デフレーションがどうして良くないのか その2 | ながめせしまに@無為

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前回の記事 リンク デフレーションがどうして良くないのか その1

 前回は具体的には非正規雇用者の不利益、また正規雇用者の潜在的失職リスクの増大をまとめました。今回はその続きから。

【デフレで不利益を受ける層、これから不利益を受ける可能性がある層の続き】

②年金給付金の低下
高齢化が進んだ現在、年金の受給額は関心が高い。デフレ下の年金はどう影響を受けるか。
結論からいうと、デフレで物価下落が進むと年金の受取額も減るという事です

 参考サイト:年金が減額されるわけ


③住宅ローンなどで債務を抱える者は、物価の下落によって実質的な債務が増大する


 デフレでは貨幣の価値は上がるが物価・資産の価値は下がりますので、購入した資産の価格も下落する。実質的な債務が増大を例にすると次のようになる。

  (1)本日、10年ローンで1000万の家を購入 毎年払うローンは100万円

  (2)1年後 隣の同一物件がデフレで価格下落し、隣人は500万で購入した 
         10年ローンなら毎年払うローンは50万円


(1)が払うローンは(2)が払うローンよの倍。また、(1)が1年後に売却を考えても資産価格が大幅に下落しているため、多額の売却損が生じる。 そうなれば売ることもできず、仕方なく住み続けることになる。デフレ下では同じ規格の物件なのに、お隣さんよりも多くのローンを払うことになる。


④名目金利の低下により、市中変動型の債権(普通預金など)の利子収入は減少する


 昔は利子率が高く利子生活も夢じゃないという時代があった。現在は長期預金でさえ1%ない。手数料のほうが高くつき預金のうまみがありません。そ うかといって現金で持っていれば泥棒・強盗・オレオレ詐欺などにあう不安もある。株で資産運用しても失敗するリスクもあるため結局銀行に預けているのが安 心と感じる人が多い。デフレから完全に脱却すれば利子率が上がりますので、多少預金するうまみが戻ります。

【具体的なデメリットのまとめ】

 経済学者の岩田先生(現日銀副総裁)は

「現在と将来の所得が変わらなければ、デフレのほうがたくさんモノが買えるため良いが、所得は物価の変動によって影響を受ける。さらに企業の倒産・失業、預金・生命保険の安全性、将来の年金などがデフレによって悪影響を受ける」


「物価が下落しても失業によって所得が無くなれば実質所得はゼロとなり、生活が困窮するだけである」と指摘している。
 
また経済学者の若田部先生は
「デフレによって年金・失業保険などの長期的な制度は崩壊の危機にさらされる」と指摘している

【デフレギャップ(マイナスの需給ギャップ)】

  デフレギャップとは、総供給>総需要 の場合のその差を指す。

2015年現在の日本ではこのマイナスの需給ギャップが15兆円ある。

デフレ・ギャップが恒常的に存在することで、失業の増加、物価水準の下落、成長率の減少が続く。デフレギャップを解消するには、需要を増やすか供給を減らす必要があるが、市場において供給システムが出来上がっているケースで供給を減らすことは容易ではない。

一般に政府が減税、金融緩和政策、政府支出を増大させるなどを行い需要を喚起する政策が取られる。国によっては兵役で雇用を創出する場合もある。日本ではこのギャップの数値は、内閣府のレポートに「需給ギャップ」として発表される。

現在の安部内閣が行っている政策に当てはめてみると

 ①減税 

 ⇒ 減税どころが民主党時代に行った三党合意を理由に消費税増税8%を実施
 ⇒これにより黒田バズーカ一発目の効果を帳消しにしてしまい、経済がやばいことに
 ⇒これを受け、2014年12月 安部内閣 消費税増税派と戦うため解散総選挙
 ⇒快勝⇒消費税10%延期を取り付ける 

 ②金融緩和政策 

 ⇒アベノミクス第一の矢(通称黒田バズーカ第一弾、第二段)で実施
   第三弾の黒田バズーカが必要と言われている。

 ③政府支出の増大 

 ⇒2015年予算案は前年とほぼ同じの微増。 

 ⇒アベノミクスを支持するリフレ派の間でも、緊縮財政の傾向にあると心配されており、

  追加の補正予算案(3兆円では足りない)が望まれている。


②については安部内閣はうまくやっている。①については財務省を始めとする増税勢力との戦いが続いている。本来は対立する立場ではないが、現在は財務省が増税で権益の拡大を目指していることで官邸と立場を異にしている。

③については財政の均衡も必要とする(財政再建)論者も多い。やはり財務省やその御用学者。経済成長によって財政再建はおのずと改善するとするリフレ派の経済識者からは、デフレを脱却するまでは気にすることではないとの批判が多い。

【デフレスパイラル】

物価の下落 → 企業収益の圧迫 → 企業の経費節約 → 需要不足

→更なる物価の下落 → 更なる企業収益の圧迫 → 設備投資の抑制 → リストラなどによる雇用の減少(失業の増加) → 家計の所得の減少(購買力の低下)→消費の減少

このような流れを指す。最終的に失業、家計所得の減少に及ぶ点が大きな問題。スパイラルというだけに負の流れは循環し、一度はまってしまうと脱却するのが困難である。


デフレの特徴をまとめていて思うこと


 2009年リーマンショックを契機に日本は深刻なデフレが始まった。現在の安部内閣が行っているアベノミクスはデフレからの脱却のための手段を指す。


 増税はデフレ脱却の足をひっぱることが指標から明らかである。安部内閣では増税をすすめる財務省と対峙しているが、世間ではあまり知られていな い。デフレを放置した日本銀行ついても改革を迫り、時の白川総裁を呼びつけた。その後新たに黒田総裁が日銀総裁につき量的緩和を実施する。


 アベノミクスは適正なインフレ率になるまで経済を活性させデフレからの脱却がその目的である。
これと対立関係にある財務省、デフレで日本経済が弱体化することを望む勢力や政治家、そしてメディアといった大きな勢力を牽制しながら政策を実行している途中です。

第二次安部内閣の組閣以後はデフレ論者、リフレ論者の両方の立場の議論が活発化しました。当時はまだ経済学について理解が乏しかったこともあり、どちらの主張に合理性があるか慎重に観察していた。


結果からいえば、デフレ論者の経済予測はまったく外れ、リフレ論者がいうように経済指標は推移した(消費税8%を実施がなければなおよかった)。そのためリフレ論者の主張は、実績という何よりも確かな裏付けを備え、合理性を備えている。

リーマンショック以後、日本を除く先進国では大規模な金融緩和が実施されていることも重要である
 ・アメリカ ⇒ 量的緩和を実施 ⇒ かなり早い段階で経済回復し好景気

 ・日本 ⇒ デフレになるが何も処方箋を実施しない⇒不景気就職難・賃金の低下
      ⇒アベノミクスで量的緩和実施 ⇒円安株価高 有効求人倍率の上昇 賃金の上昇

 ・ヨーロッパ ⇒ 緊縮財政を堅持 ⇒ EUも深刻なデフレになる目前までくる
         ⇒2015年1月 欧州中央銀行量的緩和を実施 ※1  
         ⇒ギリシャ 緊縮財政を採る政権が大敗し量的緩和を掲げる左派勢力に政権交代
         ※1 アベノミクスがうまくいったのを見て参考にしたともいわれる。


過度なインフレは良くないが、数%程度のインフレターゲットを設定することは経済を活性化させる。目標のインフレ率まで達したら金融引き締めでコントロールするため、ハイパーインフレなどの恐れはない。


インフレは怖いもの、デフレ堅持は必要だと識者がメディアには多い。東大教授などご立派な肩書をもっているため、御用学者というものを知らないと、肩書の大きさに鵜呑みにしてしまう危険がある。


幸いデフレ論者とインフレターゲット論者(リフレ派)の活発な議論を見てきたため、こうした御用学者の予測は大きく外れたを実際に確認し、また書物などで彼らはどういう背景でそのような主張をするのかも理解が進みましたので安易に鵜呑みにするようなことはありません

御用学者というものは確かに存在し、民放の大手メディアでもっともらしい顔で説明しています。この理解が世間で広く浸透すれば、偏向報道に騙されず良識ある日本人が目覚めるも可能性は高い。


補足
本文記事の補足をすると2014年12月の解散総選挙では、消費税10%の延期は同法令の景気条項(附則18条)という方法を取れば、総理の判断で回避で き解散は必要なかったとする主張がある。しかしこの附則18条を利用する手法は実現性が難しい内容であることに留意が必要である。


予算法案関連であるため、この附則18条を通すには、衆議院参議院の両方を通す必要がある。安倍総理を支持するグループが多ければ問題ない


しかし、実際には同じ自民党・公明党でも一枚岩ではない。例えば安倍総理と近い仲にある麻生財務大臣などは選挙前(実際には選挙後も意見を翻意してるが)は消費税増税は不可欠であると主張し、与党にでさえ消費税増税に賛成する議員のほうが多かったのである。そのため衆議院を通すことさえ現実性を欠いてるというのが実情だったことを忘れてはならない。

だからこそ安倍総理にとっては8%の消費税増税で死にかけているアベノミクスをつぶさないためにも、とどめとなりかねない10%の消費税増税はなんとしても延期(できれば取りやめ)をしたかったと言われている。


当時新聞やメディアでは大義なき解散などと、激しく非難されたのは記憶に新しい。解散前は増税はしなければならないんだと頑なに主張していた党が、いざ解散が決まると消費税増税は反対!と言い始めた。そう民主党です。


その後、民主党の代表に新たに岡田氏がつくと、選挙時の主張はなかったことにし消費税増税は必要!とか言い始めたことは腹立たしい思いです。