【9324】安田倉庫/海運市況の高騰裏に荷動き今一つ、今次中計も可視性が低い状況。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9324】安田倉庫(東証PRM)  OP


現在値 937円/100株 P/E 11.8  P/B 0.37  3月配当優待  9月配当

旧財閥系の倉庫準大手。外資系の取扱多い。関西の中央倉庫と提携。
配当は3月末・9月末の年間25円配で、配当利回りは2.67%となります。

安田倉庫は株主優待を導入しており、3月末の単元以上株主に対して、お米券を2枚進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.60%となります。

業績を確認していきます。

■2020年3月期 売上高 466億円、営業利益 34.7億円 EPS 101.4円 

■2021年3月期 売上高 477億円、営業利益 32.8億円 EPS 96.4円 
■2022年3月期 売上高 530億円、営業利益 29.1億円 EPS 99.2円  

■2023年3月期 売上高 580億円、営業利益 27.5億円 EPS 79.4円 ce 

□2022年6月1Q 売上高 143億円、営業利益 4.9億円 EPS 17.7円(8/5) 

□2022年9月2Q 売上高 287億円、営業利益 11.5億円 EPS 36.2円 ce 

2022年3月期の売上高はYoY+11.2%の530億円、営業利益はYoY▲11.5%の29.1億円とほぼ予算並みの着地となりました。主力の物流事業に関しては、東雲営業所・辰巳倉庫・大黒流通センターが通期上乗せとなり、国内はEC向け国内輸送が堅調だった一方、輸出貨物に関してはコンテナ不足や海上運賃高騰による荷動き鈍化継続により微増~横ばい圏となりました。不動産事業については、稼働率・賃料単価が横ばいで推移したほか、テナント施工工事増により微増となりました。他方で利益面については、拠点新設や設備投資増加による減価償却費増加によるマイナス寄与が多く、計画通りの減益となりました。

 

進行期である2023年3月期の予算については、売上高はYoY+9.3%の580億円、営業利益はYoY▲5.5%の27.5億円と続落を見込んでいます。主力の物流事業については、更なる荷動きの回復が見込まれるほか、海上運賃高騰による単価効果の発現と航空輸送増により増収が見込まれる一方、陸運費や油価上昇等の原価上昇が重しとなり、減益想定となります。また不動産事業についても、東京・横浜のオフィス空室率が高止まり傾向にあるため、横ばい~やや弱含みの想定となります。

 

終わった期は従前3年中計の最終年度であり、売上高を461億円→550億円、営業利益を35.5億円→40.0億円にそれぞれ引き上げる計画でしたが、新型肺炎禍による荷動きの鈍化影響と投資先行、海岸通りの自社ビルからmsbTamachiへの(事実上の)本社機能移転による費用等が発生し、結果的にマイナス成長となりました。なお、2020年に金沢の大西運輸(年商37億円/営業利益1.5億円)とオオニシ機工(年商6億円/営業利益僅少)を、2021年末にも南信貨物(年商44億円/営業利益1.6億円)を相次いで買収しています。

 

進行期を初年度とする新中計については、2025年3月期までの向こう3ヵ年で売上高を530億円→650億円に、営業利益を29億円→40億円に其々引き上げることとしています。併せて360億円の新規投資枠を設定し、物流に280億円、不動産・DXに各40億円を投じる計画です。2023年8月には昭和島に医療倉庫を新設するほか、2024年3月には加須に大型の医療物流施設(延床12,600坪)が新設予定となっており、付加価値の高い医療向けへの注力により採算性向上を図る計画です。

 

上記以外としては、引き払った海岸通り(海岸三丁目)の本社屋の再開発が目されるほか、EC物流サービスの拡充やRPA活用による定型作業の自動化、AIを用いた検品作業などに取り組むこととしています。以上の取組を考慮した中計の蓋然性については、買収や市況高騰による物流事業のトップラインの増加こそあれど、外注や燃料費等の原価高騰影響も相応に大きいことから流動的な情勢であり、計数の達成可視性は今次中計においても低い状況と解されます。


他方、当社資産の状況については、賃貸用不動産だけで283億円の含み益を保有しているほか、約3,000万株弱を保有するヒューリック株(時価は310億円)を含めた保有有価証券は450億円程にのぼります。仮に不動産の含み益を顕在化させた場合、実効税率3割ベースで実質PBR(P/NAV)は0.3倍前半と試算されるため、ディープバリューな状況が継続しています。


*参考記事① 2021-07-27 952円 OP

【9324】安田倉庫/海岸本社移転で再開発期待、カタリスト不足も実質PBRは0.3倍前半。


*参考記事② 2018-09-04 923円 OP

超割安圏だが、帝国繊維に動きなくカタリスト乏しい・安田倉庫(9324)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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