人間の器
性格?能力?考え方?生き方?佇まい?
人によって器の定義は様々ですし、統一する
必要性もないと思っております。
ただ、一つの目安というものを知っていても
良いかと思い、本書を購入してみました。
伊藤忠の社長も経験した著者が81歳の立場から
振り返る「人間の器」とは?
では、本書を「分析読書」してみましょう!
※「分析読書」とは「本を読む本」が勧めている
理解を深めるための読書の事です。
こちらのブログで推奨している読書テクニックです。
~この本の骨格~
分類
- 実践書(器を大きくするための方法)
- 哲学 倫理
要約
人間の器を以下のように定義します。
損得の計算を超えたところで行動できるかどうか
この言葉は、イギリスの文学者の名言を
受けております。
「人を測る真の尺度は、自分に何の利益ももたらせない人を、その人がどう扱うかということである」
そのためにどう生きれば、到達できるか。
我々に深く関わってくる仕事、お金、人間関係。
それぞれの観点でいかに「人間力」を高めるか。
それら各方面で身に着けた「人間力」が「器」に
つながると言います。
意図
「器」が大きい人というのは、必ず自己犠牲を
持ち、利他的な面を持っている。それは
多くの人に好影響をもたらす。
そのような人が一人でも増えてほしい。
また、生まれた以上は自分の「器」は大きく
ありたい、かつそう目指すことは本分である。
そして、それは
生きる意味は何か?
の解につながる。
しかし、日々使っている「器」というのは
どうにも抽象的でわかりにくい。
本書が人々に「器」というものの理解に
役立てられれば幸い、というスタンスの
一例報告的な一冊。
~本書の解釈~
key word
間違いなくそれは
「人間の器」であります。
そしてその定義とするところは
先ほど挙げた
自己犠牲と利他の精神
に拠ると言います。
その解釈
本書は人間の器を広げるための
実践書である。
まず人間の器を育むための場。
それは
- 仕事
- 人間関係
- 金銭
など。
それぞれでの自分の振舞い方で
「人間力」が問われる。
本書の解釈では
ゴール:人間の器の拡大
プロセス:人間力の向上
としている。
では、人間力が高いとされる
振舞いはどのようか?
多くのエピソードとともに例示される。
大まかにまとめると
- 自分を理解する
- 仕事術の向上
- 自分を理解する
特に「器」と直結するのは
個性
人は人と違うからこそ、生きる意味があります。
ここに著者は生きるという根源的な
理由に対する著者なりの解を
見出している。
個性というなら何でもよいわけではない。
なにかしらの形で貢献していることが
求められる。それこそが自己犠牲・利他主義の
行動に他ならない。
成長
仕事で「悟る」などありえない
その人がどれだけ努力を重ね、進歩しようとも、単に「わかる」という部分が増えていくだけにすぎません。
そして、知識と経験から得た
生きた知恵をより多く獲得する。
それこそが成長であり、「器」を形成する
一端を担うのである。
- 仕事術の向上
仕事、それ自体が社会貢献の
一つの姿である。
貢献の場で人間力を高めることこそ
「器」の形成の過程に他ならない。
しかし、理想は掲げても、四六時中
全力で向き合うことは非現実的。
そのため、本書では敢えて次のように
仕事への姿勢を提案する。
最善を尽くすために「力を抜く」
仕事は力がある人でないと、本当に力を抜くことはできない
「最善を尽くす」ということと「常に全力を出す」ことは、また違う話
~感想・批判~
畏れ多くも批判を笑
全体的を通しての印象は著者の経験された
エピソードを交えた、具体的な局面で
どうすべきか?というものでした。
よく自己啓発本で書かれている内容と
類似しておりますね。
冒頭で「器」を
自己犠牲と利他精神
と定義していた点はわかりやすい。
しかし、例示する個々のエピソードは、
箇条書きスタイル。
これは良いのですが、著者が定義した
「器」と直接的に繋げられない点は
読み手が自分の立ち位置を見失って
しまいがちになる懸念がありました。
項を例えますと。
ベストは尽くすが反省はしない
問題を解決できない人の盲点
アイデアを生み出すコツ
いや、それぞれの内容は決して間違って
いないんですよ。
けれども、著者のいう「器」とどう直結するのか?
(拡大解釈できちゃう柔軟性があれば、全く
問題ないのですがね)
目次は以下のようです。
- 「人間力」を高める
- 「人間の器」は仕事で変わる
- 老年をいかに生きるか
- 自分の「善なる部分」を生かす
それぞれの項で、損得や自己犠牲に
直接つながるような記載のされ方なら
わかりやすさが増したのではないかと
考えます。
人間の器
著者の定義を自分の中でも同居させて
みようかと思います。
―――
おまけですが。
著者は81歳なので、3章では老年期や死生観
に関する内容が多かったです。
テーマに直結する
自己犠牲の逆⇔自己中の罠について
こんな風に解釈しておりました。
自分のことばかり考えて自分の益になるようなことを常に追い求めている人は、自分への執着が強いがゆえに、死が一層不安の対象になるかもしれません。
なるほどー。
―――
そうそう、本書でもやはり読書がフィーチャー
されてましたよ。
読書は人間をつくる上で欠かせないものであると確信しています。
読書によって得た知識は、生きる力になります。
人の上に立ったことのある人は決まって
言いますね。
読書。
人生にとって十分条件ではないにしろ
必要条件であるように思いました。
これからも、読書は続きます。
参考:引用 丹羽宇一郎 人間の器 (株)幻冬舎 2021年3月