株式市場における“優待族”と呼ばれる人たちは、その農耕的な投資手法や優待株自体の異様な値持ちの良さもあって、退場する人がほぼ居ないのが特徴です。観測範囲においては10年来生存率は非常に高いように思います。
他方、昔から雑誌に露出しているような投資家さんでも、いわゆる“億り人”は限られ、せいぜい資産数千万円どまりのケースが多いと感じます。グロース銘柄やレバレッジでリスクを取って増やしにいってるキャリア数年の投資家さんが、今年は信じられない程“億り人”になっているのとは対照的な構図です。
そして、優待族の思わぬ苦戦には要因がいくつかあると考えています。以下のような例です。
①クロス取引由来の短期利得志向が根強い
クロス取引は1ヵ月(最近はフライング在庫確保で2ヶ月とか)の短期スパンで損得を考えるため、このマインドが現物取引にも影響し、少し値上がりすると直ぐに利益確定してしまいます。
普段は3,000円のギフトカタログや、1,000円のクオカード銘柄の売り在庫を血眼になって探しているような世界線で生きているので、現物保有分の僅か数万円の含み益にも耐えられず、「いまはこの数万円を利益確定させて、1年後の権利日に近くにまた買えばいいや・・・」という短期志向になりがちです。
➁クロス取引自体はマーケットニュートラル
売りと買いを同時に行うので、日経平均が33,000円になろうが、50,000円になろうが値上がり恩恵は無いので、目下の活況相場でも資産は増えません。それどころか資金量見合いで確保出来る銘柄数が減ってしまうので、株価水準が上がることを歓迎していない優待族は意外と多く存在します。
③“配当優待利回り”に縛られる
優待株でも買値の数倍になるような出世株は星の数ほどありますが、その途中で下りてしまうケースもよくみられます。これは“配当優待利回り”という指標が幅を利かせていて、株価が上がって利回り4%(3%、5%)を切ったりすると機械的に売って、より利回りの高い銘柄に乗り換えるムーブが一因と考えています。
株価が上がるということは、会社が順調に成長している証左ですが、グロース選好勢などとは違って、会社の業績をよく調べてるわけでもなく、値上がりした株価に自信が持てません。そのため、目先の利益確定欲求(≒値下がり恐怖回避欲求)に簡単に負けてしまいます。これが利を伸ばせない原因です。
------------------------------
そんなわけで、儲かりにくい優待族の理由を3点ほど考察してみました。余計なお世話かもしれませんが、周りが騒ぐほど自分は儲かってない・・・と感じる優待族の方は、かような観点でご自身の投資を振り返ってみてもいいのかなと思います。