【9010】富士急行/山梨県との適正地代に関する対立が鮮明に、安全性リスクも顕在化。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9010】富士急行(東証1部) NT


現在値 4,000円/100株  P/E 176.6  P/B 8.83 3月配当優待 9月優待

富士山麓周辺で別荘・リゾート施設等を展開。富士急ハイランドが主力。バスに強み。
配当は3月末一括の10円配当のため、配当利回りは約0.25%となります。

富士急行は株主優待制度を導入しており、3月末・9月末の年2回、単元株を保有する株主に対して、遊園地フリーパスなどとの交換が可能な電車・バス・観光共通優待券を5枚進呈しておりますので、1枚500円換算した場合の配当優待利回りは約1.50%となります。

業績を確認をしていきます。企業会計基準第29号新収益認識基準に移行しています。

■2018年3月期 売上高 526億円、営業利益 52.9億円 EPS 49.9円   

■2019年3月期 売上高 544億円、営業利益 61.7億円 EPS 39.0円   

■2020年3月期 売上高 529億円、営業利益 44.9億円 EPS 29.7円  

■2021年3月期 売上高 304億円、営業利益▲30.9億円 EPS▲52.4円  

■2022年3月期 売上高 402億円、営業利益 25.4億円 EPS 22.6円 ce新収益
□2021年9月2Q 売上高 169億円、営業利益 3.7億円 EPS 2.5円

□2021年12月3Q 売上高 268億円、営業利益 10.7億円 EPS 9.9円(2/2)

 

2021年9月中間期は売上高がYoY+33.8%の169億円、営業利益はYoY+37億円となる3.7億円で進捗しました。運輸事業については、3月のダイヤ改正により利用状況に合わせた最適化を実施し、定期利用客にも戻りが見られたものの、バス等の観光利用の回復は依然として鈍く、営業赤字が継続しました。他方、レジャー事業のハイランドではパーク及び近隣ホテル(ハイランド、マウント富士)において山梨県民限定の割引キャンペーンを実施したほか、「PICA BBQTERRACE」の新設といったアウトドア拡充策により同事業は黒字圏まで浮上しています。

 

2022年3月期の通期見通しについては、期初予想を据え置いており、売上高はYoY+32.2%の402億円、営業利益はYoY+56.3億円となる25.4億円を予想しています。運輸事業については、昨年11月から顔認証型MaaSを試験導入し、富士五湖周辺の回遊性を強化したほか、乗合バスは秋の行楽シーズンに合わせて河口湖周遊バスを復便したほか、高速バスは津田沼→御殿場便、秋葉原→御殿場便を開設して買い物需要獲得を図っています。昨年秋口は新型肺炎禍も小康状態であったことから、既開示の3Qの売上高は268億円&営業利益10.7億円と数字を積み上げていますが、予算進捗は依然鈍く、環境再悪化を踏まえると下方修正が確実とみられます。


終わった前2021年3月期は3ヵ年中計の最終年度であり、当初計画では累計売上高を1,553億円→1,667億円(年35億円程の増収)、累計営業利益を156億円→183億円(年9億円程の増益)に引き上げる計画でした。然しながら、インバウンド恩恵華やかなりし頃に策定された“バラ色”の計画は、新型肺炎禍による大打撃により、従来の利益水準の回復すら数年を要するレベルにまで落ち込んでしましました。2018年のハイランドの入場料無料化自体は無事に通過したものの、本来はそれにより周辺交通(鉄道・乗合バス・高速バス)を一手に押さえる当社が、シャワー効果で回収する目論見だっただめ、かような観点では成功したとは言い切れない状況に陥っています。

 

また、2017年より山梨県より賃借している山中湖村の別荘地やゴルフ場の県有地440haについて、地元住民と地代(年3.25億円)の適正性について係争していましたが、2020年には山梨県に長崎知事が就任して以降、県は一転して当社側ではなく地元住民側について原告成りしています。裁判は12月に結審しており、本年3月15日に判決が言い渡される予定ですが、山梨県側は92億円の地代支払いを求めているほか、これとは別に「ド・ドンパ」の度重なる事故と安全対策についても問題も県側は強く問題視しており、県側との対立が一層鮮明化していることが大きなリスクとして顕在化しています。また長崎知事と当社堀内一族は“遺恨関係”にあることから、長期化も避けられない情勢です。

 

財務状況については、目下の自己資本比率は23.6%と横ばいを維持しているものの、目標としていた有利子負債500億円水準の達成はもはや不可能な状況です。配当については、4円増配(復元配)となる年10円配を予想していますが、横ばいの6円配当まで落とす可能性もありそうです。

 

*参考記事① 2021-01-16 4,630円 NT

【9010】富士急行/会社計画は下期の回復が前提で楽観的、配当はレンジ下限での決着か。

 

*参考記事② 2020-08-25  3,120円 NT

【9010】富士急行/ハイランドや定期外の収入多く、新型肺炎影響は深刻。

 

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