【3201】日本毛織 /エネルギーコスト上昇や為替予約切れで、中計は一転して未達となる公算。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3201】日本毛織 (東証プライム) OP

現在値 982円/100株  P/E 9.51  P/B 0.64  5月配当 11月配当優待

羊毛紡織の有力会社だが、利益柱は商業施設賃貸。介護・売電も展開。
配当は5月末・11月末の年2回・合計30円配当のため、配当利回りは3.05%となります。

ニッケは株主優待制度を導入しており、5月末に単元株を1年以上保有する株主に対し、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.07%となります。

業績を確認していきます。FY2022より新収益基準に移行しています。

■2020年11月期 売上高 1,049億円、営業利益 90億円、EPS 98.5円

■2021年11月期 売上高 1,066億円、営業利益 99億円、EPS 115.0円 

■2022年11月期 売上高 1,090億円、営業利益 107億円、EPS 100.5円

■2023年11月期 売上高 1,210億円、営業利益 110億円、EPS 103.2円ce
□2023年1月1Q 売上高 252億円、営業利益 19.0億円、EPS 20.5円(4/13)   

□2023年2月2Q 売上高 560億円、営業利益 53.0億円、EPS 50.9円 四e  

 

2022年11月期の売上高はYoY+2.3%の1,090億円、営業利益はYoY+8.1%の107億円となり、売上予算未達ながらも増収増益を確保しました。衣料繊維事業は、予算削減の消防向けや企業制服が低調ながらも、学校制服や海外向けの一般衣料向け素材好調で増収となったほか、産業機材事業も買収したフジコーの車両向け不織布・縫製糸の好調や半導体関連の好調持続もあり、大幅な増収増益確保となりました。他方、不動産関連事業は建設・保育好調も介護低調で部門では横ばい、生活流通事業は巣ごもり剥落でECが低調に推移しました。

 

進行期である2023年11月期の予想については、売上高がYoY+11.0%の1,210億円、営業利益はYoY+2.7%の110億円を見込んでいます。衣料繊維事業は企業制服が回復するものの、学生制服が羊毛仕入コストが円安影響を受けるため利益は横這い、産業機材事業もエネルギーコストが増加するものの、車載電装品のFA設備の拡大により増益を見込みます。また、巣ごもり剥落で低調だった生活流通事業も、買収したサンコーの新規連結効果で大幅増となります。4月13日既開示の1Q決算は、各種コスト増が重しになっているとみられ、売上高255億円&営業利益19.0億円と低調に推移しています。


進行期は3年中計の最終年度であり、当初計画ではこの2023年11月期に売上高1,270億円(CAGR6%)、営業利益を115億円(CAGR8%)を定量目標としてきましたが、開示された予算に照らせば未達となる公算です。今次中計での領域別の基本戦略としては、①衣料繊維事業:中国の学生服市場拡販と高性能機能性商材の開発、②不動産関連事業:市川・加古川の周辺事業(介護・保育・キッズ・スポーツスクール等)拡大、③産業資材事業:海外拡大とフジコー(3515)との提携強化、④生活流通事業:EC拡大、が掲げられています。

 

今次中計期間では、3ヵ年分の純利益と減価償却費の合計300億円とデット200億円の合計500億円を設備投資とMAにつぎ込む方針です。①の衣料繊維では、新素材“Breeza”設備への投資や、合理化のための大型設備更新に25億円を投じるほか、③の産業資材では2020年にフジコー(3515/年商71億円)を買収し、既存子会社で同事業を手掛けるアンビック(年商72億円)と提携し、合理化を推進します。④は2022年末に秋葉原を地盤に個人向けオリジナル家電を開発・販売するサンコー(年商37億円)を買収して、EC商材を拡充しています。

 

これまでの当社中計は保守的な計画組みをすることが多かったものの、前提としていた為替レートが円高だったほか、ドル円を108円でヘッジしていた為替予約が殆ど切れてしまっているため、前提与件が想定以上に悪化しています。また、電気代に代表されるエネルギーコストの高騰が各セグメントで重しとなっており、事業環境変化の方があまりに急すぎて、数字が追い付けなくなっているような状況です。

 

他方、株主還元に関しては配当性向30%(ROE8%、DOE2%)を基準としており、進行期は据置の年30円配当を予想しています。ただ当社は実質無借金であるとともに、220億円を超える膨大な投資有価証券を保有している盤石財務のため、もう一歩踏み込んだ還元拡充が望まれます。

 

*参考記事① 2022-10-29  995円 OP

【3201】日本毛織/目下堅調も、108円の為替予約消失とエネルギー高騰で不透明感強い。

 

*参考記事② 2022-04-09 882円 OP

【3201】日本毛織/中計1年度目は大幅過達で推移、株主還元の拡充が待たれる。

 

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