【2695】くら寿司/売上健闘だが原材料高騰影響で下方修正、海外展開に改めて期待。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2695】くら寿司(東証プライム) OP

現在値 3,160円/100株  P/E 141.9  P/B 2.48  10月配当 4月株主優待

関西・関東軸にロードサイド中心の回転寿司「くら寿司」を直営展開。2位級。
配当金は10月末の年1回・20円配のため、配当利回りは約0.63%となります。

 

くら寿司は株主優待制度を導入しており、4月に単元株以上を保有する株主に対し、アプリ利用を前提に5,000円分のクーポン(※1,000円につき500円利用可)を進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.21%となります。

業績を確認していきます。 

■2019年10月期 売上高 1,361億円、営業利益 54.7億円 EPS 95.4円 

■2020年10月期 売上高 1,358億円、営業利益 3.5億円 EPS▲6.7円 

■2021年10月期 売上高 1,475億円、営業利益▲26.7億円 EPS 48.0円

■2022年10月期 売上高 1,824億円、営業利益▲9.0億円 EPS 22.2円ce修正

□2022年4月2Q 売上高 893億円、営業利益 3.2億円 EPS 55.4円 

□2022年7月3Q 売上高 1,347億円、営業利益▲3.8億円 EPS 43.1円(9/6)

 

2022年4月中間期の売上高はYoY+19.7%の893億円、営業利益はYoY▲24.3%の3.2億円となり、2割増収ながらも減益となりました。年初の“まん防”期間に営業時間を短縮したものの、「鬼滅の刃」「BT21」など有力IPとのコラボ企画による押し上げもあり、上期国内SSSは106.4%を確保しました。また北米・アジアも営業規制の撤廃や、サンリオ等コラボにより好調に推移しました。他方、利益面は魚介類を中心とした原材料価格の高騰で営業利益段階は横ばい、助成金41億円が計上される経常利益段階では大幅増となりました。


2023年4月期の見通しは3Q時点で修正しており、売上高がYoY+23.6%の1,824億円(期予:1,888億円)、営業利益はYoY▲37億円の▲9.0億円(期予:28.2億円)に大幅減額しています。最需要期である7月・8月のSSSが想定以下に留まったほか、足許9月も連休に相次いで台風影響を受けるなどしたこともありトップラインから減額しています。また、利益面についても、食品価格や水光熱費の高騰、北米を中心とした人件費の上昇など原価が膨らんでいることから、期初の黒転予想から一転して赤字が継続します。

 

当社は2021年6月に改定版中計を公表しており、向こう10年程先となる2030年10月期を目途に売上高を1,361億円(*FY19実績)→3,600億円、内外店舗数を485店(*同)→1,100店まで其々引き上げる計画としています。2年程前の当初計画より売上高、店舗数ともに上方修正されており、計画の変更理由は主に国内出店ペースの加速化によります。また、足許の3ヵ年までの中期目標として、再来期2024年10月期に売上高2,200億円&海外売上高比率20%、経常利益率5%(110億円)を示しています。

 

取組事項は①年25店+の出店、②SSS100%+の継続、③海外積極展開の3軸が挙げられています。中計の改定理由ともなった①については、新型肺炎禍で都心に空き物件が増加したことから、従来のロードサイド出店から一転して、渋谷や新宿、道頓堀といったピン立地への出店を推進しています。②は特許保有により他社模倣が出来ない“鮮度くん”と称する抗菌カバーだけでなく、自用スマホを活用した“スマートくら寿司”の断続的な機能拡充により、利便性と安全性を追求します。

 

そして今後大きな成長ドライバーとなり得るのが、③の海外展開です。NASDAQ上場の米国子会社が36店を展開しているほか、台北市場上場の台湾子会社が45店を展開しており、海外で77店を展開するスシロー(FOOD&LIFE Co.)を先行しています。然しながら、イギリスの「Yo!Sushi」が70店程を有するほか、中国・香港を中心に既に180店程を展開する元気寿司や、台湾・中国・SGで200店程を展開する最大手の「Sushi Express」には遠く及ばないような状況です。また、当社特有の問題として、親子上場による持分利益喪失というデメリットもあるため、在外上場子会社ならではの出店のスピード感が期待通りに出力されるかどうかが中長期的な投資論点となりそうです。

 

財務面については、ネット現金170億円超&自己資本比率48.3%と大変潤沢な水準を維持しています。そのため、下方修正後の配当性向は90%程と試算されるものの、年20円の配当予想をそのまま据え置いており、実際に維持される公算が高そうです。本来的には還元に回すのではなく、米国や台湾子会社を非上場化して少数株主利益まで取り込む方が中長期的に有意なため、この辺の資本政策については課題が残るものと考えています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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