【3612】ワールド/好調な百貨店向け中心に正価販売進む、買収したナルミヤも通期寄与。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3612】ワールド(東証プライム) OP

現在値 1,359円/100株 P/E 8.3  P/B 0.57 3月配当優待 9月配当優待

総合アパレル大手。SCから百貨店まで展開。構造改革進め18年再上場。MA積極化。
配当金は年2回・計48円のため、配当利回りは約3.53%となります。

ワールドは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末時点で半年以上保有を継続する単元株主に対して、1,500円分の商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.63%となります(なお3単元保有時は優待が5,000円分となるため、利回りが表記よりも上昇します)。


業績を確認していきます。IFRS基準となります。

■2020年3月期 売上高 2,362億円、営業利益 123億円 EPS 241円 

■2021年3月期 売上高 1,803億円、営業利益▲216億円 EPS▲511円

■2022年3月期 売上高 1,713億円、営業利益 21.9億円 EPS▲7.7円  

■2023年3月期 売上高 2,120億円、営業利益 109.0億円 EPS 147.2円 ce

□2022年6月1Q 売上高 505億円、営業利益 49.9億円 EPS 79.7円(8/3) 
□2022年9月2Q 売上高 988億円、営業利益 29.0億円 EPS 35.4円 ce


2022年3月期の売上高はYoY▲5.0%の1,713億円、営業利益はYoY+238億円の21.9億円となり、1月の修正見通し並みで着地しました。主力のブランド事業は、百貨店向けMU業態(UNTITLED、INDIVI等)、SC向けML(SHOO・LA・RUE、THE SHOP TK等)ともに前提SSSを平時の70%台後半でセットしてやや届かなかったものの、百貨店向けの高採算品の好調や正価販売シフトにより収益性が一段と回復しました。他方、EC及びサイト構築・運用のデジタル事業も外部売上が倍増したものの投資先行で赤字拡大、生産・サプライチェーン・販売代行のプラットフォーム(PF)事業も、改装・開業案件中止と外販シフトで大幅減となりました。

 

進行期である2023年3月期の予算は、売上高がYoY+23.7%の2,120億円、営業利益はYoY5倍の109億円を見込んでいます。予算上のSSSは小康状態にあった昨年3Qの水準感を前提に110%(平時比80%)でセットしているほか、不採算店の撤退継続で出退店は純増▲60店を見込む一方、EC売上高については一時的な撤退ブランド増加からの反発でYoY+47.8%と意欲的な水準で組んでいます。他方、デジタル事業は先行投資の負担軽減で黒字転換、PF事業はアパレル他社への外販が進み増収転換します。また、買収したナルミヤが通期寄与し、売上高324億円・営業利益15億円程がオンされます。

 

当社は翌2024年3月期までを構造改革期間とし、進行期を“収益性復活”、翌期を“再成長復帰”に位置付けています(計数目標なし)。既に2019年・2020年の相次ぐ大規模リストラにより「3can4on」「aquagirl」「OZOC」など10ブランド超の撤退と他社移管を実施し、400名を超える規模の人員削減を実施し、年間100億円弱の損益改善を実現しているため、ベースの部分はかなり“筋肉質”となっていることから、今後は正価販売増加による収益性の確保が論点となるものの、円安等による原材料高についても国内製造拠点網を有する当社グループは一定の競争力があるものと解されます。

 

アパレルブランドの減少により、売上構成比の5割を占める雑貨・EC・PF外販を成長ドライバーに位置づけています。他社比で遅れているEC売上の成長が課題となっており、オリジナルブランドの投入や外部EC拡大、モール化やOMOといった打ち手に取り組みます。デジタル事業はEC・店舗の在庫管理システムがユナイテッドアローズ社で採用されることとなり、今後はスポーツやアイウェア業種への拡販を進める計画です。

 

他方、本年2月には持分法適用会社のナルミヤ・インターナショナル(9275)に追加で33億円を投じて、日本産業パートナーズらから26.6%持分をTOBで追加的に買い付け、子会社化しています。ナルミヤは元来当社が得意とするような百貨店向けのブランドが中心であるものの、昨今はSC向けの「プティマイン」「ラブトキシック」といったブランドが好調に推移しており、減少が続いていたブランドポートフォリオの拡充観点では一定の意義がありそうです。

 

財務については、2018年の再上場時に公募と自社株売却で約400億円(@2,900円)を調達してDBJ向け優先株を償還するなどしたものの、新型肺炎禍後に調達した150億円の永久劣後ローンも全額資本認定されていることから、自己資本比率はナルミヤ買収後でも31%水準をキープしています。そのため、ある程度の配当余力が確認される状況にあり、フォーミュラの配当性向30%基準に従って21円の増配となる年48円配が支払われるものとみています。


*参考記事① 2022-02-24 1,225円 OP

【3612】ワールド/TOBで子供服のナルミヤ(9275)を子会社化、最終益均衡圏も復配が濃厚。

 

*参考記事② 2021-09-07 1,417円 OP 

【3612】ワールド/相次ぐリストラと永久劣後ローンで“筋肉質化”も、収益改善道のり険しい。

 

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