【7944】ローランド/MBOから6年振りの再上場、音楽デジタル化で中長期で成長期待。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7944】ローランド(東証プライム) OP


現在値 4,200円/100株 P/E 11.7  P/B 3.56  6月配当 12月配当 株主優待なし

電子ドラム、ピアノなど電子楽器専業。欧米で高シェア。14年非上場化も20年再上場。


配当金は年2回・合計156円配当のため、配当利回りは3.71%となります。

ローランドは株主優待制度を実施しておりません。

業績を確認していきます。

■2019年12月期 売上高 632億円、営業利益 52.6億円 EPS 97.9円 

■2020年12月期 売上高 640億円、営業利益 71.1億円 EPS 160円 

■2021年12月期 売上高 800億円、営業利益 110億円 EPS 312円

■2022年12月期 売上高 924億円、営業利益 124億円 EPS 357円ce修正
□2022年6月2Q 売上高 430億円、営業利益 46.7億円 EPS 143円

□2022年9月3Q 売上高 646億円、営業利益 62.8億円 EPS 185円(11/9)
 

2022年6月中間期の売上高はYoY横ばいの430億円、営業利益はYoY▲40.3%の46.7億円となり、計画をやや上回りました。新型肺炎禍で生産影響が出ていた電子楽器全体の期初在庫は252億円と徐々に回復が進んでおり、中国のロックダウン影響があったものの、国内・北米市場が堅調に推移し、売上・利益ともに順調に推移しました(利益の大幅減は一過性要因による反動)。製品別では、電子ピアノ等の鍵盤楽器、エフェクター&アンプ等のギター関連が好調に推移した一方、ビデオ類の映像音響機器が低調に推移しました。


なお2022年12月期の通期見通しは中間時点で上方修正しており、売上高はYoY+15.5%の924億円(期予:850億円)、営業利益はYoY+11.7%の124億円(期予:116億円)に増額しています。中国・ロシアが低調ながらも、価格転嫁が進む日・北米といった需要が堅調なエリアでのカバーが見込まれるほか、為替前提見直し(期初113円/$→2Hは126円/$、期初127円/€→2Hは135円/€)を実態見合いで概ね有利方向に修正しています。なお、11月9日に公表済の3Q決算では、売上高646億円&営業益62.8億円と大きくビハインドしています。

 

当社は経営再建のため、2014年に三木純一社長(当時)を中心とする経営陣とTaiyo JupiterHDのMBOで一旦上場廃止となり、2020年12月に再上場した経緯があります。上場直前に公表された中計では、2022年12年期までの約3ヵ年で売上高CAGR5%&営業利益率10%が目標感が示されたものの、新型肺炎禍の“巣ごもり特需”や為替変動で既に2度増額ロールしています。最新の3ヵ年中計の目標計数は、売上高を640億円→815億円に、営業利益を71億円→123億円に其々引き上げる計画であり、仮に8月公表の最新の見通し通りに着地すれば達成という状況です。

 

今次中計は①高付加価値・新製品開発、②顧客マネジメント強化、③SCM強化、の3軸を主要な取組事項としています。“Game Changer”商品と称する新機軸製品の開発に注力しており、ミュージシャンの輩出ルートが従来型のレコード会社や音楽プロを経由するものから、独学による自主制作ルートでTikTokやYoutube、Instagram等を経由したものに大変容していることから、音楽業界のDX化は電子楽器をドメインとする当社にとって飛躍的な業容拡大の好機となっています。

 

特に「ZEN-Core」と称するBMCチップの音源データの活用により、異なる楽器間の音源を同じチップに集約することで音源を標準化し、「Synthesis System」で簡易的に編集出来るようにしたほか、成果物をサブスクサービスの「Roland Cloud」で共有・運用することにより、デジタル音楽時代における既存顧客や潜在顧客とのリレーション強化を推進する方針です。

 

なお当社は2016年にヘッドフォンの米V-MODAを買収したほか、2019年にはDAW再参入のために「ZENbeats」を有する米Open Labsを買収するなど、業容拡大のためにMAを実施しています。本年10月には約90億円を投じて米Drum Workshopを買収しており、同社はアコースティックドラムで世界3位のシェアを有していることから、当社ドラム・パーカッション等打楽器事業との融合や電子楽器化の推進により、大きなシナジーが期待されます(のれん償却で利益寄与僅少)。

 

財務状況については、自己資本比率は46%と高い水準を維持しており、上述のDrum Workshopの買収費用90億円は手金及び借入で手当てする方針としています。他方、株主還元については、総還元性向50%を還元ポリシーとしており、年156円配当(配当性向43.9%)にくわえて20億円程の自社株買いを実施しているため、進行期の総還元性向は65%程となります。

 

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