【8012】長瀬産業(東証プライム) OP
現在値 2,521円/100株 P/E 12.2 P/B 0.78 3月配当株主優待 9月配当
染料・合成樹脂等の化学品専門商社首位。傘下にバイオの林原。
配当金は3月末・9月末の計80円配当のため、配当利回りは3.17%となります。
長瀬産業は株主優待制度を実施しており、3月末時点(半年保有)で100株以上を保有する株主に対して、1,500円分のご当地グルメ等を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.76%となります。なお、3年以上の長期保有により進呈額が3,000円分となりますので、その場合は約4.36%となります。
業績を確認していきます。2022年3月期より企業会計基準第29号(新収益)を適用しています。
■2021年3月期 売上高 8,302億円、営業利益 219億円、EPS 151円
■2022年3月期 売上高 7,805億円、営業利益 352億円、EPS 213円
■2023年3月期 売上高 9,128億円、営業利益 333億円、EPS 199円
■2024年3月期 売上高 (非公表)億円、営業利益 345億円、EPS 209円 ce
□2023年6月1Q 売上高 2,240億円、営業利益 69億円、EPS 37円 (8/3)
□2023年9月2Q 売上高 4,300億円、営業利益 155億円、EPS 96円 四e
2023年3月期の売上高はYoY+17.0%の9,128億円、営業利益はYoY▲5.4%の333億円となり、増収ながらも利益は予算比未達でした。機能素材セグは、市況好況の半導体原料が伸長したほか、自動車生産回復で塗料・ウレタン等が増販して2桁増となりました。モビリティセグも同様にEV向け樹脂・部品が堅調だったほか、生活関連セグのPrinovaのニュートリションも特に好調に推移しました。他方、加工材料セグは上海のロックダウンで導電材料、情報印刷関連が減少したほか、電子エネセグもディスプレイ・モバイル向けが低調に推移し、中国影響を色濃く受けた両セグが全社業績の足を引っ張りました。
進行期である2024年3月期の予算については、営業利益はYoY+3.4%の345億円を予想しています。機能素材セグ、モビリティセグは自動車生産の回復基調の継続で続伸するほか、ロックダウン明けの加工材料セグ、電子エネセグも回復が見込まれます。生活関連セグのPrinovaについても、スポーツニュートリションのユタ工場本格稼働や、苦戦していた林原も新商材増販で大幅増を見込みます。但し、8月3日に開示済の1Qは、売上高2,240億円&営業益69.5億円と低調な推移が確認され、早くも未達懸念が燻ります。
進行期は2026年3月期を最終年度とする新中計「Ace2.0」の3年度目であり、向こう5年で1,000~1,500億円の投資枠を設定し、営業利益219億円→350億円(ROEは8.0%)を目指していたものの、前倒しで達成圏に到達しています(40~50億円分が為替/市況の“追い風”を含むため、計数ロールは非実施)。取組内容は①DX強化、②サスティナ推進、③コーポレート強化の3軸であり、体制再構築の色合いが強いものの、注力成長領域として生活関連セグのバイオ・食品分野を定めています。
化学品商社の当社は非SDGsの化石原料由来の素材・商材が多いため、事業取捨による抜本的な業容転換を進めています。そのため②については、機能材料をバイオ由来原料へ、加工材料をバイオマス原料へ代替推進する一方、合成樹脂のセツナン化成と塗料製造の大泰化工を外部売却しています。また、商社からメーカーへの事業軸転換のため、化学品のナガセケムテックスのほか、バイオの林原と米Prinova社の食品2社を買収して、製造分野では事業ウイングを拡大しています。
2019年のPrinova買収には約680億円を投じただけでなく、同社自身も甘味料会社のThe Ingredient House、拠点強化のためLakeshore technologiesを相次いで買収しています。また、2022年にはユタ新工場を開設するなど巨額投資を実行し、当初計画では営業益100億円超の貢献が見込まれていました。但し、新工場のフル貢献は2025年以降となるほか、その手前で米国金利上昇による金利負担増(営業外)影響を大きく受けており、目論見水準から下押しされているような状況です。
他方、株主還元に関しては、10円増配となる年80円(配当性向38.2%)を見込んでおり、14期連続の増配を予定しています。これまで純資産配当率(DOE)1.5%+基準で配当額を決定していまたものの、今次中計では継続的配当に300億円を配分するほか、別途300億円を上限に処分する政策株式削減を原資とした自社株買いをする方針としており、5月に公表した自社株買い80億円を合算すると、進行期の総還元性向は71.3%と計算されます。
*参考記事① 2023-02-17 2,040円 OP
【8012】長瀬産業/米Prinovaは好調維持だが、原料高や為替の不利影響が重し。
*参考記事② 2022-08-22 2,029円 OP
【8012】長瀬産業/買収した米Prinovaが想定超の成長、13期連続増配予定だが上乗せも。
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