【8098】稲畑産業/前中計は達成、還元余資は減少傾向にあるが総還元性向は実質7割に上る。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

image

【8098】稲畑産業(東証プライム)  OP

現在値 3,315円/100株 P/E 10.7  P/B 0.87  3月配当  9月配当・株主優待

化学品専門商社。住友化学系だが稲畑オーナー色も。アジア広域展開。
配当金は3月・9月の計125円配当のため、配当利回りは3.77%となります。

稲畑産業は株主優待制度を実施しており、9月末に100株以上を6ヵ月以上保有する株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.07%となります。

業績を確認していきます。    

■2022年3月期 売上高 6,809億円、営業利益 200億円、EPS 374円

■2023年3月期 売上高 7,356億円、営業利益 203億円、EPS 343円 

■2024年3月期 売上高 7,660億円、営業利益 211億円、EPS 362円

■2025年3月期 売上高 8,300億円、営業利益 225億円、EPS 307円 ce
□2024年6月1Q 売上高 2,135億円、営業利益 68.2億円、EPS 116円(8/8)

□2024年9月2Q 売上高 4,100億円、営業利益 108億円、EPS 148円 ce


2024年3月期の売上高はYoY+4.1%の7,660億円、営業利益はYoY+4.3%の211億円となり、ほぼ予算水準となりました。合成樹脂事業は、中国の日系自動車メーカー向けの高機能樹脂が低調だったほか、汎用樹脂も減少したものの、情報電子事業のフラットパネルディスプレイ(FDP)は大型TV軟調も、車載や有機EL関連が好調で大幅増益を確保しました。化学品事業は丸石科学、生活産業事業は大五通商の新規連結効果で増収となったものの、生活産業事業については米国の水産加工品競合激化で減益となっています。

 

進行期である2025年3月期の予算については、売上高はYoY+8.4%の8,300億円、営業利益はYoY+6.2%の225億円を予想しています。合成樹脂事業は国内・東南アジアの自動車生産の底入れが見込まれるほか、生活産業事業は水産品が回復する一方、情報電子事業は太陽電池関連に代表される好採算品が縮小します。なお、前提為替レートは145円/$、8月8日開示済の1Qは売上高2,135億円&営業益68.2億円と計画超で推移しています。


終わった期はローリング3年中計の最終年度であり、売上目標こそFPD市況の悪化で未達となったものの、為替の追い風影響もあり、利益目標の(増額後)営業利益205億円を確保しました。今次公表の新中計については、最終年度の2027年3月期までに売上高を7,660億円→9,500億円に、営業利益を211億円→270億円に其々引き上げるほか、他指標はROE10%超&ネットD/E0.5倍&自己資本比率50%程と従来並みの目標としています。

 

今次中計での主要な取組は①連結売上高1兆円(≒長計目標水準)、➁複合機能の高度化、③事業ポートフォリオ深堀、④海外比率7割、の4本を掲げています。①はM&A等による投資積極化により、再エネ・リサイクルといった環境関連、NEV向けや電池、半導体・電子部品関連の3分野を中心に重点投資します。➁の複合機能は、製造・物流強化を志向し、合弁会社活用によりコンパウンド機能拡充と合成樹脂分野を強化します。

 

③は、主要2セグメントのうち情報電子事業については、太陽電池関連・二次電池関連・バイオマス発電関連を強化し、環境・エネルギー分野での売上1,000億円を目指します。合成樹脂事業については、海外販売網拡充、次世代投資、日系以外取引拡充等により、自動車向け樹脂売上2,000億円を目指して事業深耕します。④は現行55%程度の海外比率を拡大すべく、インド・メキシコといった成長国に重点を置くこととしています。


株主還元は既に総還元性向を50%まで引き上げているほか、今次中計でも累進配当方針を掲げています。配当は年5円の増配となる年125円(配当性向40.6%)を予想しているほか、7月までに50億円の自社株買いを買い切っており、進行期の総還元性向は70%に上ります。なお当社は株主還元原資として、豊富な保有有価証券の売却を進めてきた経緯がありますが(直近7年で440億円程)、残り保有株は株価低迷中の住友ファーマ(4506)等となっています。

 

*参考記事① 2024-03-19 3,170円 OP

【8098】稲畑産業/住友化学の売出しによる需給悪化と、住友ファーマの評価額減少で“板挟み感“。


*参考記事② 2023-01-27 2,479円 OP

【8098】稲畑産業/FDP市場の急失速で実態弱含みとみられるが、高水準の株主還元がサポート。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

にほんブログ村 株ブログ 株主優待へ にほんブログ村 株ブログ IPO・新規公開株へ にほんブログ村 株ブログ サラリーマン投資家へ