【1518】三井松島ホールディングス/豪リデル炭鉱の終掘接近も一般炭価格は高騰・空前の大増配へ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【1518】三井松島ホールディングス(東証プライム) NT

現在値   3,760円/100株 P/E 3.26  P/B 1.29  3月配当株主優待 

柱は豪州生産、輸入販売など石炭産業。豪以外の権益も拡大。 
配当金は3末・9末の合計年230円配当のため、配当利回りは約6.12%となります。

三井松島産業は株主優待制度を実施しており、3月末に単元株を保有する株主に対して、6,000円分の自社運営宿泊施設の宿泊割引券と5,000円分のオーダースーツ等お仕立券を進呈しておりますので、宿泊券のみ計算した場合の配当優待利回は約7.71%となります。

業績を確認していきます。企業会計基準29号(新収益認識基準)を適用しています。

■2020年3月期 売上高 665億円、営業利益 27.4億円 EPS 172.4円 

■2021年3月期 売上高 573億円、営業利益 19.4億円 EPS▲233.4円

■2022年3月期 売上高 465億円、営業利益 84.1億円 EPS 414.8円 

■2023年3月期 売上高 700億円、営業利益 232.0億円 EPS 1,153.7円 ce修正
□2022年6月1Q 売上高 141億円、営業利益 34.9億円 EPS 177.1円(8/5)

□2022年9月2Q 売上高 350億円、営業利益 90.0億円 EPS 461.2円 四e

2022年3月期の売上高はYoY▲18.8%の465億円、営業利益はYoY4.3倍の84.1億円となり、対予算・対計画で大幅増益となりました(※減収は新収益基準影響)。主力の石炭販売において、販売数量自体は増加(380万t→317万t)に減少したほか、利益の大半を稼ぐ石炭生産も横ばい(130万t→136万t)だったものの、世界的な資源価格急伸で一般炭単価が高騰(71.8$→116.7$/t)とし、単価効果で収益が急拡大しました。他方、非石炭の生活関連事業には、半導体関連の水晶デバイス装置を手掛ける三生電子が急伸したほか、他事業も軒並み堅調に推移し、これら7セグ合計利益も15.7億円→29.5億円に膨らんでいます。


進行期である2023年3月期の見通しについては、1Q時点で早くも上方修正に踏み切っており、売上高がYoY+50.2%の700億円(期予:570億円)、営業利益はYoY2.7倍の232億円(期予:143億円)に大幅に増額しています。予算前提の諸元見直しが主要因であり、石炭分野の一般炭販売価格をMtoMで引き上げる(200$→315.1$/t)一方、販売数量は引き下げ(80万t→127万t)ます。他方、生活関連事業については、半導体関連が活況だった三生電子の反落、各セグにおいて原材料価格高騰を織り込む一方、5月に買収した日本カタンの上乗せにより、トータルでは増収増益予想となります。

 

進行期は5年中計の4年度目となっており、最終年度である翌2024年3月期を目途に営業利益を15億円→55億円に引き上げる計画としていました。然しながら、空前の石炭価格急騰もあり、終わった期の営業利益で84.1億円を叩き出すなど、計数目標を1年前倒しで、かつ大幅に超過達成しているような状況です。

 

全社収益を大きくドライブさせている石炭分野ですが、8.5億tの推定埋蔵量を有する豪州リデル炭鉱において、現鉱区が2024年3月期までに終掘となるため、JVのグレンコア(同社持分67.5%)とともに隣接鉱区開発を推進しています。現鉱区の2/3程度の採掘量に留まるものの、実現すれば当社持分で約130万tを約20年間採掘可能となることから、年内の豪州政府許認可取得と来年の商用生産を目指していますが、先住民保護等ハードルが高く、依然不透明な情勢となっています。


中長期的には石炭事業は脱炭素の世界的潮流の中で需要減少が予想されることから、会社側は今後の隣接鉱区の成就の如何によらず撤退も視野に入れて、非石炭分野である生活関連事業に代替的に注力してM&Aを連発しています。本年5月には高圧送電線の架線金具の製造・販売を手掛ける日本カタン(年商約38億円・営業益約6億円)に20億円を投じて50%強の持分を取得しています。安定収益性を重視した企業買収が多い一方、事業間シナジーが薄く、純資産が少ない会社をバラバラ買っている傾向は根強い印象であり、EBITDAを年45億円まで積み上げる一方、のれんは年7億円償却してなお100億円強がB/Sに横たわっています。

 

株主還元については、当初年80円→160円へ配当倍増(うち半分は記念配)を見込んでいましたが、石炭価格急騰による今次業績予想修正で、年230円配当へ150円増配することとなりました。会社側としては今後のM&Aに備えて財務温存する意図もあるとみられますが、自己資本比率は既に5割水準まで達しているほか、予想EPSは1,000円を軽く超える状況のため、石炭価格が高止まりしている現状を鑑みれば、更なる追加的な増配が視野に入るものと考えています。

 

*参考記事① 2021-09-13 1,366円 NT

【1518】三井松島HD/“脱炭素”潮流は大逆風も、事業ポートフォリオ多角化は急速に進む。

 

*参考記事② 2020-09-05  763円 OP

【1518】三井松島産業/石炭価格下落が痛いが、相次ぐ買収攻勢で損益均衡圏は確保か。

 

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