松竹新喜劇による、南座での新春お年玉公演は、Bプロの「流れ星ひとつ」です。
四人姉妹の長女、千代子は亡くなった母親の代わりに、父親と妹たちの面倒を見てきた。
婚期を逃した千代子でも、密かに恋心を抱く人がいて、、、 昭和30年代の雰囲気たっぷりの、恋物語。
千代子には、久本雅美。 今日はお笑いを見せない、シリアスな演技。 それでも、どこかユーモラス。
サザエさんのようなくせ毛、巻きスカートにセーター、赤いジャケット、エプロンがお似合いで、かわいい。
娘を心配する、のん気な父親には、ゆったりペースの文童。 ここに、次女夫婦の転勤、四女の縁談話。
あれっ、この設定って、小津じゃないですか。 と言うことは、雅美が原節子で、文童が笠智衆。
いやいや、そんなはずはないんですが、そんなことを、ふっと思ってしまいました。
近所の世話焼きのおっさんが、千代子に養子をもらおうと大騒ぎ。 そんなとき、憧れの人が家にやってきて。
あたしなあ、養子もろても、ええ思てますねん。 いや、何やしら、熱うてかなんわ。
千代子がすっかりその気になったのに、なんとこの男の婚約相手は、、、しかもその顛末は、、、
おろおろしながら、可愛げがあって、しっかり自分がわかっている。 雅美の演技は、奥が深い。
と、ここに女房に逃げられた、風采が上がらない庄吉が現れて、養子の候補に。 八十吉が、地味さの滋味。
あんなあ、あたしやっぱりあきませんねん。 あっち行ってもろて、ええですか。 一人で泣きますわ。
千代子が健気。 星がきらめく、物干し台の舞台が美しすぎる。 うわああーん、、、あっ、流れ星がひとつ。
で、結末は、ちょっぴりほろ苦くても、ほっこりと。 やっぱり、男は内面やわ、やて。 千代子はん、幸せにな。
これで、のんきな文童も安心。 世話焼きの江口直彌も、びっくり。 雅美の魅力たっぷりの、三場でした。