妹背山婦女庭訓の鱶七がでっかい | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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国立文楽劇場での「妹背山婦女庭訓」は、鱶七が登場するところから、がらっと雰囲気が変わります。

 

ここは、入鹿御殿。 権力を手に入れた入鹿に献上品がどんどん届き、家来たちが媚びへつらっています。

フン、ホイ、ヤ、ヤア、コレ、アアコレ、、、と、ツメ人形の仕丁が笑わせます。 名の出ない黒衣でも、この技。

 

ここに、鱶七がぬっと登場。 文七のぶっとい眉に、大爆発の撥鬢頭。 手足が大きいのが文楽人形の仕様。

これが、破天荒で豪放磊落。 玉志の主遣で、人形が一人で動いているように見えるのが、おもしろい。 

 

恭順の意を示す鎌どんの使いなのに信用されず人質に。 ヤア皆呑んでしもた、と土産の酒を飲んでごろり。

とたんに床下から突き出た槍をぎゅっと縛って、枕がわりに。 おや、無骨な漁師だけでは、なさそう。

 

ここで、大勢の官女たちのおもてなし。 短い女子ぢゃと、鱶七が驚くくらいの、ツメ人形ならではの背丈。

鱶七に抱きついたりして、なかなかの大胆ぶり。 それでも、あつちへきりきりうしあがれ、と追い払われる。

 

いいテンポのチャリで、なごみます。 毒酒を見破った鱶七は、取り調べのため奥に連れて行かれます。

太夫は、口が硯太夫で奥が錣太夫(熱い鱶七にぴったり)。 三味線は、燕二郎と宗助がしっかり。

 

同じ入鹿御殿で、姫戻りの段はしっとりと。 すっと帰ってくる橘姫。 そこに、苧環の糸を追ってくる求馬。

姫は求馬が淡海だと知っていたのに、淡海にも姫の正体が敵入鹿の妹だと、わかってしまいます。

 

ここは、希太夫と勝平に乗った、一輔と玉助の動きを追いましょう。 どんどん近づくその距離が、ハイテンション。

真夫婦となりたくば、一つの功を立てられよ。 恩にも恋は代へられず、恋にも恩は捨てられぬ。

 

入鹿から宝剣を盗み取ることを迫る淡海。 それに悩む姫。 恋より忠義の淡海と、人間味あふれる橘姫。

そこに愛はあるんか、と思いながら、夫婦になることを誓う二人。 そうとは知らない、お三輪はどうなる。