春秋座で立川志の輔の独演会 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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北白川の春秋座での志の輔らくごは、今年で16回目。 今年もたっぷりお願いします。

 

前座は、七番弟子の志の麿。 出から高座まで距離があって、緊張気味の様子。

ゆったりしたテンポの「粗忽の釘」が、あわてものらしく聞こえないのがおもしろい。

 

さて、志の輔。 出囃子が延々と鳴っているのに、なかなか出てこない。

開口一番、「雪駄が見つからないと思ったら、弟子が履いて出てまして」、だって。 この、粗忽者めが。

 

で、ちゃんとした(?)マクラ。

自分や世間の話を新旧織り交ぜながら、独特の角度から本筋に入ってくるユニークさ。

 

大谷選手の大活躍と大物ぶりから、藤井棋士のじっくり考える大切さと続く。

皆さん、藤井さんのように2時間37分も考えられますか? 私がこの時間黙ってたら、皆さんどうします?

 

ここから、大店の主人2人の酒席。 酒が飲めない主人に代わって、下男の久造が呼ばれることに。

五升飲んだら、いくらでも小遣いをやるぞ。 飲めなかったら、お前のご主人がわしを箱根旅行に招待じゃ。

 

ちょっと外で考えてきますべえって、出たっ、大長考の大物ぶり。 戻ってきた久造が、一気に酒を飲みだす。

酒好きの志の輔だけに、飲みっぷりが豪快ながら細かい。 下品にならない技にいつものオチの、「試し酒」でした。

 

休憩のあとの再開は、何だか重々しい雰囲気。 これは、新作でなく、古典の気分かも。

マクラは、ジャズの中古レコード蒐集の趣味から。 今日は、高島屋4階のショップに行ってきたとか。

 

特に、リーリトナーのダイレクトカッティングのレア盤は、12枚も持っているそう。

そう話しながら、誰もが何かにのめり込んでいる(志の輔は「中毒」と言っています)と進める。

 

なんでぇ、真っ暗じゃねぇか。 灯りくらいつけろよ。 あんた、お久がいないよ。。。 これは、「文七元結」だ。

圓朝作の筋をしっかり押さえながら、人物がくっきりしている名人芸。 これはもう、落語芝居。

 

博奕にのめり込んだ長兵衛を、優しく厳しく諭す、吉原は佐野槌の女将。 聴いていて、背筋が伸びます。

金を掏られたと思いこみ大川に身を投げようとする文七と、長兵衛とのやり取りは、長兵衛の優しさが身に浸みる。

 

文七の勘違いがわかる近江屋の場は、歌舞伎にはない場面。 文七を助けた親方の行方を捜して、はらはらどきどき。

で、長兵衛が住む長屋での、お馴染みの大団円。 安心して引っ張られて、すかっとした80分の技でした。