【9024】西武HD/紀尾井町売却益1.5千億円で莫大な含み益が顕在化する公算、今期は大増額圏。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9024】西武ホールディングス (東証プライム) NT

 

現在値 3,716円/100株  P/E 43.0  P/B 2.57  3月配当優待 9月優待

 

東京都北西部、埼玉地盤の西武鉄道とプリンスホテルが中核。都内に大型物件で不動産拡大。

配当は3月末・9月末の年30円配予想のため、配当利回りは約0.81%となります。

 

西武ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回、3単元を保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、西武グループ各社で使える各種割引券3,000円分(※2千円利用につき1千円利用可)を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚790円で換算した場合の3単元保有時の配当優待利回りは約1.62%となります。なお、1単元保有の場合は優待が年1回に制限されますが、その場合の利回りは表記よりもやや良化します。

 

業績を確認していきます。

■2022年3月期 売上高 3,968億円、営業利益▲132億円、EPS 35.3円

■2023年3月期 売上高 4,248億円、営業利益 221億円、EPS 188.7円

■2024年3月期 売上高 4,775億円、営業利益 477億円、EPS 89.7円

■2025年3月期 売上高 4,890億円、営業利益 400億円、EPS 86.3円 ce

□2024年6月1Q 売上高 1,254億円、営業利益 199億円、EPS 51.5円(8/2) 

□2024年9月2Q 売上高 2,470億円、営業利益 260億円、EPS 56.4円 ce

 

2024年3月期の売上高はYoY+11.5%の4,775億円、営業利益はYoY*2.2倍の477億円となり、2Qの増額見通しを更に上振れて着地しました。都市交通事業は、鉄道定期が同+9.6%に留まったものの、訪日客やレジャー客が回復した定期外が同+13.2%と一段増となり、バリアフリー運賃増額も寄与しました。単価追求策を採ったプリンス等ホテルも、OCCこそ同+14.5pts.の67.3%ながら、RevPARも同+54.2%の13,548円に急伸しました。不動産事業についても、造園請負工事やBM会社が堅調に推移しました。

 

2025年3月期の予算については、売上高がYoY+2.4%の4,890億円、営業利益はYoY▲16.2%の400億円を予想しています。都市交通事業は鉄道定期・定期外ともに同+1.0%~+1.6%と横ばい想定ながら、プリンス等ホテルは訪日客増やレベニューマネジメントの推進でRevPARは同+8.2%の14,655円を見込みます。不動産事業については、会社公表ベースでは微増圏も、紀尾井町GTの売却益計上を織り込んでいないため(*後述)、想定超に膨れ上がる可能性があります。なお8月2日に公表済の1Qは売上高1,254億円&営業益199億円で進捗しており、大幅な上振れが確実な情勢です。

 

この度当社は新長計&新中計を公表しており、2036年3月期までに営業益1,000億円を目指す一方、手前の2027年3月期までの新中計では営業益410億円を計画しており、実績営業益477億円に対してマイナス成長を見込みます。向こう3年は都市交通事業の安全対策工事や維持のため、CAPEXに相応の設備投資を実施(4.5千億円)していかざるを得ないことが要因ですが、不動産事業における売却益をほぼ織り込んでおらず、上振れ前提の中計となります。

 

この都市交通事業を含めた総投資額は1兆8千億円を想定しており、このほか都心再開発に6千億円、ホテルCAPEXと海外M&Aに3千億円、新規事業等に2.4千億円を投じます。今後は不動産事業を“本業”に据えるものの、都心大規模再開発案件である高輪・品川・芝公園等は都市計画への着手が精々となり、着工は次期中計期間となることから、当面はリゾート開発(富良野・軽井沢・箱根・日光)を先行して手掛ける方針です。

 

また含み益の顕在化と資産の入替を進めるため、紀尾井町GTのほか本社のある池袋ダイヤゲートなども含め全てのアセットを売却対象に据えています。紀尾井町GTは簿価1.5千億円に対して鑑定3千億円であり、一次入札の結果を鑑みれば2倍の値段で売れる見通しであるほか、既に棚卸資産に変更しているため1.5千億円超もの営業益が計画外でオンされる公算です。また、売却一辺倒ではなく、ファンド/REITも含めた関与アセットの拡大も志向しており、中期AUM1千億円・長期AUM6千億円を目指す方針です。


財務面については、足許の有利子負債はおよそ7.5千億円まで減少しており、傘下鉄道事業会社がみずほと政投銀に発行した優先株を全て償還(財務悪化要因)したものの、自己資本比率は26.1%にまで回復しています。今後の再開発案件で高位の資金需要がある一方、上述の紀尾井町GTの莫大な含み益の顕在化で更なる改善が見込まれるほか、今次中計期間においては財務レバレッジを活用する方針としているため、現状レベルの財務水準が維持される見通しです。

 

また株主還元についても、今次中計期間においては「DOE2.0%&累進配当」をポリシーとしており、現時点での配当予想である年30円(配当性向34.7%)は、紀尾井町GT売却による純資産の大幅な上振れを前提に増配含みと解されます。

*参考記事① 2024-02-23   2,162円 OP

【9024】西武HD/意欲的な中計は下方修正も、ホテル回復想定超で計数値奪回も射程圏に。

 

*参考記事② 2023-02-18 1,399円 OP

【9024】西武ホールディングス/優先株800億円を全て償還へ、財務体質の改善が進む。

 

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