【9324】安田倉庫/買収防衛策更新で硬直化、保有するヒューリック株の評価以上は難しい。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9324】安田倉庫(東証PRM)  OP


現在値 1,039円/100株 P/E 14.0  P/B 0.37  3月配当優待  9月配当

旧財閥系の倉庫準大手。外資系の取扱多い。関西の中央倉庫と提携。
配当は3月末・9月末の年間27円配で、配当利回りは2.59%となります。

安田倉庫は株主優待を導入しており、3月末の単元以上株主に対して、お米券を2枚進呈しておりますので、配当優待利回りは約%となります。

業績を確認していきます。

■2021年3月期 売上高 477億円、営業利益 32.8億円 EPS 96.4円 
■2022年3月期 売上高 530億円、営業利益 29.1億円 EPS 99.2円  

■2023年3月期 売上高 579億円、営業利益 25.3億円 EPS 77.5円

■2024年3月期 売上高 680億円、営業利益 26.0億円 EPS 74.2円 ce 

□2023年6月1Q 売上高 163億円、営業利益 5.2億円 EPS 16.0円(8/4) 

□2023年9月2Q 売上高 330億円、営業利益 11.0億円 EPS 34.5円 ce 

2023年3月期の売上高はYoY+12.7%の597億円、営業利益はYoY▲12.9%の25.3億円となり、若干の予算未達となりました。主力の物流事業は、新規・既存顧客ともに荷動きが活発化したほか、海上/航空運賃高騰で保管料・陸運料など各種科目で軒並み増収となった一方、燃料費・光熱費の増加が収益を圧迫しました。また不動産事業についても、稼働率・賃料単価ともに概ね底堅く推移したものの、大規模修繕工事の剥落が響き、減収減益となりました。

 

進行期である2024年3月期の予算については、売上高はYoY+13.8%の680億円、営業利益はYoY+2.6%の26.0億円と増収増益を予想しています。主力の物流事業については、国際物流正常化で海上/航空運賃が反落するものの、荷動きの回復や顧客の在庫積み増し傾向等により続伸が見込まれるほか、買収子会社(※後述)が寄与します。不動産事業についても、当社が保有する東京/横浜沿岸部寄りのオフィス稼働率・賃料単価に底入れの兆候がみられることから、横ばいが見込まれます。8月4日に開示済の1Qは、売上高163億円&営業益5.2億円で推移しています。

 

当社は2025年3月期を最終年度とする3年中計で、売上高を530億円→650億円、営業利益を29億円→40億円に引き上げる計画するとともに、360億円の新規投資枠(物流:280億円、不動産・DXに各40億円)を設定しています。特に高付加価値・好採算の医療向け施設の開発に注力しており、本年8月に昭和島に医療倉庫を新設したほか、2024年3月には加須に大型の医療物流施設(延床12,600坪)の竣工を予定しています。

 

この医療強化の流れもあり、本年3月にはエーザイの物流子会社(年商47億円)を50億円程で買収しています。同社は収益均衡圏で利益貢献が殆どないばかりか、40億円程ののれん発生を伴うものの、札幌・厚木・岡山に物流拠点を構え医薬品物流で全国をカバーしていることから、先行投資的な側面の強い買収と解されます。このほか、2020年に金沢の大西運輸(年商37億円/営業利益1.5億円)とオオニシ機工(年商6億円/営業利益僅少)を買収したほか、2021年末にも南信貨物(年商44億円/営業利益1.6億円)を買収しており、M&Aによる業容拡大を積極化しています。

 

上記以外の取組として、海岸通りの自社ビルからmsbTamachiへの本社機能を移転しており、引き払った海岸通り(海岸三丁目)の本社屋の再開発がアップサイドとして期待されます。ただこの本社再開発は現状未定となっており、今次中計期間には貢献しない可能性が高いことから、相次ぐ買収による上乗せ効果あれど、計数の達成可視性は今次中計においても低い状況と解されます。


他方、当社資産の状況については、賃貸用不動産だけで300億円の含み益を保有しているほか、約3,000万株弱を保有するヒューリック株(時価は294億円)を含めた保有有価証券は450億円程にのぼります。仮に不動産の含み益を顕在化させた場合、実効税率3割ベースで実質PBR(P/NAV)は0.3倍前半と試算されるため、ディープバリューではあるものの、今次株主総会で買収防衛策がまた更新されたため、“絵に描いた餅”の状況が続いています。


*参考記事① 2022-09-02  937円 OP

【9324】安田倉庫/海運市況の高騰裏に荷動き今一つ、今次中計も可視性が低い状況。

 

*参考記事② 2021-07-27  952円 OP

【9324】安田倉庫/海岸本社移転で再開発期待、カタリスト不足も実質PBRは0.3倍前半。

 

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