【4432】ウイングアーク1st/3度目の正直で再上場、DX潮流と伊藤忠支援も翌期は減益公算か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【4432】ウイングアーク1st(東証1部) BY

現在値 1,562円/100株  P/E 12.0  P/B 1.80 2月・8月配当 株主優待なし

帳票・文書管理ソフトと企業内データ活用支援の2本柱。間接販売が主。MBOで再上場。


配当は2月・8月の年2回、合計41円20銭のため、配当利回りは2.64%となります。
ウイングアーク1stは株主優待制度を導入していません(※再上場前はクオカード優待が存在)。

業績を確認していきます。 当社は2021年のIPO銘柄となります。
■2018年2月期 売上高 155億円、営業利益 42.2億円、EPS 93.7円 

■2019年2月期 売上高 172億円、営業利益 48.8億円、EPS 105.6円 

■2020年2月期 売上高 186億円、営業利益 56.8億円、EPS 130.7円 

■2021年2月期 売上高 182億円、営業利益 32.0億円、EPS 79.5円  

■2022年2月期 売上高 190億円、営業利益 58.8億円、EPS 137.3円 ce 
□2021年8月2Q 売上高 96.5億円、営業利益 29.2億円、EPS 66.4円 

□2021年11月3Q 売上高 148億円、営業利益 46.5億円、EPS 103.7円(1/13) 

2021年8月中間期の売上高は前年同期比10.0%増の96.5億円、営業利益は同74.3%増の29.2億円となり、期初予想とに比較は無いもののトップラインから2桁増となりました。帳票・文書管理のBDS事業(SVF/SPA)が電帳法改正、在宅勤務増加によるペーパレス需要を幅広く取り込み同8.5%増となったほか、データ活用のDE事業も主力のSalesforce以外にHACCP関連やOEM提供を強化したため12.6%増と好伸しました。なお各種KPIについては、ストック比率は微減の62.0%となったものの、クラウド成長率は29.6%、保守継続率は93.2%と順調な推移がみてとれます。


2022年2月期の通期見通しは期初予想を据え置いており、売上高が前年同期比3.9%増の190億円、営業利益は同83.3%増の58.8億円を見込んでいます。DBS事業は主力ノーコード帳票製品のSVFが順調に拡大しているほか、帳票管理製品のSPAも電帳法改正の強力な追い風により期末まで飛躍的な受注増が見込まれます。他方、DE事業については、2Qで計上したMotionBoardの大型案件が剥落して成長率が一時的に鈍化しているものの、他案件で取り返し、期末には回復する公算です。去る1月13日に公表済の3Qの売上高は148億円&営業利益46.5億円とトップライン段階から成長率の加速が確認されるため、上振れ公算が高い状況です。

 

当社は2021年3月のIPO銘柄ですが、2013年に現会長の内野氏とオリックスによるMBOで非公開化した1stホールディングスの再上場案件です。途中でスポンサーがオリックスからカーライルに変わり、当初2019年の上場承認を受けていたものの市況急変で中止、翌2020年にも改めて承認を受けたものの新型肺炎禍でまた中止となり、やっと上場出来たのが昨年春となります。上場によりカーライルが持分の多くを売り出したものの、伊藤忠とCTCの合弁会社が事実上の筆頭株主(22.4%)となっているほか、東芝デジタルS(13.5%)のほか、PKSHATechnology(3.4%)、Sansan(2.3%)とDX関連でネームが強い株主が大株主に名を連ねています。

 

1月13日には初となる中計を公表しており、約5年後となる2027年2月期に①クラウド成長率CAGR40%(全社売上高190億円→320億円)、②リカーリング比率75%、③調整後EBITDA120億円(今期予想は64.4億円)を目指すこととしています。特に向こう3年で55億円規模の投資を実行する計画であり、営業人員や広告費用に24億円、ブランディングに15億円、開発に12億円等を投じます。ただこれら投資は殆どが費用性投資であり、中計序盤の3年間は営業利益ベースで約18億円押し下げられることから、例えば翌2023年2月期の営業利益は成長分をネットして40億円+αまで減益となる公算が高そうです。

 

会社側では現状の電帳法改正やインボイス関連で抱えきれない程の引き合いがあることから、営業員の大増強とブランディング広告の大量投入で、この2年(電帳法宥恕期間)で一気に刈り取る方針としており、短期的な利益が少なからず犠牲となります。足許の株価調整はこの減益見込みを嫌気したものとみられますが、2022年2月期の配当を向こう3年はフロアとすることを合わせて公表していることから、今期の着地の上振れ幅の次第ですが、年「41.2円+α円」が維持され、推定配当利回り2.7%~3.0%のラインが一旦の株価の下値目途となろうかと考えます。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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