電波バトル10 、太陽光発電と風力発電のEPT(エネルギー・ペイバック・タイム)
エネルギー問題を考える時に、考慮すべき重要な要素として、EPT(エネルギー・ペイバック・タイム)という数値があります。
これは、太陽光発電装置や風力発電装置などについて、装置を生産する時に消費したエネルギー(及び、装置の設置・運用や廃棄処分のために消費したエネルギー)を、その装置が稼働して産み出すエネルギーによって回収するためには何年かかるか?を表す数値です。
このEPTの数値は、太陽光発電や風力発電を肯定する立場の人と否定する立場の人とで、全く違う数値が提示されています。
太陽光発電や風力発電を肯定する立場の人が書いた文書では、EPTは大抵1~3年となっており、装置を生産するために消費したエネルギーは1~3年で回収され、2~4年目以降の発電分は正味のプラスのエネルギー生産である、とされます。
一方、否定する立場の人が書いた文書では、太陽光発電や風力発電によって産出されるエネルギーは、太陽光発電装置や風力発電装置の生産のために消費されたエネルギーを下回るため、EPTは無限大、つまり、太陽光発電や風力発電は、発電装置の生産のために消費された分のエネルギーを産み出すことなく装置の寿命が尽きるので、いつまで経っても消費されたエネルギーは回収されず、エネルギーの無駄遣いにしかならない、ということになります。
肯定派、否定派両者のEPTに大きな隔たりがある理由は、大きく二つ考えられます。
一つには、発電装置がどのような状況で利用されると仮定するのか、その仮定の違いがあります。
太陽光発電の場合、晴れの日が多い地方か、曇りや雨が多かったり、冬に積雪の多い地方か、また、鳥の糞や砂ぼこりや潮風の影響が多いか、少ないか、設置場所の角度と方角、緯度による日照の違い、トラックの排気ガスや粉塵が多い場所かどうか、等々。風力発電の場合は、風の吹き方、落雷の影響、潮風や砂ぼこりや鳥の糞や粉塵の影響による劣化や故障等はどれくらいか、等々をどのように仮定するかによって、EPTの計算は違ったものとなります。
写真のように強風や落雷で風車が倒れたり、壊れたりすることもあるので、そのような場合は風力発電装置を作るために消費されたエネルギーが無駄になったり、修理・補修のために新たなエネルギー消費が発生したりします。また、あらかじめ落雷や強風への対策を十分に強化しようとすれば、それはそれで、建設のためのエネルギー消費を増やすことになります。
(これは、原子力発電所の耐震性を十分に確保しようとすると建設費が高騰してしまい、建設できなくなってしまうので、柏崎刈羽原子力発電所のような耐震性の不十分な原子力発電所を、十分な耐震性があるかのように装って建設するのと同様の理屈です。地震や気象といった自然条件をちゃんと考慮すれば、設備の建設に要するエネルギーやコストは非常に大きくなります。)
いずれにしても、現実に落雷や強風による被害は発生しているので、EPTを計算する時は、それらを考慮しなければなりません。
太陽光発電や風力発電を肯定する立場の人達は、おそらく良好な環境の下で装置が利用されると仮定してEPTを計算していると思われますが、屋外に設置する装置なので、設置場所によって一つ一つ条件は異なります。理想的な好条件で発電装置が利用される場所は限られているので、現実のEPTは理想的な条件の下でのEPTより悪いと考えるべきでしょう。
EPTが肯定派と否定派で大きく異なるもう一つの理由は、太陽光発電装置や風力発電装置を生産するために消費されたエネルギーをどのように計算するか、どの範囲までを太陽光発電や風力発電に必要な設備と考えるかによって、EPTの数値が大きく違ってくることです。
太陽光発電や風力発電は、お天気まかせ、風まかせの発電なので、それだけでは役に立ちません。夜や、曇りや雨の日や、風の無い時にも電気が使えるように、何らかの対策が必要で、その対策のために消費されるエネルギーもEPTの計算に含められるべきです。
例えば、一般家庭の屋根の上に設置される太陽光発電装置の場合、晴天の昼間に発電した電気をバッテリーに蓄え、悪天候の日や夜間に利用する方式が考えられますが、バッテリーは高価で寿命も短いため、この方式はほとんど利用されず、現実には、発電量が電力消費量を上回る時は電力会社に電気を買い取ってもらい、下回る時は電力会社から電気を購入するシステムが利用されています。
この場合、太陽光発電装置の発電量の変動、もしくは発電量と消費電力量の間のギャップに対する対応が、家庭ではなく電力会社で行われているので、ついつい見落としがちですが、このために発生するエネルギー消費も、太陽光発電に関するエネルギー消費としてEPTの計算に含められるべきです。
この、発電量と電力消費量のギャップを埋める役割(出力調整)は、電力会社では水力発電と火力発電を利用して行われます。原子力発電は出力調整には不向きなので、利用できません。
水力発電の場合、電気が余っている時にダムの下の水を上に汲み上げ、電力が不足する時にその水を利用して発電することによって、発電量と電力消費量のギャップを埋める役割を果たします(揚水発電)。しかし、水力発電所を建設できる場所は限られているので、火力発電所も発電量と電力消費量のギャップを埋めるために利用されます。火力発電の場合、水力発電のように余った電力を有効利用することは、できません。また、水力発電や火力発電でも出力調整はできるだけせずに、一定の出力で発電する方が発電効率は良いので、不安定な太陽光発電や風力発電に合わせて出力調整を行うことにより、発電効率は低下します。
繰り返しますが、太陽光発電や風力発電の場合、必要に応じて発電するのではなく、お天気まかせ、風まかせで発電するので、電力消費量と発電量のギャップを調整するシステムは不可欠です。
太陽光発電や風力発電に否定的な立場の人が言うには、このギャップ調整のためのシステムの製造や建設、運用のために消費されるエネルギー、出力調整によるロスまで含めて考えると、太陽光発電や風力発電は、産み出されるエネルギーよりも消費されるエネルギーの方が多く、エネルギーの無駄遣いにしかならない、という結論になるようです。
このギャップ調整のためのエネルギー消費まで含めたEPTの計算は、バッテリーや水力発電や火力発電をどのような形で併用するかによって、さまざまな計算結果が得られると思いますが、ギャップ調整システムを無視した場合よりは、かなり大きな値になるのは、間違いないでしょう。夜間や風の無い時でも電力を供給できるようにしておかなければならない、ということは、太陽光発電や風力発電は別に無くても大丈夫、な状態にしておかなければならない、ということです。
長々と書きましたが、結局、太陽光発電や風力発電は必要な時に必要なだけ電気を作るということができず、お天気まかせ、風まかせなので、発電量と電力消費量のギャップを埋める装置が必要で、それはバッテリーか火力発電所か水力発電所になりますが(水素エネルギーを利用すると言う人もいますが、実用性が全く無いので論外です)、そこまで含めて考えると、果たして太陽光発電や風力発電が本当に発電システムとして有効なのかどうか、消費されるエネルギーの方が生産されるエネルギーよりも多いのではないか、という疑問を抱かざるを得ません。
いずれにせよ、太陽光発電装置も風力発電装置も化石燃料を消費して作られ、バッテリーや水力発電や火力発電のバックアップを必要とし、作られた電気を利用する電化製品も化石燃料を使って生産され、それらの資材や製品は全て、石油を消費して走るトラックで輸送されます。太陽光発電も風力発電も化石燃料大量消費システムの存在を大前提としており、石油を大量に輸入できる時にのみ存在し得る発電システムです。
それほど遠くない将来、今のように大量の石油を輸入することができなくなる時がやってきます。その時のためにすべきことは、化石燃料の消費を前提とする太陽光発電や風力発電を増やすことではなく、化石燃料に依存しない、豊かな社会を作ることです。
現実的な使用条件の下で、発電量と電力消費量の需給ギャップ調整も考慮したEPTについては
の関係箇所を参考にさせていただきました。併せてご一読下さい。

