大阪松竹座での、三代猿之助四十八撰の内、「ヤマトタケル」の続きです。
團子の内面と中車の冷徹さが目立ちますが、そこに歌舞伎味のアクションがあるのが、スーパー歌舞伎。
熊襲の国で待ち受けるのは、タケル兄弟。 自在の猿弥に、歌之助がやや弱い。
大騒ぎの民や兵士の、細かな芸は見どころ。 そこに、ヤマトタケルによる、上へ下へと、屋台崩しの大活劇。
踊り女から若武者まで、体幹が崩れずに駆け回る團子が活き活き。 私は、勝った、勝ったのだ。
勝利の快感より、父への義務感が目立つ演技。 どうして、父上はわたしを認めてくれないのだ。
悲しそうな表情より、無機的に遠くを見つめる團子の目が印象的。 それを慰めるのは、伊勢の笑三郎。
ほっとしたのもつかの間、父の命で東国に旅立つタケル。 それに同行するタケヒコとおと橘姫。
タケヒコには、もう持ち役となりそうな福之助。 微妙な立場から、タケルを理解し支えるようになる、いい演技。
陰謀で火攻めに会いながら、火には火をの、またまた大活劇。 旗が効果的な火の争いが、スピーディ。
ここで、海路の悲劇。 勝利でも笑顔がなく、困難に深い悲しみがにじむのが、この劇の特徴。
海で皇后になると、タケルを突き放す壱太郎の心が深い。 泣き叫ぶ團子の声が、悲痛すぎる。
少し重くなってきたところで、尾張の国造の館は、ほっとするところ。 迎えるのは、橘三郎と笑也。
錦之助に代わった橘三郎は、余裕の演技。 笑也も安心で、慣れないギャグを飛ばしているでよ。
大和へ帰る前に伊吹山の山神征伐を命じられた、タケル。 複雑な心境の中に、慢心がちらほら。
それが嫌味でなく同情してしまうのが、團子の特徴。 諫める福之助に、團子を支える気持ちを感じる。
猿弥、門之助、嘉島典俊等による、雪の大活劇が、コンパクトな松竹座にマッチして引き込まれます。
傷ついたタケルが大和へ向かう長い場は、つらいところ。 大和へ帰りたい。 切実な團子の想いが胸を打つ。
で、タケルの死後の御陵前。 死を悼みながら、権力に近づいたことを知ったみんなは宮廷に向かう。
この皮肉さが、梅原猛の思惑。 蝦夷から付いて来て、納得がいかないまま従う歌之助が、印象的。
そうして、スーパー歌舞伎の大団円。 みんな、さようなら~。 祖父そっくりに、團子が感謝。
そうして、たっぷりと時間をかけた宙乗り。 天翔けるこころ、それが團子。 その目は何を見ているのか。