核酸医薬療法 | AHn007のブログ

AHn007のブログ

AHn007のブログ

病因となる蛋白の合成を、遺伝子レベルで制御しようとする療法、核酸医薬療法の一つにアンチセンス療法がある。

遺伝情報を伝達する配列を有するオリゴヌクレオチドは、情報伝達をブロックし、蛋白合成を阻害することが可能である。アンチセンス療法は、ウイルス感染症や癌等の治療として期待されている。

 

その一つとして、無秩序に細胞分裂を繰り返す癌細胞で高発現しているc-myc遺伝子の場合を考える。c-myc遺伝子が合成する蛋白質は、細胞増殖を促進するなどの機能を有している。

 

そもそもMycは器官形成期における細胞増殖等において重要な働きをしている。

ある期間Mycが働き、十分な細胞数に増殖するといったんMycの発現量が低下して次の形態形成のステージに進むというふうに発現量が巧みに調節、制御されている。癌では、Mycが転座等によりこのような制御下からはずれ、抑制も効かず、無関係なエンハンサーなどの活性による不適切な調節のもと、無秩序な増殖を繰り返す状態になっている。

 

このような無秩序な増殖を抑制するため、ヒトc-mycプロトオンコジンmRNAの最初の5個のコドンに相補的に結合するAAC GTT GAG GGG CATの組成のオリゴデオキシリボヌクレオチドというアンチセンスを用いて、c-mycの蛋白質合成を阻害しようといったアンチセンス療法等が考案された。mRNAの一部に相補的なアンチセンスが結合することで、そのmRNAは蛋白質に「翻訳」できなくなってしまうのである。

 

ただこのような療法においては、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは血清中で分解されてしまうなど不安定であること、細胞膜透過性が低い、ライソゾームに偏在してしまうなどといった点が問題点であった。