【9612】ラックランド/食品スーパー等の顧客需要回復基調だが、予算過大で未達懸念が燻る。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9612】ラックランド(東証1部) UP

現在値  2,988円/100株  P/E 42.4  P/B 3.02  12月・6月配当優待 3月・9月優待

食品、飲食業向け主力の店舗企画、設計、施工会社。メンテナンスに強み。
配当は6月末・12月末の合計25円配当のため、配当利回りは約0.84%となります。

ラックランドは株主優待制度を導入しており、6月末・12月末時点で単元株以上を保有する株主に対して、3,500円分の東北地方特産品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.17%となります。なお、3月末・12月末現在の単元株主に対して、ギフトクーポン(割引)券も発行しておりますので、そちらもフルに利用した場合の利回りは約4.85%となります。

業績を確認をしていきます。 

■2018年12月期 売上高 428億円 経常利益 4.0億円 EPS 11.4円 

■2019年12月期 売上高 403億円 経常利益 10.4億円 EPS 111.7円 

■2020年12月期 売上高 371億円 経常利益▲3.8億円 EPS▲53.6円 

■2021年12月期 売上高 358億円 経常利益▲1.5億円 EPS▲12.4円 

■2022年12月期 売上高 420億円 経常利益 12.5億円 EPS 70.3円 ce

□2022年3月1Q 売上高 77.3億円 経常利益▲0.2億円 EPS▲8.5円(4/28) 

□2022年6月2Q 売上高 199億円 経常利益 0.9億円 EPS 1.1円 ce

2021年12月期の売上高はYoY▲3.4%の358億円、経常利益はYoY+2.7億円の▲1.5億円となり、減収かつ対予算でも大幅な未達となりました。主力の店舗内装・商業施設事業については、期ズレとなった伊勢丹府中店跡地の“ミッテン府中”をはじめとする大型案件の寄与があったものの、主要顧客であるスーパー・飲食業が設備投資を抑制したことや、半導体不足に代表される資機材の欠品や納期遅延、新型肺炎禍特有の工事の着工遅れや一時中断等が大きく影響しました。他方、EC需要が根強い食品工場事業や、ストック性の高い保守メンテナンス事業については契約店舗数がYoY+4,800件の22,000件超となり、安定的に推移しました。


進行期である2022年12月期の予想については、売上高がYoY+17.0%の420億円、経常利益はYoY+14億円の12.5億円と黒字転換を見込んでいます。受注残高はYoY+32.9%の119億円を抱えており、期ズレが含まれているものの高水準を確保しています。また、投資抑制してきた食品スーパーが依然底堅く推移していることから、反動的な受注増が見込まれるほか、経済活動再開期待により商業施設事業も引き合いが回復していることから、堅調な推移が見込まれます。但し、4月28日に開示済の1Qについては、大型の府中案件剥落影響とはみられるものの減収減益で進捗しており、元より通期予算も数字が強いため、未達の可能性が燻り始めた印象です。


当社は目下10年長計(中計として第Ⅰ期・第Ⅱ期・第Ⅲ期に期分け)を走らせており、2025年12月期に売上高500億円、経常利益30億円を最終目標としています。終わった2021年12月期については、中計第Ⅱ期の最終年度として、売上高450億円&経常利益15億円を目指していましたが、得意顧客の外食がこの新型肺炎禍でダメージを受けたこともあり、大幅な未達となりました。それどころか、前中計の第Ⅰ期との比較では減収減益(しかも赤字転落)となり、この3年間で大幅なマイナス成長となってしまいました。

 

この進行期を始期とする中計第Ⅲ期は、長計も最終年度となるため、向こう3年間で売上高を358億円→500億円へと引き上げる計画ですが、利益目標は特段示されなくなりました。代わりに初年度において粗利率2%(ppt)向上、受注率10%(ppt)向上、メンテナンス部員の日次稼働率4倍増・・・など漠とした数字目標が代わりに掲げられることとなりました。注力取組事項としてAIを活用したホタテのパッキング自動化に代表される「DX強化」が挙げられていますが、小粒案件が多く、利益率の改善には直結しない印象です。

 

そのため、基本的な成長戦略としては、数々のMAにより傘下に収めてきた空調や電気の設備工事業者を活用した内装工事類のフルライン(内装、空調、電気、消防設備等)受注と、設備設計にも参画することで、以後の設備メンテナンスの受注獲得を狙います。また、労働力不足に備えて職人の内製化を推進しており、買収子会社の職人のノウハウを吸収するとともに、比較的人件費の安い外国人労働者やシニア人材・プラチナ人材(~85歳)に再度技能を伝承し、専門性を有する“企業内職人”を再生産する仕組みを整えています。

 

現状、業界全体が圧倒的な職人不足に陥っていることから、上記のような当社の“企業内職人”化は有効かつ採用費用の低減や離職率抑制に有効ではあるものの、いかんせん事業環境の悪化でトップラインが伸びないため、第Ⅲ期中計と10年長計に掲げる計数目標の達成は厳しいものと解されます。伸びシロとしては、インドネシアやベトナムの海外研修生を職人として受け入れているため、今後の日系デべのアジア進出が進む局面においては、現地で職人を確保する当社が優位性を発揮する局面が来る可能性があるかもしれません。

 

財務については、2019年に初のPOで約34億円の調達を済ませていたことから、自己資本比率は35.5%と比較的高い水準を維持出来ており、相次ぐMAにより痛んだ財務については一旦手当てがなされているような状況です。なお、配当金については年25円配(配当性向34.7%)の横ばいを見込んでいます。

 

*参考記事① 2021-11-19  3,000円 NT

【9612】ラックランド/中計・長計ともに達成可視性が大きく後退、回復には要時間。

 

*参考記事② 2021-05-20 2,495円 NT

【9612】ラックランド/期ズレ案件寄与で滑り出し好調だが、会社計画には過大感も。

 

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