人間の器

 

性格?能力?考え方?生き方?佇まい?

 

人によって器の定義は様々ですし、統一する

必要性もないと思っております。

 

ただ、一つの目安というものを知っていても

良いかと思い、本書を購入してみました。

 

伊藤忠の社長も経験した著者が81歳の立場から

振り返る「人間の器」とは?

 

では、本書を「分析読書」してみましょう!

 

※「分析読書」とは「本を読む本」が勧めている

理解を深めるための読書の事です。

こちらのブログで推奨している読書テクニックです。

 

 

 

 

~この本の骨格~

 

分類

  • 実践書(器を大きくするための方法)
  • 哲学 倫理

要約

人間の器を以下のように定義します。

 

損得の計算を超えたところで行動できるかどうか

 

この言葉は、イギリスの文学者の名言を

受けております。

 

「人を測る真の尺度は、自分に何の利益ももたらせない人を、その人がどう扱うかということである」

 

そのためにどう生きれば、到達できるか。

 

我々に深く関わってくる仕事、お金、人間関係。

それぞれの観点でいかに「人間力」を高めるか。

 

それら各方面で身に着けた「人間力」が「器」に

つながると言います。

 

意図

 

「器」が大きい人というのは、必ず自己犠牲を

持ち、利他的な面を持っている。それは

多くの人に好影響をもたらす。

 

そのような人が一人でも増えてほしい。

 

また、生まれた以上は自分の「器」は大きく

ありたい、かつそう目指すことは本分である。

 

そして、それは

 

生きる意味は何か?

 

の解につながる。

 

しかし、日々使っている「器」というのは

どうにも抽象的でわかりにくい。

 

本書が人々に「器」というものの理解に

役立てられれば幸い、というスタンスの

一例報告的な一冊。

 

~本書の解釈~

key word

 

間違いなくそれは

「人間の器」であります。

 

そしてその定義とするところは

先ほど挙げた

 

自己犠牲と利他の精神

 

に拠ると言います。

 

その解釈

 

本書は人間の器を広げるための

実践書である。

 

まず人間の器を育むための場。

 

それは

 

  • 仕事
  • 人間関係
  • 金銭

など。

 

それぞれでの自分の振舞い方で

「人間力」が問われる。

 

 

本書の解釈では

ゴール:人間の器の拡大

プロセス:人間力の向上

としている。

 

では、人間力が高いとされる

振舞いはどのようか?

 

多くのエピソードとともに例示される。

 

大まかにまとめると

 

  • 自分を理解する
  • 仕事術の向上

 

  • 自分を理解する

 

特に「器」と直結するのは

 

個性

人は人と違うからこそ、生きる意味があります。

 

ここに著者は生きるという根源的な

理由に対する著者なりの解を

見出している。

 

個性というなら何でもよいわけではない。

 

なにかしらの形で貢献していることが

求められる。それこそが自己犠牲・利他主義の

行動に他ならない。

 

成長

仕事で「悟る」などありえない

その人がどれだけ努力を重ね、進歩しようとも、単に「わかる」という部分が増えていくだけにすぎません。

 

 

そして、知識と経験から得た

生きた知恵をより多く獲得する。

 

それこそが成長であり、「器」を形成する

一端を担うのである。

 

  • 仕事術の向上

 

仕事、それ自体が社会貢献の

一つの姿である。

 

貢献の場で人間力を高めることこそ

「器」の形成の過程に他ならない。

 

しかし、理想は掲げても、四六時中

全力で向き合うことは非現実的。

 

そのため、本書では敢えて次のように

仕事への姿勢を提案する。

 

最善を尽くすために「力を抜く」

仕事は力がある人でないと、本当に力を抜くことはできない

「最善を尽くす」ということと「常に全力を出す」ことは、また違う話

 

~感想・批判~

 

畏れ多くも批判を笑

 

全体的を通しての印象は著者の経験された

エピソードを交えた、具体的な局面で

どうすべきか?というものでした。

 

よく自己啓発本で書かれている内容と

類似しておりますね。

 

 

冒頭で「器」を

自己犠牲と利他精神

と定義していた点はわかりやすい。

 

しかし、例示する個々のエピソードは、

箇条書きスタイル。

これは良いのですが、著者が定義した

「器」と直接的に繋げられない点は

読み手が自分の立ち位置を見失って

しまいがちになる懸念がありました。

 

項を例えますと。

 

ベストは尽くすが反省はしない

問題を解決できない人の盲点

アイデアを生み出すコツ

 

いや、それぞれの内容は決して間違って

いないんですよ。

 

けれども、著者のいう「器」とどう直結するのか?

(拡大解釈できちゃう柔軟性があれば、全く

問題ないのですがね)

 

目次は以下のようです。

 

  1. 「人間力」を高める
  2. 「人間の器」は仕事で変わる
  3. 老年をいかに生きるか
  4. 自分の「善なる部分」を生かす

 

それぞれの項で、損得や自己犠牲に

直接つながるような記載のされ方なら

わかりやすさが増したのではないかと

考えます。

 

人間の器

 

著者の定義を自分の中でも同居させて

みようかと思います。

 

―――

おまけですが。

著者は81歳なので、3章では老年期や死生観

に関する内容が多かったです。

 

テーマに直結する

自己犠牲の逆⇔自己中の罠について

こんな風に解釈しておりました。

 

自分のことばかり考えて自分の益になるようなことを常に追い求めている人は、自分への執着が強いがゆえに、死が一層不安の対象になるかもしれません。

 

なるほどー。

 

―――

そうそう、本書でもやはり読書がフィーチャー

されてましたよ。

 

読書は人間をつくる上で欠かせないものであると確信しています。

読書によって得た知識は、生きる力になります。

 

人の上に立ったことのある人は決まって

言いますね。

 

 

 

読書。

人生にとって十分条件ではないにしろ

必要条件であるように思いました。

 

 

これからも、読書は続きます。

 

 

参考:引用 丹羽宇一郎 人間の器 (株)幻冬舎 2021年3月

 

 

蔦屋の文庫本コーナーで偶然見つけました。

 

まさに

 

読書のトリセツ

 

です。

 

しかも!1997年発売。

そう、僕が9歳の時の本です!

 

歳はどうでもいいか笑

 

スマホもSNSもWifiもない時代の本。

 

ゲームはプレステ初期!

 

そんな時代に出された本のトリセツですが、

令和でも全然通用します!

 

この本は時の流れに耐えられると思っています。

 

何が面白いって、教養書のみならず、

文学書についても言及しているあたりです。

 

なかなか、小説の読み方を教えてくれる本って

出会わなくないです??

 

センター試験前に読んどきゃ良かった・・・

 

構造→解釈→批判

 

の順に読む本を解剖していきます。

 

<こんな人に読んで欲しい>

・読書・・・しているけれど、何だかな。

・国語の点数が低くて、もう辛い。

・読んでもすぐ忘れちゃうし、そもそも何の

本だったかふわっとしている。

・人に本の内容を話してもコンパクトに

まとまらない・・・

 

~大まかな内容~

 

1.読む、とは?

1-1.読書の目的

1-2.「教わる」技術

 

2.4段階の読書術

2-1.初級読書

2-2.点検読書

2-3.分析読書

2-4.シントピカル読書

 

3.文学はどうか?

 

~詳細・心中とともに~

1.読む、とは?

1-1.読書の目的

 

読書を二つに分類

  • 情報を得るための読書
  • 理解を深めるための読書

前者は新聞、雑誌など。情報の量を増やす

だけで理解を深めるには役に立たない。

 

後者が必要な場合、それは

 

読み手と書き手の「理解の深さに差がある」場合

 

教えてもらう本です。

堅苦しく言えば、全て教科書なのです。

 

そこで本書は理解を深めることを目的とする。

 

ここで問題にしているのは、本当に理解を深めるための読書技術である。

娯楽のための読書も考えられるが、ここではそれについてはふれない。

 

理解を深めるとは?

 

述べていることではなく、その意図や理由を理解してはじめて、何かを教えられたことになる。

 

文面だけをインプットするならば、それは

単なる情報収集に過ぎません。

 

では、どうしたら文面の奥を理解できるか?

 

1-2.「教わる」技術

 

「教わること」は本を読む技術、ないし話し手から学ぶ技術

 

なので理解を深める読書をするには

 

「教わる」ための技術を身につける

 

学校では先生が教えてくれる。しかし、

社会人から教養を身に付けるならば

それは本しかない。

 

教わるための技術

そんな言葉聞いたことありませんが、画期的な

視点ですね。「教わる」とは受動性を感じる言葉。

ですがそこに技術という概念が加わると途端に

積極性が生まれますね。

 

いかにして書物を最良の師とするか、それを心得ることが大切なのである。

 

つまり、この本は読書から教わる力を

身につけるための指南書なのです。

 

2.4段階の読書術

 

さて、本章が本書の核となります。

シントピカル読書を目指してみましょう。

 

4段階とは言え、その流れは

 

構造→解釈→批判

 

を守っています。

このモデルが理解を深める読書に

欠かせないのです。

 

2-1.初級読書

 

これは小児~学童レベルです。

本書でも軽くしか触れられていません。

 

身体的な成長とともに、視力や聴力を用い、

単語を理解する。

そして、文を読めるようになり知らない単語の

意味をもつかめるようになる。

 

まさに読み方能力の成長期とされる。

 

2-2.点検読書(構造)

ここからが本番です。

 

点検読書はその本を知るための表面的な

作業とされます。

 

目的:読むだけの値打ちがあるかを確認する。

 

ミルクの表面に浮いたクリームだけをすくい取るように読んでいくのだ。

 

以下、列挙します。

 

  • 表題や序文を見る
  • 目次を読む
  • 装丁を読む
  • 要となりそうな章のパラグラフを読む

 

この作業を本屋で立ち読みしながら

やれるといいですね。

 

2-2'.その他のテクニック

 

  • 難解な本に出合った時

 

私は挫折します・・・

 

本書の勧める方法は

 

とにかく読み通すことだけを心掛ける。すぐには理解できない箇所があっても、考え込んだり語句調べに手間取ったりしていないで先へ進む。

 

時間をかけて検索したり、Wikipediaを参照したり

しなくても良いようです。

 

何故なら

 

どうせわかりはしないのだから

そして

 

何事にも時機というものがある。

 

自分の分をわきまえ、意地にならずに素直に

読むということ。そうやって

 

 

  • 読書スピードを上げる。

 

本書は深い理解を求めつつも、効率性も

同様に追及します。

 

時間をかけて読むほどの価値のない本でも読まねばならないことが良くあるが、そんな時早く読めないと、大変な時間の浪費となる。

 

ひとつのテクニックとして

 

目を固定する癖をなおすには自分の手を使うだけで良い。自分で手をページの上に置いて、それをだんだん早く動かす練習をする。

 

でも、重要なのは場合に応じて読む速度を

変えられる技術と言います。

 

  • 意欲的な読書

 

質問をする。そして読書中に質問に自分自身で

回答するよう努力すること。

 

質問内容は次の4つ

 

  1. 何に関する本か?
  2. 何がどのように詳しく述べられているか?
  3. その本は全体として真実か?部分的にはどこが真実か?
  4. それにはどんな意義があるか?

 

意欲的でない読み手は問いかけをしない―――だから答えも得られない

 

終始、読書に対して

積極性や意欲的姿勢を求めます。

 

2-3.分析読書

 

さぁ、最も重要な項目です。

 

  • 1 本を分類する(構造)

 

ここでの分類とは大まかに

 

理論的な本or実践的な本

 

に分類します。

 

理論:事実を教える

実践:方法を教える

 

理論の本の例

 歴史 科学 哲学・・・

 

実践の本の例

 倫理 政治 経済 医学 法学・・・ 

 

 

何故、ここにきて分類が必要か?

 

科目が違えば教え方も違う。

それぞれの種類にふさわしいやり方で読む技術を学ばねばならない。

 

  • 2 骨格を拾う(構造)

その本全体の統一を、二、三行か、せいぜい数行の文にあらわしてみること

すなわち、著者の意図をコンパクトに拾い上げる

 

重要なのは

 

読者自身のアウトラインを作ること

 

つまり、読書後に要約というアウトプットを

行う作業が必須となります。

 

超面倒ですけどね笑 私も頑張ってみます。

 

救いなのは

 

書物の表向きの構造区分にこだわる必要はない

著者の作った区分や章の見出し―――それに頼り切ってしまわずに、手引きとして

 

  • 著者は何を問題にしているのかを知る(構造)

これは、その本を著者が書いた理由につながる。

 

例えば、櫻井よしこさんの「赤い日本」では

著者の挙げた問題点は何でしょうか?

 

現在、日本(Japan)と呼ばれている、極東の

島国は、古来より大和民族が伝統的に

住み続けていることで、その文化が育まれ、

守られた。それはとても美しく、道徳的で

他国には無い奥ゆかしさを持つ。

これを日本人は誇りにすべきであり、この先も

守るべきである。

しかし、この国の一部である尖閣諸島が

脅かされている。にもかかわらず、政府から

国民一人一人に至るまで、国防という認識が

欠けてしまっているのではないか?

 

ということでしょう。

 

そのような問題に対して著者は本を媒体にして

自分なりの答えや主張、意見を書いてます。

 

本=答え

 

じゃあ、その本は何に対する答えなのか?

 

それを探し出す作業がこの項目となります。

 

繰り返しますが、正しいかどうかは別です。

批判はまだ先です。

 

ここまでが構造の理解となります。

 

次、本の解釈作業に移ります。

 

  • 著者の使う言葉を正しく理解する(解釈)

単語は曖昧であり、使い手の思想によって

意味が変わる。

 

何を言っているのかというと

 

例えば・・・「寝る」という言葉

sleepと使っても良いし、sexとしても良い。

更にlieでも良いですね。

 

一つの単語には様々な意味があるということ。

 

  • 命題と論証を理解する(解釈)

 

命題:~である。~べきである。という判断

論証:その根拠が記載されている文

 

世間的に正しいかどうかは別の話!

 

例えば、その本が

「新型コロナウイルスは怖くない!」

という命題であれば、その根拠となっている

場所を探す。それが論証である。

 

論証は

「何故なら~だから」という形であらわされる。

 

著者が伝達すべきもっとも重要なことは、あることがらについての著者自身の判断の表明と、その理由である

 

そして、最後に著者の挙げた問題点に

対する解決そしている部分を抽出する。

 

ここまでが、解釈です。

 

この先に、やっと意見を言いたがりな

読者の出番がやってきます笑

 

  • 正しく批判する(批判)

当たり前ですが、好き勝手批判しても意味がない。

 

そもそも読者のスタンスで求められるのは

けんか腰でも、イエスマンではない。

 

とりわけ、議論が紛糾するような話題は

まこと冷静にいなければ・・・。

 

例えば、コロナワクチンに関する本や

国際情勢に関する本は絶対に意見が

分かれます。

 

2回ワクチン接種をした僕にとって

「ワクチンは意味がない!」という内海聡先生の

意見は結構衝撃なんです笑

 

けれども、彼の根拠は知りたいし、論理が

通っていれば賛成はしたい。とは言え、

統計的に本当に妥当か?といった疑う姿勢も

崩さない。

 

自分の中にグレーを作ることが重要ではないか?

 

と考えます。

 

優柔不断と言われそうですが、そもそも

二項対立はグラデーションのある世の中を

2つにするといった便宜上の都合でできている

のです。

 

反論や反駁のための読書はやめることだ。うのみにするのもよくない。大切なのは、吟味し塾講することである。

 

人間、反論は性ですが、残念なことに

いたずらに論争するだけでは、何の益もない

読書の目的は?

 

反論教わること!


それでも、反論をするならば

その根拠を示さなければならない。

 

2-4.シントピカル読書

 

ワンピースでいうラフテルですね笑

 

いや、マジで大変な作業です。

 

要は

同一主題について二冊以上の本を読む方法

なのです

 

そうしてシントピカル読書の順序は

  • ①関連個所を見つける
  • ②質問を用意する
  • ③論点を定める
  • ④論考を分析する

 

もう・・嫌になります笑

 

まず、論点を見つけ出す必要があるので

同じテーマに対してスタンスを異にしている本を

どちらも読んでおくことが必要です。

 

例えば

百田尚樹の「百田尚樹の日本国憲法」

櫻井よしこの「赤い日本」

 

だけではダメだということでしょう。

 

類似の本を重ねても、自分の知識に隔たりが

生まれるだけ。

この2冊だけでは論争が生じない笑

 

まだ共産主義を正義としている本が

読めてなくて・・・

 

他の例を出してみると。

 

またもやワクチンですが・・・

 

ワクチン打つべき本

VS

打つべきでない本

 

を読んだとします。

 

①関連個所は、言わずもがな

「ワクチン接種に対するスタンス」

です。

 

②質問はどうか?

 

そう意見するのは何故?

そのスタンスのデメリットは?

相手側スタンスのメリット、デメリットは?

根拠となる資料のエビデンスレベルは?

 

など、これら自分が用意した質問に

両本が答えられているかどうかが重要。

 

そして、完全に相対するところで

意見が分かれた場合。

 

そここそが③論点です。

 

そして

ワクチンを打つと感染者が減る

VS

減らない

 

これが論点とします。

 

双方の主張がどれほど正しいのか。

この対立ではきっとどちらかが間違っている

はずです。

 

それを④分析することが最期の仕事です。

 

ワクチンの例だと、この対立に答えが

出せませんが、このようにシントピカル読書

をすることが本書のゴールとなります。

(スイカは野菜or果物 でも何でも良いのです)

 

※何故、ワクチンの議論は決着しないのか?

誰も正確な統計でワクチンの効用を

示せていないからに尽きます。今後も

決着しないと思います。

 

統計って本当に難しいのです。

 

文学はどうか?

 

教養書を読むよりも断然楽しいですよね。

 

けれども、文学を言語化して評価することって

とても難しい。

 

教養書は科学的で論理的。

しかし、文学は芸術的で感覚的。

 

だからこそ、文学を説明するって本当に

難しいなと思います。感想文は書けますが。

 

ある小説のどこがすきか、と聞かれて黙りこんでしまう人が良くいる。

 

あるある笑

そして痛いところをついてくる・・・

 

おそらく本の文字をなでただけで、その下にあるものを読み取っていないのだ。

 

単に楽しんじゃうケース笑

 

ただ、小説はこれくらい楽な気持ちで

読みたいものですが・・・。

 

しかし、ここは厳しく本書の求める到達点を

目指してみましょう。

 

文学は読者に何を伝えるのか?

 

経験それ自体で、それは読む作業によってのみ読者が得ることのできる経験

 

確かに・・・。

先日読んだ「ノルウェイの森」もその本を

読む以外に経験は手に入れられない。

 

文学を読む目的は何でしょうか?

刹那的な娯楽として、でも良いですが。

 

欲を言うならば、実生活に活かしたいものです。

 

私は、

寛容になる

が目的だと考えます。

 

登場人物は自分と年齢も性別も環境も

かけ離れた設定であります。

 

特にリアルでは得難い経験。

 

殺人、ドラッグ、特殊な性体験・・・。

極端な非道徳性、楽観性、自堕落な性格。

 

村上龍の「限りなく透明に近いブルー」

なんてめちゃくちゃです笑 

 

そうやって、彼らの心情を肯定・批判理解する。

 

そんな人もいるんだなぁと。

 

それだけでも、だいぶ生きやすくなると

感じております。

 

ま、それでも理不尽な人に

キレちゃうことありますけどね!笑

 

本書では文学からの学びを

 

経験を創造

 

と表現します。ちょっとわかりにくいですが。

経験を創造した先に、いかに実生活に

役立てるか?これは読者が見つけること

なのでしょう。

 

そのために、文学を読む姿勢を伝授!

 

ここでも

 

構造→解釈→批判

 

のモデルで紐解いています

  • 構造

ジャンルは?

 小説?抒情詩?戯曲?

 

簡単な要約はできるか?

 

例)

主人公が女性に恋をした。

しかし、彼女に末期がんが見つかった。

彼女の願いは死ぬ前に結婚をすること。

二人は式を挙げた。

数日後、彼女は亡くなった。

 

↑は要約であり、骨格でもある。

  • 解釈

登場人物を知り、彼らとともに事件を体験できるほど親しく

この世界の住人として

完全に入り込む!VR並みに!

 

その上で

 

著者の命題(テーマ)を見つける

見つけたテーマは正解が無数にあると思います。

何でも良くて、

見つけること自体が重要だと思います。

  • 批判

作者が読者に経験させようとしたものを十分に感得できるまでは批判をしてはならない。

作家の想像した世界に疑問を抱かないのが良い読者である。

 

総じて重要なのは

 

一旦はすべてを受け入れて読むこと!

 

作品の好ききらいを言う前に、読者は、まず作品を誠実に味わう努力をすること。

いわば積極的な受け身とでもいうべき姿勢が必要である。

 

著者は文学の批判をかなり高レベルなものと

捉えています。何せ相手は芸術だから。絵画や

音楽と同じ位置づけです。

 

なぜ感動したのか?を、客観的に述べられるか。

どこが良くて、良くないのかを具体的に論じて、さらに

その理由を述べる。

 

いやぁ、きついですわ笑

文学の書評とはここまで求められるようです。

 

~感想・今後へ~

 

いかがでしたか?

 

今でも、読書のための本というジャンルは

ありますね。ただ、ここまで学術的に

書かれた本はあまり見ない・・・。

 

ポップな絵や平易な文字で読者に

媚びる姿勢でなく、正確に表現するために

敢えて難しい単語も使用しております。

 

例えるなら、本の解剖学書のようでした。

 

そしてこの本が求める読書のレベルたるや・・・。

 

読書が嫌いになりそうですね!笑

 

まぁ、いいのです。頑張ってみます。

 

シントピカル読書

 

是非、この頂へ到達したい!

 

自分の読書ブログもまだまだツボを

押さえてない気がしてます・・・。

 

構造→解釈→批判

 

今後はこの順でブログを書いてみようかな。

 

これからも読書は続きます。

 

参考・引用 M.J.アドラー/C.V.ドーレン 本を読む本 (株)講談社 1997年10月

 

「俺にはあいつしかいない。」

「彼は運命の人・・・」

 

誰しも、こんな経験はあるはず。

 

なのに、なんで他の異性と時間を共にするのか?

 

「何を言いますか!私は一途よ!」

 

そんな真っ当な人に焦点を当てた本では

ないのです。

 

寂しさ、孤独を埋めるために、ふと立ち寄った

場所に落とし穴が待っている・・・。

(浮気がバレて、修羅場! ではなくてね笑)

 

 

言わずと知れた、村上春樹の代表作。

 

1987年の本ですが、2021年に初めて読みました。

 

頑張って、この本を深掘ってみます!

(自信ないなー)

 

<こんな人に読んで欲しい>

・それなりに恋愛経験がある

・いわゆる「浮気」をした。けれど、虚しかった。

・浮気は許せん!!!言語道断!!

 

※ある程度、心の動く恋をしないと、そしてさみしがり

でないと登場人物の心境が測れないかもしれません。

なんて笑

~フワッとしたあらすじ~

 

20歳前後の主人公(ワタナべ)は

直子に恋をする。

 

直子には死んだ恋人がいた。

 

ワタナベ直子は一度、関係を

持った。

 

直子は精神を病み、遠くで静養する。

 

そう、深い井戸に落ちたのだ。

 

それでもワタナベの心は彼女に決めていた。

 

愛していた。

 

病んでいても、たまに会いに行くことができた。

 

けれど、空間的に離れていることが

多かった。

 

そこに大学同期のが現われる。

 

彼はと過ごすようになる。

 

そんな中、直子の病状が悪化した。

 

自分にとってとは?

 

そして直子は死を選んだ。

 

うん、とやっていこう・・・。

 

だが、彼の前にも井戸が口を開けていた。

 

~要旨・心中も添えて~

 

孤独を埋めるための偽りの愛

 

パートナー、あるいは好きな人がいる。

けれどあなたは寂しがり屋。

一人でいる時間が耐えられないなんて人、

いるんじゃないでしょうか。

 

そんな時に他の異性が目の前に現われたら・・・

どうしますか?

 

キズキを失った直子は

ワタナベに代わりを見出す。

 

直子に会えないワタナベは

緑に代わりを見出す。

 

偽りの愛を本物に変えようと

もがく。

 

―――

ただ・・・

 

こんなパターンもあるから、ややこしくなる。

 

可能性がまわりに充ちているときに、それをやりすごして通り過ぎるというのは大変に難しい事なんだ。

 

ワタナベの同僚である永沢の言葉です。

 

彼は端正で秀才(or天才)でトーク力の

高い男性。

 

うん、放蕩な人を正当化したようなコメント。

この言い回しは、すごい・・・。

 

いかにして刹那的な出会いを楽しむか、

口説きを芸術だと考えている人間。

 

現代でいう、チャラ男!

 

完全に本能的な行動。人間ヒトの

オスとしての本能が、モラルを越えて発揮される。

 

これを許した永沢の彼女、ハツミ。

 

「私はただ馬鹿で古風なのよ」

 

古風・・・なるほど、昔は妾や2番さんの

存在が今よりも認められていたでしょうか。

 

奔放な男だと思っても、添い遂げる女性、

彼女らの気持ちを代弁する存在ですね。

 

ハツミは愛によって死を選ぶ。

 

それは充たされることのなかった、そしてこれからも永遠に充たされることのないであろう少年期の憧憬のようなものであったのだ。

 

別の人との結婚では彼女の愛は

満たされなかった・・・。

 

恋は不平等

永遠のテーマでしょう。

 

シーソーみたいに二人の高さが

同字である瞬間なんてわずか。

 

必ず、

どちらかが振り回す。

 

そこに駆け引きが無くても。

 

どっちかが、LINEの返信を心待ちに

しているはず。

(倦怠期を例外にして)

 

ただ、お互いがお互いを本命と考えて、

そこに不平等が生じるのは比較的健全の

ように感じます。

 

具合が悪いのは、片方が本気で、もう片方が

相手を2番手以降と考えている時でしょう。

 

 

直子とワタナベ

 

「もしよかったら―――私たちまた会えるかしら?もちろんこんな事言える筋合じゃないことはよくわかっているんだけど」

「筋合?」

 

会いたいけれども、ワタナベ自身に

会いたいわけじゃない。だから「筋合」が無いと。

 

彼女の求めているのは僕の腕ではなく誰かの腕なのだ。―――誰かの温もりなのだ。

 

―――

そしてワタナベと緑

 

「あなたは私の髪型が変わっていたことにすら気づかなかったでしょう?」

 

そんな扱いをするのに・・・

 

「でも君と会えなくなってよくわかったんだ。君がいればこそ今までなんとかやってこれたんだってね。君がいなくなってしまうと、とても辛く淋しい。」

 

と、緑を引き留める。

 

都合の良い相手は離れない時こそ

ぞんざいに扱うのに、

それが無くなろうとすると手のひら変える。

 

失って、目が覚める。そして井戸に落ちる。

 

直子の死から緑とやっていこうと決意した

ワタナベ。

 

緑は埋め合わせだった女。

 

保険を本命に昇格させようと自己暗示を

かける。

 

「僕は直子を愛してきたし、今でもやはり同じように愛しています。しかし僕と緑の間に存在するものは何かしら決定的なものなのです。」

 

しかし・・・。

 

本書の最後の一文はこのようでした。

 

僕は今どこにいるのだ?

 

彼は井戸に落ちたのでしょうか?

 

ワタナベは緑で自分の心を埋められるのか?

 

今度は彼の番でした。

 

 

死んだ直子は、死んだキズキのもとへ。

 

おいキズキ、お前はとうとう直子を手に入れたんだな―――まぁいいさ。彼女はもともとお前のものだったんだ。

 

―――

プロローグの直子の言葉です。

彼女は僕に野井戸の話をしていたのだ。

「それは本当に―――本当に深いのよ」

「でもそれは何処にあるかは誰にもわからないの。」

 

―――

本命とつながりが消えると、浮気相手が

一気に色褪せることがあるでしょう。

 

2番は2番でしか、その魅力を発揮

できないのだと思います。

 

よくある光景です。

 

不倫がバレた瞬間、「もう会えない」

と言われる不倫相手。

 

そして、本命を失って崩壊する人間。

 

それを「井戸に落ちる」と表現しているの

だと考えます。

 

 

~読み終えて~

 

どうですかね、R25が適切ですか?

 

まず

タイトルと内容が見事にマッチしていて

統一感のある作品でした。

 

しかも、直接的にはまったくわからない。

飛び道具です。

桂馬みたいなアクロバティックさ。

 

いやぁ、天才なんだろうなと。

 

ビートルズも詳しくなくて、読んだ後に

聴いてみたんです。

 

男性が女性の家に誘われ、けれども

都合の良い男であると気づいた曲。

家に誘ったくせに、抱かせてもらえない。

「明日、仕事だからもう寝る」と。

自分は何しに来たんだろう?sexという形で

求められていたら、まだ良かった・・・。

 

まさにこの本で起きていることが

歌詞になっていて。

 

「この曲聴くと私ときどきすごく哀しくなることがあるの。どうしてだかはわからないけど、自分が深い森の中で迷っているような気になるの」

 

直子も『ノルウェイの森』の女性のように

ワタナベを都合よく扱い、心の隙間を

埋めていたつもりだったのかと。

 

死んだキズキとのつながりを持った

存在としてワタナベを求めた。

ワタナベ自身を愛する努力もあったのかも

しれません。自分が救われるために。

 

 

―――

読み終えてから、プロローグの意味が

初めてわかり、そして、鳥肌が立つくらいに

哀しい。

 

何故なら直子は僕の事を愛してさえいなかったからだ。

 

スターウォーズを観させられているかのような

文章の構成は芸術的ですね。

 

 

愛という概念を無くしてしまった自分に

人間として生きる価値はない、と直子は

人生に決着をつけたのだと思います。

 

 

人は愛する対象を認識し、その上で対象者が

自分と人生を共にしていることで最高の幸福が

得られるのかもしれません。

 

残酷なことに、それが叶えられないと一生孤独が

付きまとうのでしょう。

 

―――

村上春樹の作品は、リアルすぎる異性間の

やりとり、そして性的描写が一つの特徴でも

あると思っています。

 

世の中が正義としている道徳、貞操観念なんかは

取り上げず、皆が引け目を感じつつも情や

欲に負けてしまうような場面。

 

そもそもね、欲望をモラルで抑えることが

土台無理な事なんでしょう。

 

共感できる人は多いかもしれませんが、

正当化しすぎると、現実を生きるのは

大変です・・・。

 

女性のハルキストって、どんな恋愛観を

抱いているのか興味ありますね。

 

 

いやぁ、人間の矛盾を描いた大作でしたー。

 

 

参考・引用 村上春樹 ノルウェイの森 (株)講談社 2004年9月