墓参りには必ず着物を着て行く、和裁の師匠であり腕の良い仕立て屋だったお袋に着物姿を見せる為。てぇ言うのもあるが、なによりアタシが着物好き。
着物を着る前日には着て行く着物を選び、それらにアイロンをかけ置くのが習慣。
着物の準備には3・40分かかる、この間退屈をしない様に、今回は市丸姐さんの端唄を聞きながら。
この中で一番好きな唄が木遣りくずし、「兄貴ゃ、内かと、姉御に問えば♪、兄貴ゃ二階で、木遣りの稽古♪音頭とるのは、ありゃ内の人♪」ここんところにあこがれる、てぇもんだわさ・・・。
この市丸姐さんの旧宅が柳橋に有り、今は喫茶店の様になっている。大川端に建つ数寄屋造り、柳橋の蕎麦屋か馬喰町の鰻屋へ行っていた頃は、たまにここでお薄を飲んだ。
先ずは羽織にアイロンをかけ、お次は着物。この日は唐桟縞の着物に墨色の羽織を用意した。
着物のたたみじわは由とされるが、そこは粋な着こなしをもっとうとするアタシ、目につかない下前にも丁寧にアイロンをかける。
長襦袢は分銅小紋正絹の長襦袢。これは着尺を長襦袢に仕立てた物、これ見よがしな大柄の長襦袢は、粋じゃ無ぇ・・・・・。
着物の裏は京花(正花)と決まっている。これは江戸っ子が好んだ裏地、お召だろうが紬だろうが男物の着物の裏は。全て京花だった。
こんな事を知っている呉服屋は今は皆無、数年前に店仕舞した日本橋の呉服屋の番頭さんは知っていた。
この番頭さんは、昔の御仁は羽二重の紋付にも、裏地を京花にしたとお袋と同じ事を言っていた。
アタシの羽二重紋付はそこまではせず、鼠の羽二重で仕立ててもらった。勿論仕立ては亡きお袋・・・・・・。
アイロンがけが済んだ後は、羽織の乳に羽織紐を通す。羽織を着る度に毎回これを繰り返すので乳が痛む、そこでその傷み具合を見て、乳を付け直すのも着物の準備の一つ。
この羽織紐は、江戸組紐じゃ一番だと思っているところの品。細身で短い房のリバーシブル、何時も御覧の金茶を締める・・・・。
着物の準備が出来た後は、当日手にする小物類の準備。羽織紐や角帯に合わせて下駄を出し、合切袋に風呂敷も選ぶ。
風呂敷に包んだ物は年始の品と、京花で作った前掛け。下の写真がそれを締めた処・・・・。
合切袋はくすべ印伝の勝虫、下駄は印伝金茶麻の葉の鼻緒を挿げたのめり。
着物を綺麗に着こなすのは手入れが肝心、昨日の記事じゃ無いが、なんでも手を掛けてやれば長持ちする。
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