MRI検査は、大きな磁石の中に身体を入れ、FMラジオ波で使われているような電磁波を当てて、身体の中の状態を画像化する検査です。同じ画像検査のCTのようにX線を当てるわけではないので放射線被ばくもありません。
MRI検査では、小さな領域に分けられた身体の各領域から受信される信号(電磁波)を解析して、各領域からの信号を白黒の濃淡で表し、身体の断面像をつくります。
前回T2信号は各水素原子の歳差運動の位相が揃っている程大きい、ということを、XY平面上で歳差運動する地球儀(水素原子)の地軸がどの地球儀も同じ「位相」で回っている程信号が大きいというふうに考えました。この地軸の回転は、次第に各地球儀の回転の「位相」が不均一になり、また次第にXY平面を回転していた地軸は円錐面にそって回転するようになり最終的にZ軸に一致します。回転する座標系からみると、90°倒れていた地軸(ベクトル)は後者のT1緩和にしたがって、その角度が0°に近づいていくということになります。T1強調画像の場合、0°に戻ってきた水素原子が多ければ多い程高信号ということになりますが、これはT1強調画像では再び90°パルスを加えて、0°に戻ってきた水素原子を再度90°倒すという操作をとるためです。この際T2緩和の影響は少なくなるようパラメーターを設定します。
画像検査によって、お腹の断面で脂肪の面積が大きいと内臓脂肪がたまっていると考えられたりします。頭部のある断面では、脳脊髄液で満たされた領域(脳室)は、自由水で満たされているためT2強調画像では白くみえます(高信号領域)。自由水の水素原子は相互作用しにくく、「位相」が不均一化するのに時間がかかるためです。この領域が相対的に大きい場合一般に脳萎縮が進んでいると考えられます。また、この脳室周囲に高信号領域が認められることがあり、特殊な炎症性疾患等を除けば多くの場合脳室周囲硬化像と考えられます。これは脳の老化現象ともされ、動脈硬化性の変化であり、主に加齢、生活習慣病等が影響します。微細な場合は無症状のことも多いものの、進行すると認知機能や歩行機能などに影響を及ぼすことがあります。
さてこのような場合は、T2強調画像をみただけではどこまでが脳脊髄液の信号で、どこからが脳室周囲の加齢性変化による信号なのかはっきりしなかったりします。こういった場合FLAIR画像が役立ちます。後者の構成成分は、前者の水よりはT2緩和が短いことに着目するのです。
FLAIR画像の原理
脳脊髄液の信号を抑制(黒く表示)し、同じ白色になるためT2強調画像でははっきりしなかった病変等を鮮明に見せる撮像手法となります。慢性的な虚血性変化、ラクナ梗塞(微細な梗塞)等を正常組織と明確に区別できるというメリットがあります。脳ドックなどで「無症候性白質病変(いわゆる隠れ脳梗塞)」はFLAIR画像で白く目立って写ります。
原理としては(ここでは+0-等とよぶかわりに0°90°180°と表す)、まず180°反転パルスを加えます。地軸が反転した状態、地軸ベクトルが180°方向になります。T1緩和により、各領域の水素原子の「地軸ベクトル」は0°方向に戻ろうとしますが、自由水内の水素原子の「地軸ベクトル」は最も緩徐に90°方向に向います。自由水内の水素原子の「地軸ベクトル」が90°に達した時点で、つまりタテ磁性が消失した時点で。励起パルス(90°パルス)を加えます。自由水内の水素原子は励起パルスに反応せず、信号も発せないままですが、90°から0°側に移行過程にある、水よりもT1緩和時間が短い領域の信号は励起パルスにより90°倒れます。この時点よりT2緩和をまって(TE時間)信号を受信すると、自由水領域が抑制され(黒く映り)、自由水に次いでT2緩和時間の長い白質周囲硬化像の信号やラクナ梗塞等の動脈硬化性変化等の信号が強調され、白く映るということになります。これら脳内の動脈硬化性変化等をはじめ、4~6時間以上経過した脳梗塞を見つけるためにも有効な手段とされています。