【9010】富士急行(東証1部) NT
現在値 3,120円/100株 PER--.- PBR6.99 3月配当優待 9月優待
富士山麓周辺で別荘・リゾート施設等を展開。富士急ハイランドが主力。バスに強み。
配当(実績)は3月末一括の15円配当のため、配当利回りは約0.48%となります。
富士急行は株主優待制度を導入しており、3月末・9月末の年2回、単元株を保有する株主に対して、遊園地フリーパスなどとの交換が可能な電車・バス・観光共通優待券を5枚進呈しておりますので、1枚500円換算した場合の配当優待利回りは約2.08%となります。
業績を確認をしていきます。
■2017年3月期 売上高 517億円、営業利益 48.5億円 EPS 49.6円
■2018年3月期 売上高 526億円、営業利益 52.9億円 EPS 49.9円
■2019年3月期 売上高 544億円、営業利益 61.7億円 EPS 39.0円
■2020年3月期 売上高 529億円、営業利益 44.9億円 EPS 29.7円
■2021年3月期 売上高(未定)億円、営業利益(未定)億円 EPS(未定)円 ce
□2020年6月1Q 売上高 34.8億円、営業利益▲35.2億円 EPS▲47.7円(8/5)
□2020年9月2Q 売上高 150億円、営業利益▲35.0億円 EPS▲69.7円 四e
2020年3月期の売上高は前期比4.0%減の522億円、営業利益は同27.3%減の44.9億円となり、期初及び期中の減額修正予算をショートして着地しました。運輸事業は長雨や昨年10月の台風といった天候不順による観光客減少にくわえ、年明けからの新型肺炎の深刻化によりインバウンド需要が喪失したため、バス事業の「河口湖・西湖周遊線」「富士五湖線」の増便や「ららぽーと沼津線」の新設による輸送客増加策が裏目に出た格好となりました。また、利益柱のレジャー事業については、2018年夏からのハイランドを入園無料化しており、外国人に人気のある「NARTO」の新テーマエリアのアトラクション増強がインバウンド誘致に寄与したもの、本来であればお別れ遠足や卒業旅行の刈り取り時期となる期末にかけて新型肺炎の影響を受け、此方も運輸事業同様に尻すぼみとなりました。
進行期である2021年3月期の通期予算については、新型肺炎の影響により期初時点から未定としています。8月5日に開示済の1Qについては、売上高が前年同期比74.1%減の34.8億円、営業利益は同赤転の▲35.2億円と壊滅的な大幅減で推移しています。運輸事業におけるJR線乗入の「富士回遊」増発や、乗合バス事業におけるシステム向上等の施策を実施したものの、元よりインバウンドや観光客といった定期外収入の多い当社は、新型肺炎による影響を他社比で色濃く受けた格好となりました。また、レジャー事業におけるハイランドについても、5月下旬から山梨県内在住者限定で営業再開するなど受入段階から絞った結果、此方も大幅減となりました。そのため、下期から本格回復したとしても挽回できる公算は低く、通期で大赤字圏に沈むものとみられます。
今期は3年中計の最終年度となっており、この2021年3月期にも累計売上高を1,553億円から1,667億円へ(年35億円程の増収)、累計営業利益156億円を183億円へ(年9億円程の増益)引き上げる計画でしたが、足許における新型肺炎による影響が大きく、営業利益については3年累計100億円程度が達成の上限になるとみられます。リスクイベントであった2018年のハイランドの入場料無料化を通過し、国内中高年客の増加など想定を超える成果があったものの、韓国との関係悪化、米中摩擦、そして今次新型肺炎禍によりインバウンドが枯渇してしまったため、富士山やハイランドという強力な観光資源に頼る当社は打撃が大きくなっています。
そのため、当社の経営努力では何とかなるレベルではなく、新型肺炎の沈静化やワクチンの早期開発、政府による強力な観光業振興策といったマクロ環境改善の方がはるかに業績に寄与するものの、この春にはハイランドに新アトラクションの導入を公表しています。当社の代名詞でもある大型のコースターに約36億円を投じる計画(FUJIYAMA/ドドンパ/高飛車は各30億円、ええじゃないかは36億円)であり、稼働開始は新型肺炎も一巡しているであろう2022年夏を予定しています。
財務状況については、自己資本比率が22.8%と悪化してきており、現在の中計上では有利子負債500億円水準までの削減を目標としていたものの、(仕方のないこととはいえ)足許では560億円水準まで膨らんでいます。そのため、株主還元については、実績期の配当を50銭の増配予想から一転して1円減となる15円へと修正したほか、今期についても未定となっています。中計期間はベース配当14円+配当性向30%を勘案の上で上乗せ、としていますが、今般の状況からベース配当にもメスが入る可能性が高いと考えており、「年5円~14円」の範囲で修正されるものとみています。
*参考記事① 2020-02-04 3,745円 NT
【9010】富士急行/台風と新型肺炎が直撃、下方修正後もなお過大。
*参考記事② 2019-08-23 4,460円 NT
ハイランド無料化成功で増益ピッチ加速へ、富士急行(9010)。
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