【3548】バロックジャパンリミテッド/中国事業の戻りの鈍さ目立つ、生産拠点の分散化が課題。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3548】バロックジャパンリミテッド(東証プライム) OP

現在値 903円/100株  P/E 11.8  P/B 1.72 2月配当株主優待 8月株主優待

若い女性向けの衣料、服飾雑貨SPA。多品種小ロット、中国・日本が二本柱。
配当は2月一括の年38円配当のため、配当利回りは約4.21%となります。

バロックジャパンリミテッドは株主優待制度を実施しており、2月末・8月末の単元株主に対して2,000円分の買い物券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約8.63%となります。

業績を確認していきます。

■2021年2月期 売上高 505億円、経常利益 11.8億円 EPS 10.4円 

■2022年2月期 売上高 591億円、経常利益 28.4億円 EPS 40.8円 

■2023年2月期 売上高 588億円、経常利益 12.1億円 EPS 6.7円

■2024年2月期 売上高 660億円、経常利益 45.8億円 EPS 76.3円 ce

□2023年5月1Q 売上高 145億円、経常利益 11.0億円 EPS 19.0円(7/18) 

□2023年8月2Q 売上高 280億円、経常利益 8.0億円 EPS 12.5円 四e

2023年2月期の売上高はYoY▲0.5%の588億円、経常利益はYoY▲57.5%の12.1億円となり、期初予想を下回り減収減益となりました。国内事業は、予算前提の売上110%に対して102.7%となり、
ブランド別では百貨店向けの「EMFOLD」や「STACCATO」が好調に推移したほか、人流回復によりFB/SB向けが回復しました。他方、SC向けの「MOUSSY」の戻りの弱さが目立ちました。他方、海外事業についてはロックダウン影響が深刻だった中国JV売上高が70.9%の52.5億円となり、想定を大きく下回りました。利益面についても、この中国の押し下げと急激な原価高騰と円安進行で大幅減益となりました。

 

進行期である2024年2月期の予算については、売上高はYoY+12.2%の660億円、経常利益はYoY*3.7倍の45.8億円を予想しています。国内事業については、出退店は横ばい想定ながらも、既存店は百貨店向けの好調持続を見込むほか、海外事業もロックダウン明けの中国の戻りが期待されます。利益面については、原価高騰の一服と生産体制の見直し、売上増による採算性改善を織り込みます。なお、7月18日に開示済の1Qの売上高は145億円、経常利益は11.0億円で進捗しており、中国事業が依然低調で大きく前年割れしているものの、利益は計画線で推移しています。


当社は従前中計でこの2024年2月期に売上高1,000億円(CAGR10%)、経常利益は87億円(CAGR17%)を目標としていたものの、2021年10月に“つなぎ中計”に修正しています。内容としてはトップライン伸長を二の次とし、アパレル企業から付加価値型企業への転換を図る方針であり、目標KPIとして営業利益率7.5~8.0%、在庫回転率5.5~6.0回転、海外年20店増店&30ヵ国展開、ROE13~15%をガイドしているものの、進行期予算に照らせばこれも未達の公算です。

 

国内事業は採算性重視で成長ブランドへの“選択と集中”を進めるとともに、SNS系カリスマ店員による発信力強化に取り組みます。8割に上るインスタ発信社員を活かしたOMO戦略(実店舗への送客)だけでなく、ZOZOTOWNに代表される“サードパーティーEC”との連携による外部取込も強化します。海外事業はラグジュアリー市場が世界的に急回復していることから、米国を成長市場として位置づけ、Saks Fifth AvenueやNordstromといった高級百貨店への卸販売強化(特にハイエンド向けの日本製デニム)により、米国富裕層の取込拡大を図ります。

 

ロックダウン明けの中国事業については、現地イコールパートナーの靴小売大手の百麗国際と拡大を進めてきたものの、足許の店舗数は漸減傾向となっています。そのため、日本同様にEC強化を進めており、TikTok、小紅書(RED)を活用した新たな販売チャネルの拡大を進めるほか、ハイエンド商品の投入とともに実店舗のS&Bも推進します。なお、内外問わず中国本土に依存している現状の生産体制が不安定かつ高コストになっていることから、東南アジアへの生産拠点分散も進める方針です。


株主還元については、従来の配当フォーミュラである配当性向の30~40%を取りやめ、進行期までの中計3年間は38円の安定配当方針としています。足許時点の自己資本比率は依然として50%と安全域を確保しているほか、大株主であるファンドの資金回収ニーズもあるため、中計期間終了後も表記配当額が維持される公算が高そうです。


*参考記事①  2022-07-29  824円 OP

【3548】バロックジャパンリミテッド/中国やや厳しいが、米国市場が想定以上の伸長。

 

*参考記事②  2022-01-18 895円 NT

【3548】バロックジャパンリミテッド/業績目標無し中計にロールするも、配当下限38円をガイド。 

 

 

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