【8165】千趣会/基幹システム刷新によるデジタル移行が裏目、紙カタログの顧客離れ痛い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8165】千趣会(東証プライム) OP

現在値 401円/100株  P/E ‐‐.‐  P/B 1.05  6月配当優待 12月配当

「ベルメゾン」展開するカタログ、ネット主体の通販大手。頒布会、店舗に特徴。
配当基準日は6月・12月の年2回ですが、直近無配に転落しています。

千趣会は株主優待制度を導入しており、6月・12月末に100株以上を保有する株主に対して各回1千円分の商品券進呈していますので、(配当)優待利回りは約4.98%となります。なお長期保有により1年あたり500円ずつ商品券が加算されるため、3年以上の保有で約11.2%の利回りが確保できます。

業績を確認していきます。2022年度より新収益基準に移行しています。
■2020年12月期 売上高 832億円、営業利益▲3.8億円 EPS▲95.2円
■2021年12月期 売上高 731億円、営業利益 3.4億円 EPS 6.6円 
■2022年12月期 売上高 589億円、営業利益▲81.0億円 EPS▲233.7円 新収益
■2023年12月期 売上高 480億円、営業利益▲62.0億円 EPS▲119.6 ce修正
□2023年6月2Q 売上高 266億円、営業利益▲31.5億円 EPS▲69.7円

□2023年9月3Q 売上高 358億円、営業利益▲49.5億円 EPS▲99.6円(11/14)

2023年6月中間期の売上高はYoY▲6.2%の266億円、営業利益は同+7.5億円の▲31.5億円となり、予算比は無いものの減収増益となりました。主力の通販事業は基幹システム更新によるトラブル影響が消えたものの、従来型の紙カタログからデジタルへの顧客移行が想定以下だったほか、経済正常化による消費者の行動変容により、購入会員数も同▲9.2万人の119.5万人に減少しました。他方、利益面については、高コストの紙カタログが減少したことを要因に、赤字幅が若干縮小しています。


なお2023年12月期の通期予想については3Qで再減額しており、売上高がYoY▲18.5%の480億円(期予:662億円)、営業利益は同+19億円の▲62.0億円(期予:5.0億円)に修正しています。通販事業はシステム刷新の巡行稼働化と一過性のトラブル解消費用が剥落したものの、デジタル化の弊害で紙カタログ顧客離れが深刻となったほか、その“呼び戻し”コスト負担が発生しました。また、低調な売上に起因した在庫削減のためのバーゲン実施を強いられたこともあり、11月14日に開示済の3Qは売上高358億円&営業益▲49.5億円で推移しています。

当社は2025年12月期を最終年度とする5年中計(約4.5年間)を策定しており、最終年度までに売上高を832億円→900億円、営業利益を▲3.8億円→40億円まで引き上げる計画としていましたが、先般の業績予想修正時に数値目標を取り下げています。今次中計での定性的な取組事項としては、①顧客深堀、②使用価値最大化の訴求、③新領域開拓、④経営基盤再構築の4点を挙げています。①は顧客とM2Mで対話する仕組の導入のほか、モニター会員(20万人)の活用、モバイル移行、実店舗マーケティング等により顧客接点の拡大を図ります。

②は“消費から使用”への潮流変化に対応すべく、ライフスタイル訴求型MDへの切替や、動画等の活用によるデジタル販促を充実させる方針でした。然しながら、昨年の基幹システム刷新を契機に高コストな紙カタログ配布を大幅に抑制したものの、完全に裏目に出る形で客離れが発生し、いくばくかの効率化が進んだ一方、多額の売上を失う格好となりました。

 

③の新領域については、会員組織のデジタル移行によるサイト広告枠の外販強化にくわえ、昨年11月にはオークネットと協業した“Kimawari”という不用品買取サービス開始しています。また、筆頭株主であるJR東日本(持分10.9%)との協業により、駅ナカ実店舗展開といった表層的取組みだけでなく、同社ECである“JRE MALL”の裏側のBPO的な業務や、同社関連会社であるルミネのEC物流支援により、追加的な収益獲得を目指しています。

 

財務状況については、ネット無借金に近い状況にあり、自己資本比率は58.6%と依然として高水準を維持しています。但し、昨今の業績悪化で累損が▲87億円超に膨らんでいることから、仮に来期以降業績が急改善したとしても、減資でもしない限り復配は難しい状況です。


*参考記事①  2023-05-08  411円 NT
【8165】千趣会/システム刷新トラブルでモタつく、JR東日本との協業拡大に期待したい。


*参考記事② 2017-04-07  788円 NT

カタログ通販からネット通販への脱却なるか、千趣会(8165)。

 

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