ルネ・ラリックは、フランスのアール・ヌーヴォー、アール・デコを代表すガラス工芸家です。ガラスといっても、花瓶や照明だけにとどまらず、生活全般にかかわるような製作活動をした人でしたので、館内には、宝飾品、灰皿から車のラジエーター・キャップ、内装した電車(別料金)までもが展示されていました。

特に香水ビンは、ひとつひとつが趣向をこらしていて、すてきでした。有名な蓋がツバのように垂れ下がっているものなどは、優雅で、うっとりと見入ってしまいます。
蛇の髪飾りやトンボの首飾りなどは、「キモきれい」とでもいうような感じ。ちょっと引きつつも、その発想の豊かさに感心してしまいました。

2階にある室内装飾『雀』は、八角形をした、こじんまりした一室です。琥珀色をした木の壁にちりばめられている丸い雀たち。光をうけると、貝のようなおだやかな乳白色を反射させます。これがガラスでできているなんて驚きです。

色ガラス、すりガラス、金属などとの組み合わせ……ガラスのもつ多彩な姿を、ラリックは作り出していました。


箱根・仙石原には、美術館がたくさんあります。ベネチアン・グラスの箱根ガラスの森、マイセン食器の箱根マイセン庭園美術館、サン=テグジュペリの星の王子さまミュージアム。
今回は、ポーラ美術館に行ったついでに、箱根ラリック美術館にも行ってきました。

今年3月にオープンしたばかりのラリック美術館は、湿生花園の隣にあります。
中に入ると、レストランと売店、手入のゆきとどいた芝生。
広い庭には、植えたばかりの植物が心もとなげに根をはり、それでも開館当初に来た頃よりは、だいぶなじんできているのがわかります。カエデが紅葉をはじめていました。
小池では睡蓮が黄色い花を咲かせていて、(もちろんそれを目指しているのでしょう、)ますますモネの庭らしくなっていました。

細い道をたどってくと、木々に隠れるようにして、美術館が建っています。木をふんだんに使った、あたたかみのある建物です。


会場には、彫刻もいくつかありました。
それまではあまり興味がなかった彫刻。今回、いくつか見比べてみて、はじめて面白いなぁと感じました。

彫刻で有名なのはロダンですね。彼の作品もいくつか出展されていました。良かったのが『カレーの市民(第二試作)』。
ゆったりとした布を身につけた男たちが、頭をうつむけて立っていたり、腰をかがめたりしています。ただそれだけなのに、なんというのでしょうか、全身で沈鬱ななにかをかもしだしていました。
両手で頭をかかえている男は、絶望しているようです。書物を手にした男も、古代の英知を学んでいるというよりは、悩みに沈んでいるようです。

感情を全身で表現しているさまは、言葉を使わないパントマイムのようで、見ている者にうったえるものがありました。1mに満たない彫刻なのに、こんなに伝える力がある。さすが巨匠だと改めて感動しました。
後で調べたら、街を包囲され、投降することになったカレーの市民を描いた(彫った)ものでした。本物は2mだそうです。

さて、ほかにルノアールの作品の、女性のブロンズ像がありました。
こちらはルノアールの絵がそのまま立体になったようでした(あたりまえですけど)。丸みをおびた、ぽってりした全身。太めの、ちょっと長すぎる二の腕。深刻なロダンとうって変わってほのぼの系のルノアール。なんかおかしかったです。
ブロンズは、絵のパステルカラーでまろやかな雰囲気はなく、ただ真っ黒な体をてらてらと光らせていました。ルノアールっぽさが少し足りないかな? 白い大理石のほうが合っていたかもしれません。

ドガのブロンズ像。踊る娘。
動きの一瞬をとらえたその姿に、はっと目をうばわれました。スリムな肢体がいまにも動き出しそうです。顔の表情がどう、指の表現がどうというのではなく、全身の動きをぱっとつかみとって彫刻にしたかんじ。生き生きした躍動感がみなぎっていました。
ドガは一連の踊り子の絵が有名ですが、ブロンズでも「動の美」を的確に表現していたのだな、と、その才能に感心しました。
他にもブロンズの作品があったら見てみたいと思いました。

ブロンズ像にも、作家によって雰囲気がまったく違うのがわかりました。絵画と同じなんですね。とても面白かったです。


ルノアールの作品も、1フロアを使って展示されていました。
女性や娘、子供の体のもつ持つふくよかさ、やわらかさ。優しげな女性らしさを、あのなでるようなタッチで表現しようとしたのでしょうか。まわりの木々さえもしなやかです。

面白かったのは、静物を描いたものにも、それが出ていたこと。
花をいけた花瓶の絵などは、花はどうということがなかったのですが、花瓶は丸くつややかで、妙ななまめかしさを感じてしまいました。

そういえば、別の展覧会で見た桃の絵も、同じような色っぽさがあり、友人と笑ったことがありましたっけ。

あとは、ルドンの色が心に残りました。
『イカロス』のオレンジ。
『アネモネ』の花の白、赤、花瓶の水色。
『アポロンの二輪馬車』『帆船』の、空の色と、物の茶色との組み合わせ。
色が輝いているような、そんな錯覚をおぼえました。


箱根の仙石原にあるポーラ美術館に行ってきました。平日だったので、道路は混んでなかったのですが、登っていけばいくほど靄(もや)でかすみ、着いた頃にはあたりは真っ白でした。台風の影響でしょうか。箱根のくねくね道でこれはちょっと怖かったです (^^;;;

さて、ポーラ美術館は近代的な建物です。ガラスを多用しているので頭上から外光がふりそそぎ、屋内の広さもあって、非常に開放感があります。
エスカレーターをおりて受付へ。チケットを購入し、またエスカレーターで下へ。
『開館3周年記念 印象派展』。
メインはモネとルノワールです。

モネは、初期の古典的な絵画からはじまって、晩年の印象派のタッチの絵画まで、いろいろ展示されていました。やはり心に残ったのは、当たり前かもしれませんが、代表作と言われているものでした。
『睡蓮の庭』の、自然のやわらかな美しさ。
『サルーテ運河』の、日に当たって壁がピーチオレンジに輝くさま。
光を描き、建物すら光と一体になっている『国会議事堂、バラ色のシンフォニー』『ルーアン大聖堂』。

モネは光を描いた画家と言われていますが、たしかに彼でなければ描けないだろうと感じました。それが“個性”というものなのでしょうが、それ以上に、光を追求し、つかみとって描いた人がもつ、説得力がありました。


空からの 打ち水で
街に 涼しい風が 吹きました
夏が 一時休止です


先日、仕事を辞めたとき、数人の方から紅茶をいただきました。缶をながめていると、この紅茶はUさんから、あの紅茶はSさん、といただいた人を思い出します。

ちょうど家のが終わってしまったので、ひとつ封を開けてみました。茶っ葉の落ち着いた、さわやかな香りが、鼻を刺激しました。
やかんでお湯をわかし、淹れました。

「これはね、ここのお店のなかで、私が一番気に入ってるものなのよ」
そう言いながら手渡してくれたUさんの声が聞こえてきます。
年配のはずなのに40にしか見えず、カールした髪がかわいらしかったUさん。期末にはいつも予算消化をめぐって私を悩ませてくれたUさん。
お気に入りを選んでくれた、なにより紅茶を贈ろうと考えてくれた。その気持ちが、やわらかな湯気となって、私を包みこみました。

一口飲み、ほうっと息をつきます。職場での思い出が、胸のなかであたたかく、紅茶色に染まっていきました。

派遣の仕事が3年満了ということで、円満退職しました。

最初の1年目は仕事がキツく、何度も辞めようと思いました。辞めたほうが、あの時の自分にとっては良かったと思います。

でも、辞めなかったことで、自分は頑張れるんだという自信がつきました。

そしてそれは、支えてくれた人がいたからこそ。仕事から帰ってぐったりしている私に寄り添ってくれていた彼氏と家族には感謝です。ほんと、頭が上がりません (デカイ顔してるって? いやいやそんなはずは)。

職場でも、周りの人たちに助けられました。問題になるほど大きな失敗をしなかったのは、水際で止めてくれた人たちのチェックのおかげです (^^;;;)。縦割りの職場ではあったけれど、私は完全に一人というわけではなかったのでしょう。

さて、来週からは、しばらく家でのんびりしようと思います。お餞別にいただいた紅茶やお菓子をいただきながら、ビデオ三昧の予定 (^^)。宿題のない夏休みが始まるようで、今からワクワクしています。

昔、FMラジオで聞いたサウンド。ギターやピアノ、フルートの音が、軽やかに踊っているかのようでした。
一気に心をうばわれました。
グループ名はカリオカ。フュージョンを好きになったきっかけのアーチストです。

学生だった私は、おこづかいも少なく、レンタルレコード屋 (当時はCDはありませんでした) で、カリオカを借りてきました。テープにダビングし、くり返し、テープが伸びるまで聴いたものです (当時はMDもありませんでした…)。
空間を感じさせるギターの余韻、朝の光のようなピアノ、それを支えるベースやパーカッション。
フュージョン全盛の時代でした。
カリオカの他にも、スクエア、渡辺貞夫、カシオペアなどを聴きました。
大人になってから、カリオカのCDを買おうと思い、調べてみました。1枚をのぞき、すべて廃盤になっていました。

さっそく取り寄せてみました。
『Pale Moon』。
タイトルのイメージに反して明るいオレンジ色のCDをデッキに入れ、再生ボタンを押しました。
それは、昔私が聴いたアルバムではなかったのですが、流れてくる空気は同じでした。
部屋の中が、晴れ渡ったようでした。
 

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