【5301】東海カーボン/電炉鋼製鉄の回復、完成車数量増で当面は回復基調が続こう。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5301】東海カーボン(東証プライム) BY

現在値 1,072円/100株  P/E 11.4  P/B 1.00 12月配当・6月配当 株主優待あり

炭素製品大手。カーボンブラック国内首位。電炉用電極、半導体・太陽光向け素材も。
配当金は年2回・合計30円配当のため、配当利回りは2.80%となります。

東海カーボンは株主優待制度を導入しており、100株を1年以上継続保有する12月末の株主に対して、2,000円分相当のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.66%となります。また3年超の長期保有により進呈額が3,000円相当となるため、その場合の配当優待利回りは約5.60%となります。

業績を確認していきます。 

■2018年12月期 売上高 2,313億円、営業利益 752億円 EPS 347円 

■2019年12月期 売上高 2,620億円、営業利益 543億円 EPS 150円

■2020年12月期 売上高 2,015億円、営業利益 78.5億円 EPS 4.7円 

■2021年12月期 売上高 2,588億円、営業利益 246億円 EPS 75.5円

■2022年12月期 売上高 3,050億円、営業利益 350億円 EPS 93.8円 ce

□2022年6月2Q 売上高 1,490億円、営業利益 170億円 EPS 46.9円 ce


2021年12月期の売上高はYoY+28.0%の2,588億円、営業利益はYoY3.1倍の246億円となり、増額後見通しから更に上振れました。主力の黒鉛電極事業については、中国の粗鋼生産の回復と顧客側在庫消化により数量が増加したほか、旧価→新価への改定進捗により期末にかけて単価効果が発現しました。カーボンブラック事業も中国完成車市場の急回復や、世界的にタイヤメーカーや部品産業の需要回復による数量増と油価転嫁による単価効果で大幅な増収増益となりました。また、ファインカーボン事業、精錬ライニング事業も堅調に推移したため、全社業績は軒並み増となりました。


進行期である2022年12月期の予算については、売上高がYoY+17.8%の3,050億円、営業利益はYoY+42.0%の350億円と大幅続伸を見込んでいます。主力の黒鉛電極事業については、世界的な電炉鋼製鉄へのシフトと景況回復による数量増、新価置き換えによる単価増で引き続き大幅増が見込まれます。カーボンブラック事業も自動車生産数量の回復による数量増、ファインカーボン事業もEV/半導体の好況継続が見込まれるものの、一方で精錬ライニング事業については原料アルミの高騰や高炉鋼製鉄需要の後退で戻りが鈍くなる見通しです。

 

当社はローリング方式による3年中計を公表しており、従来計画では翌2023年12月期に売上高3,200億円、営業利益570億円を業績目標としていました。本年2月の今次ローリングでは、足許市況を織り込む形で新数値を公表しており、最終年度の2024年12月期に売上高を2,588億円→3,560億円に、営業利益を246億円→570億円までそれぞれ引き上げる計画です。数字の見えがかり上は従前中計から1年遅れとなりますが、事業環境が劇的に改善しているため、数字上は翌期→翌々期を横引きして保守的に組んでいるものとみられます。

 

当社は2018年の“黒鉛電極バブル”で得たあぶく銭を原資に矢継ぎ早の買収を進めてきた経緯があります。2017年にドイツSGL社(黒鉛電極)の米国部門に129億円、2018年に韓国法人株式追加取得(+9%)に78億円、米国SRC社(カーボンブラック)に341億円、2019年にカソードで首位級の独コベックス(炭素黒鉛繊維)に1,000億円、2020年に仏サボイ(炭素黒鉛製品)に200億円を投じて業容を急拡大させています。他方、昨年は中国でカーボンブラックの製販を担う東海炭素(天津)を現地同業に売却するなど、足許では事業ポートフォリオの“選択と集中”も進めています。

 

現状、新型肺炎禍のペントアップ顕在化もあり、鉄鋼・タイヤ・半導体・アルミ市況全てが上向き(軒並み年率5%前後の成長が目される)ということもあり、本中計の3年間は生産能力の増強に動くほか、カーボンニュートラル化に向けた環境設備投資コストなども価格転嫁していく方針です。向こう3年間の投資額は1,160億円を予定しており、設備投資に590億円、成長投資に300億円、環境投資に200億円を振り向けるとともに、残りをハイブリットローンの返済(調整ネットD/E0.2倍→0.0倍)、と株主還元に回す方針です。

 

財務状況については、半資本認定のハイブリッドローンを推進してきたこともあり、見えがかり上の自己資本比率は47%台と高い水準ですが、返済が進むとより実態の財務体質に戻るため、逆に指標が悪化することとなります。そのため、配当については既に年30円水準にまで切り下げていますが、目安の配当性向30%を大きく超過していることから、余程の業績上振れが無い限り据え置かれる公算が高く、財務温存を優先するものとみられます。

 

*参考記事① 2021-11-16 1,361円 OP

【5301】東海カーボン/中国粗鋼生産急回復で、翌期から黒鉛電極も大幅値上げへ。 

 

*参考記事② 2020-05-19 889円 OP

【5301】東海カーボン/中計早くも赤信号だが業容拡大は順調、論点は配当維持。

 

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