、

仲間の力を借りて、

現状打破!

ちょっと吹っ切れた気がします。



コネクションを作ることは比較的に簡単だけど、

そのコネクションを活かすことは簡単じゃない。

自ら行動を起こさないと、コネクションは活かせない。



待っているだけじゃ、だれかが助けてくれるわけないことはわかっているけど、

行動さえすればこれだけ助けが得られるとは、、、

改めて自分の周りにいる人間のありがたみを感じます。



まだ何も状況は変わってないけど、

きっとスランプって何をしたらいいかわからなくなる精神状態のことで、

一度「やりたいこと」と「やらないといけないこと」のつながりを見いだすと、

もう迷いはなくなる。

この週末、引っ越し、採点、奨学金、分析、全部こなしてみせまっせ(^ε^)♪

ストロベリーカクテルとネズミ

先週金曜日、

アリゾナ大学キャンパスに、

ライフルを持った男が現れたらしく、

警察やヘリが出動し、立ち入り禁止区域が設定されるという、

アメリカらしい事件が起る街、ツーソンΣ\( ̄ー ̄;)



そんなツーソンにいるのもあとわずか。

4月の頭に今の家の契約が切れるので、

キッチンもない一人部屋のアパートにお引っ越しです。



今日は強気三連発のお話。



普通はどこのアパートも半年、一年契約させられるんですが、

あと数ヶ月だけしかツーソンにいないので、

「My friend told me, my friend told me, my friend...」

って友達が紹介してくれたんだってことを引き合いに、

「一ヶ月契約してくれないなら他にあたるから」

ってちょっと相手を揺さぶってみたら、

心理戦に勝ち、無理矢理、月々で支払いをさせてもらうことに成功しました♪

初めてこっちに来た時はインターネットを契約することすら一日かかっていたので、

口が達者になるのも生きるすべですかね(笑)

強気の勝利その1です。



ルームメートであるメキシコ人と、

そろそろ引っ越し準備をしなくてはと話してて、

洗濯機と乾燥機を売ろうということに。

こっちにはCraigslistというサイトがあり、

無料で広告をだしてものを売ったり、

逆に中古のものを買ったりできます。

電化製品や日用品はもちろん、

家から仕事まで探せて、恋人まで探せる、

万能サイト(笑)



すべて自己責任なので、暗黙のルールがあって、

売り買いする時は、

1。安易に連絡先を教えない。
2。待ち合せ場所は自宅を特定されない人が多い場所へ。
3。女の子は一人で取引に行かない。

などがあり、

日本人からするとちょっと恐いけど、

昔このサイトで自転車も水槽も安く買いました。



でも自分が売り手になるのは初めて。

まだ引っ越しまで2週間ぐらいあるのに、

売れないと困るからと思って周りの価格より安く設定したら、、、

携帯なりっぱなしで、メールもオファーであふれて大変なことに(笑)

売れることはわかったので、

ルームメートと相談し、

「せっかくだからギリギリまで自分たちの洗濯しようぜ」

という売り手の勝手な都合により、

結局来週末に売ることにしました(笑)

来週は同じように売れる保証はないという心配は一切無用!

強気の勝利その2。



アリゾナのトーナメント(あっ、結果はちなみにベスト4でした、WBCと一緒だ(・ω・)b)に出た時に知り合った、

アジア系アメリカ人からテニスしようと誘われたので、

シングスの試合をしてきました。

1セット目は2-6で負けてしまい、

2セット目は6-4で粘り勝ち。そこで消灯。

強気に強打するのではなく、強気に守るという技を覚えました。

強気の勝利その3



なんでも強気にいけばいいというわけではないですが、

攻める時も、守る時も、勝っていても、負けていても、

強気の心理状態は運気を引き寄せるのかもしれませんね。



それでは最後に、

今週末描いた好きなもの3トップ、お酒、チーズ、ネズミ(笑)

"学者への道" in Arizona

遊び心で描いたつもりが意外とオシャレ。

久しぶりのアクリル画でストレス発散です(´∀`)



そして、日本からの高校生ゲストをみんなでおもてなし食事会。

"学者への道" in Arizona

現役高校生と話していると、すごく自分がおっさんになったと感じますね(;´Д`)ノ



今日は、ナショナルジオグラッフィクの助成金申し込みの原稿に苦戦しましたが、

ここも強気のメンタルで、また一週間がんばりまーす☆

"学者への道" in California Berkeley

突然の報告です。今年の夏(6月末)、

ブログ、"学者への道" in Arizonaはお引っ越しして、

"学者への道" in California Berkeleyがスタートします。

"学者への道" in Arizona


カリフォルニア大学バークレー校と言えば、

数々のノーベル賞受賞者を輩出(71人)し、

毎年世界で5本の指に入る大学だそうで(東大で20~30位!)、

進化生態学の分野においては世界1位の場所。

ワンピースに例えると、

留学を果たした今の場所がグランドライン前半ならば、

そこはまさに新世界!



うちのボス(船長)がカリフォルニア大学バークレー校から、

教授職と哺乳類博物館館長のポジションのオファーを受けた関係で、

研究室(船とクルー)ごとバークレーへ向かうことになったのです。



実はこの話は半年以上前にほぼ決まってたんですが、

先日正式に決まったようで、

自分を含めた大学院生4人はバークレー校のIntegrative Biology (統合生物学?) のPhDプログラムに編入することになりました。



今いるアリゾナ大学も進化生態学においてはなんちゃっての全米9位。

このアリゾナ大学でさえ、自分は一次試験に落ちて、

教授との電話面接でギリギリ入学したので、

当然日本にいる時はバークレー校の存在すら知らなかった(笑)



逆に自分以外の研究室の大学院生メンバーは全員、

当然のようにバークレーも受験したらしいけど、

みんな落ちたからアリゾナ大学に来たらしい(笑)



次の3年間の学者への道の舞台はそんなとてつもない場所のようです。




今朝、ツーソンから日本に帰ったとてつもない男と、

ビール片手に一対一で話す機会があり、

「人生の高みでまた会おう」

と誓い合いました。



彼は軍隊を指揮する父親に幼いころから鍛えられたが、

運動会も実力試験もいつもビリで、プラモデルをいじるのが好きな内気な少年。

そんな少年が、

ある友達をきっかけに勉強に目覚め、実力試験でトップクラス。

空手のおじいちゃんたちをきっかけに空手に目覚め、東京都代表

日本のNASA(JAXA)で働いたり、世界中の国の軍隊に空手を教えてまわったり、

アリゾナ大学大学院で航空宇宙のマスターをとり、アリゾナで空手道場を開き、

教え子を率いてアリゾナ州大会で優勝したり。

そして今年から、日本のある企業でエンジニアとして働くことが決まり、

それまでの2ヶ月間南米を自転車でまわってた、

スーパーマンがツーソンにいました。



宇宙飛行士になる夢を捨てて、

空手家と科学者だけでいこうかと迷ってんだよねー。

ってまじめな顔して言ってた(笑)



こんな人と3年間ほど一緒に仲良くさせてもらったおかげで、

PhDプログラムの途中に学校も環境も交友関係も、

またゼロからやりなおさないといけない大きな変化にも、

ただただ楽しみでしかない

って純粋に思える。



だって、

まだ見たことのない、とてつもない場所が、

出会ったことのない、とてつもない人たちが、

想像もできない、とてつもない試練や興奮が、

この先に待ち受けているのだと思うと、

ワクワクしてしょうがない。



そんなワクワク感いっぱいに、

春休み中に描いた、二十六歳の宝地図

"学者への道" in Arizona

基本水彩画ですが、紅茶で染めてみたり、紙のふちをライターで焦がしてみたり雰囲気だしてみました(笑)



「今心の地図の上で起るすべての出来事を照らすよ、Seventeen's map」

(尾崎豊 十七歳の地図)




大声でこの歌を歌ってた17歳の自分から、ほぼ10年。

今もこの歌を歌ってる26歳の自分が、その先の自分へと送る地図。

7月から始まるであろうこのブログの続編ブログ、

"学者への道" in California Berkeley、ご期待ください。

Coming soon!笑

人間っていいな

今週は春休みでした!

遊びに研究に欲張りすぎて、

気づけば全然ゆっくりできませんでした(^▽^;)



オーブンでBBQパーティーをしたら、部屋中が煙で覆われ、みんなで火災報知器を破壊したり、

友達のサプライズパーティーに乗り込むため、1ドルショップで全身仮装してみたり、

放置していた研究論文にとりかかったら、自分で昔書いた英語が理解できなかったり、

寝不足で一日ケージ交換したら、ネズミを交配させるのに、オスとオスを交配させようとしていて先輩に怒られたり(笑)

いろいろありましたが、今日は春休みメインイベントを二つご紹介。



3月11日は大震災から二年ということで、

ツーソンの日本料理レストランで行われた、

震災記念コンサートに行ってきました。

"学者への道" in Arizona

ピアノの演奏を聞きながら、みんなでスライドショーを見たんですが、

未来に目を向けている現地の子供たちのメッセージを聞くと、

日本って思ってるより強い

って逆に励まされました。



もう一つスライドを見て思ったことは、

震災直後、世界中から日本のためにかけつけた人の顔が必死だったってこと。

普段、敵だと言われるような国が震災時に日本に手を貸すのは外交上の戦略として当然かもしれない。

普段、味方と言われるような国ならなおさら震災時に日本に手を貸すのは当然かもしれない。

たとえ国のレベルで当然の行動でも、実際にそれを行っているのは個人。



大切な家族を母国に残して、放射能のリスクをかえりみず、被災地に向かう決意をした人間の目は、やらされているのではなく、本物だった。

それを感謝する人の目も本物だった。

震災から二年経った今も、被災地で手助けする人がいるってことだけで、

この世界も捨てたものじゃないと思えますね。



仙台に住んでる友達に現状を聞くと、

特に沿岸部はまだまだ仮設住宅で住んでいる人は多いし、

宮城県だけでも行方不明者はまだ数百人いるんだとか。

この友達は旅行会社に勤めてるんだけど、

「気晴らしに」「子供のために」とか、

明るい考えで旅行する人も増えて来てると言ってました。



どんなに苦しい時でも礼儀を忘れない日本、

結構クールなくせに意外とアツい日本、

被災地のために頑張る人たちを見ていると、

日本人として誇りに思います。

がんばれ日本。




そして、このピアノコンサートの明くる日、

ツーソン日本人新メンバーも増えて歓迎会と、

自衛隊のパイロット一人が去るのでお別れ会を兼ねて、

うちでディナーパーティーをやりました。

"学者への道" in Arizona

そこで知り合った一人の料理人(エンターテーナー)をご紹介。

池田憲吾さん。

日本の寿司屋で生まれ、10代でアメリカに渡り、ハリウッドや数々の有名店で働き、

今はツーソンのお金持ちを相手に、ホームパーティーに出向き、その家のキッチンを使って、料理を作る、プライベートレストランをやっているすごい人です。



そんなすごい料理人と、衆議院で働くKさんと、ダンディーな男3人(自分を含めてますw)で、

我が家で朝の4時まで語り明かしたので、

学校では教えてくれない人生論をまとめてみます。



1。プロの料理人の哲学

憲吾さんに料理人ですか?と聞くと、

料理人じゃないって答える。

それは、料理はパッケージのようなもので、

シェフの他に、マネージャー、ウェーター、エンターテーナー、食べてくれるお客さんが必要で、

他にも店の間取り、料理のタイミング、彩り、トークの内容、チームプレー、お客さんの雰囲気など、

パッケージすべてが大事だから、

これらをほぼ一人ですべてこなす憲吾さんにとって、

シェフなんておいしい料理をつくる一つの要因でしかないという。



例えば、料理のネーミングの気遣い。

自分はキュピーマヨネーズが大好きで、アメリカ人にもアメリカのマヨネーズの違いをわかってもらいたいと、よくキューピーを宣伝してますがなかなか食べてもらえない。

それはステータスを気にするアメリカ人にとってはマヨネーズは下品なジャンクフード。本当はその味は好きなのに。

だから憲吾さんはマヨネーズをつかってるのにクリームチリと名前をつけ、相手のプライドを傷つけない。



他にもお金持ちのアメリカ人や自然食品愛好家には、ベジタリアンやグルテンフリーの人(小麦などに含まれるグルテンを食べない)が結構多い。

これは日本食を作る上で一苦労。ダシには魚を使ってないことをアピールすることで、気遣いをアピールしたり。グルテンフリーの醤油はまずいからと、日本食なのに醤油はつかわないとか。

なすの田楽なんかしっかり揚げてるくせに、ちょっとオーブンで焼いて、ベイクドって名前で出すらしい(笑)ディープフライって言ったらたしかにジャンクみたいだもんね。



日本の古い職人みたいに、無口でただおいしい日本食を出しても、世界じゃ通用しない。

だって、文化が違う人たちを相手にしているわけだから、時にはプライドを捨て、

自分がおいしいと思う料理を出すのではなく、

食べてる人が一番おいしいと思う料理、環境を作り、

なによりも食べてる人を喜ばせることを第一に考える。

それが憲吾流のプロ魂。



2。夢の叶え方

18歳でアメリカに渡ろうと憲吾さんを突き動かしたのは、

「かっこよさ」

ハリウッドで華やかに料理を振る舞う料理人はかっこいい、

そんなミーハーな動機でも夢をスタートさせてもいいということ。



皿洗いから、ウェーターから、フロアーマネージャーにまで上り詰める成功した経験もあれば、

26歳で店を開き、店員30人以上を動かして、必死に働いても、赤字になり失敗した経験もある。

でもその経験が糧となり、今の料理哲学に辿りついて、

プライベートレストランの新境地を開いて活躍していて、

必死に生きていれば、回り道や無駄な経験なんてないんだって思い知らされる。



憲吾さんは日本を出たとき、プライベートレストランをやってやろうとは思っていなかったはず。いろんな経験をする上で価値観が変わり、その変化を恐れず受け入れた結果、今一番やりたいことをできている。

自分も日本を出たとき、ハツカネズミの腸内細菌の研究をやってやろうとは夢にも思ってなかった。いろんな経験をした上でネズミと腸内細菌の関係に一番可能性を感じて、未知のプログラミングやゲノム学に立ち向かっている結果、今一番やりたいことができている。



おおきなビジョンがあれば、それはもう既に夢と呼んでもよくて、

大事なのはそれを突き詰めて行く覚悟があるかということ。

憲吾さんや自分のように一度チャレンジな環境に飛び込むと、

いやでも夢への覚悟が決まるので、それも一つの手です。




3。パイオニアの宿命

もちろん、人と違うことをすると、コストもある。

ほぼ一人でレストランのすべてをこなす憲吾さんは、一流の料理人、一流のウェーター、一流のマネージャーと比べると、一つ一つのことでは一番になれない、中途半端で不安になると言っていた。

実は異なる学問分野をつなぐ自分の研究も全く一緒で、一流の微生物学者、一流の進化遺伝学者、一流の生態学者と比べると、一つ一つの専門知識では勝てるわけはなく、自分はどれも中途半端


でも、

下済み時代にレストランのあらゆる経験をして、新しい側面から「料理」を考えられることは武器になる。

異なる分野のアイディアをつなげて、新しい側面から「科学」を考えられることは武器になる。



もちろん新しいアイディアは、古いアイディアを変えることもあるから、

なかなか受け入れられなかったり、嫌われたりすることもある。

でもそういう常識外れの人間が、世界を変えるんだって信じてる。



昔の哲学者は、医者であり、生物学者であり、政治家であり、画家であるなんてことも珍しくなかったんだけど、それから学問は細分化され、専門分野ごとに独自の発展をとげた。

そして今、細分化された分野をつなぐintegrativeな考え方や人材の重要性がすでに説かれてる。

異なる分野で自分と似た考え方を持ち、すでに活躍している人と出会えたことはすごく自信になりました。




4。人生は本である

これは憲吾さんの言葉で、

自分が主役であり自分が読者なんだとか。



これはポジティブ思考の極地で、

どんなに酷い目にあっても、

どんなに苦しくても、

自分が主人公なんだから

それを乗り越えれば、すごいストーリーが待っているというロジック。



本気で自分が主人公だと信じるためには、

日々の小さな物語の積み重ねが大事だと思う。

手に入れたいもの、やりたいことのために、

毎日必死で戦って、手を抜きたい自分と葛藤することが、

いい人生の本を書く秘訣だと信じてます。




いやー、アツくなるとブログが長くなってしまうんですよね(;^_^A

ここまで読んでくれた方どうもです。

理想はもっと頻繁に短いブログを目指します(笑)



一緒に話していたKさんも、憲吾さんも、

年は自分より20歳ほど上なんですが、

リミットがない。

いつまでもやりたいことに貪欲な姿勢は、理想の年の取り方ですね。



明日もう一人、リミットが外れすぎちゃって、

南アメリカを自転車で周ってきた超人空手家に会えるので、

どんな話が聞けるのか楽しみです。

幼虫の快適空間、Green Islandの秘密

この写真をよーく見てください。

何か気づきますか?

"学者への道" in Arizona
(news.sciencemag.org)

りんごがおいしそうというのはおいておいて、

紅葉している葉っぱの一部だけ緑色

この緑色の部分はグリーンアイランド(Green Island)と呼ばれ、

その中には葉っぱの中身を食べるガの幼虫が住んでいます。

(HUNTER x HUNTERのグリードアイランドではありませんw)




うちの学科では、学外から教授を招いてプレゼンをしてもらう月曜セミナーと、

学科内の学生やポスドクが研究成果をプレゼンする火曜セミナーがあるんですが、

今日はそれとは別にフランスからDavid Gironという先生が来て、

スペシャルセミナー(実際のセミナー名w)があったので参加してきました。

面白いストーリーなので忘れないうちにシェアします。



木が紅葉する理由は、

冬に備えて木が葉っぱの栄養素を枝に蓄えるから。

日差しが弱く寒い冬に葉っぱをつけたって採算がとれないんです。



でも葉っぱの中で生活するガの幼虫の仲間にとっては、

木に紅葉されたら、葉っぱの栄養素をとられてしまい、成長できない。

そこで進化学的な対抗策として、

幼虫は木を騙して

緑色に保たれた幼虫の快適空間、Green Islandを作っているという話。



幼虫にとってGreen Islandは実に快適。

木を騙すことで、

普通なら植物はワサビみたいなピリピリした防御物質で害虫を攻撃するんだけど、

Green Island内はこの攻撃を減らしたり

紅葉すると栄養素が抜けてしまって幼虫の成長に不向きだけど、

Green Island内は必要なアミノ酸や糖を木に作らせたり

葉っぱが紅葉するのはサイトカイニンっていう物質が減るからなんだけど、

Green Island内はサイトカイニンの量が多く栄養豊富な緑色の葉っぱを保つ

幼虫恐るべし( °д°)!


$"学者への道" in Arizona
(www.hmbg.org)

サイトカイニンが多いおかげでGreen Islandが作り出されているのはわかったけど、

幼虫がもっている遺伝子を調べても、どうやってサイトカイニンを合成しているのか、

手がかりが見つからない。じゃ、いったい、

幼虫はどうやって植物を騙して、Green Islandを作ってるの?



あの快適なGreen Island形成するサイトカイニン合成の秘密は、

なんと、幼虫細胞内に住んでる共生細菌、ボルバキア(Wolbachia)だ!

という発見。



ちなみにボルバキアは、昆虫の中に結構普通に住んでるバクテリアで、

ボルバキアがいないと死んじゃうって昆虫もいるぐらい。

このガの幼虫はボルバキアがいなくても死なないんだけど、

例えば、抗生物質でボルバキアを無理矢理殺すと、

サイトカイニンが合成されないから、

Green Islandも形成されない



話をまとめると、

幼虫が葉っぱの中に住んでいられるのは、

幼虫の中に住んでいるバクテリアのおかげ。

幼虫とバクテリアの共進化(co-evolution)ってやつです。



この話を聞いて思ったのは、

人間が酸素で溢れた地球に住んでいられるのは、

人間の細胞の中にミトコンドリア(バクテリア起源)が住んでいるおかげ。

酸素なんてなんでも酸化しちゃう毒だから、

ミトコンドリアが大昔の我々の祖先に入り込まれて共進化が起って、

今こうしてミトコンドリアが酸素をエネルギーに変えてくれなかったら、

こんなのんきにブログなんて書いていられない。

マジ感謝だーヾ( ´ー`)




ちなみに、Green Islandをつくる他の種類のガも結構いて、

その8割は共生細菌ボルバキアをもっているらしい。

でも逆に言えば、残る2割は他のバクテリアのおかげなのか、

それとも何か未知のメカニズムが存在するのか、

まだわからないんだって。

"学者への道" in Arizona
(treesforlife.org.uk)



自分だけで生きているように見えても、

あなたの体に住んでる細菌の数は、

あなたの細胞の数の約10倍(皮膚、口内、腸内など!)



世の中、案外、

目に見えない助け合いの上に成り立っているのかもしれませんね。

なんちって。